ようこそ、Taurus🐂の橋梁点検ノートへ!!
橋梁点検の実務で役立つ情報の発信を目的にブログを運営しています。
このブログのコンセプトは、
<これまで私が蓄積してきた知識や経験を書き留めたノートの公開>です。
それでは、今日の公開ノートはこちら↓
※ニーチェ:ドイツの哲学者
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(※前回のノートの続編です。)
目次
【損傷種類③:ゆるみ・脱落2/2】
<F11Tの脱落が止まらない件について>
F11Tの遅れ破壊については、橋梁点検では有名な話ではないでしょうか?
遅れ破壊については、わたしが技術士試験を受験したときによくお世話になっていた「株式会社駒井ハルテック」さんのHPには、
“一定の引張荷重が加えられている状態で、ある時間が経過したのち、外見上はほとんど塑性変形を伴わずに突然脆性的に破壊する現象です。”
ほかにもこのページには色々勉強となる内容が記載されています。
この文の通り、F11Tという種類のある特定の高力ボルトがある日突然、写真のように破断してしまいます。
橋梁点検では、足元にボルトの頭が落ちていたり、添接板にささっているはずのボルトがなかったりと、初めての方には特に『なんでこんなところにボルトが?』という、なんとも違和感のある現場に遭遇します。
材料的、力学的な話はこのノートではおいておきます。
現場で点検するときに役立つネタとして、今日お伝えしたいことはコチラ。
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1.F11Tボルトが使用された年代を確認する。
2.1本の脱落は、その橋のボルト脱落の氷山の一角だと考える
3.落下地点が第三者への影響はないか確認する。
◆F11Tボルトが使用された年代を確認する
先ほどご紹介したHPにも記載されていますが、昭和40年代後半~50年代初頭に架設された橋梁ではF11Tボルトの脱落が多いという特徴があります。
ただ、その当時に作られたボルトに脱落の傾向があることが分かっているものの、その年代であればすべて脱落するわけではないので、注意が必要です。
F11Tボルトの頭部は六角ですが、これと同じようなボルトがあるので、「六角→F11T→遅れ破壊注意!」とはならないので、これまた注意してくださいね。
まず現場で確認する3つのこと!
・さきほどの写真のような刻印と年代を確認。
・脱落を助長させるような漏水や湿気がないかを確認。
・できれば補修履歴の確認も。すでにボルトの脱落が多いため、総取り替えを試みたことがないかの確認です。
構造的というより、費用対効果の関係で一部交換をしないでそのままになっていることもあるますのでご注意を。
最後に、たまに刻印が見たくて塗膜を削り始めようとする点検員さんを見かけるのですが、気持ちわかりますがそれは橋梁が傷ついてしますのでNGですよ( ゚Д゚)
◆1本の脱落は、その橋のボルト脱落の氷山の一角だと考える
前述の1の項で、漏水や湿気に注意してください、と書きましたが、それは遅れ破壊が水素に関係しているからなのです(難しい話は置いておいて)。
例えば、箱桁の上フランジに橋面からの漏水のために湿っていることや、箱桁内部の排水管が破断し箱桁の下フランジに滞水していることがあったら要注意です。脱落した箇所だけ交換しても、根本原因である水等が止水されていなければ、点検するたびに脱落本数は増えていきます。
ボルトの脱落は遅れ破壊だけではなく、腐食も影響していることもありますので、固定観念は捨てつつ、要因の1つとして点検してくださいね!
そして、もう1つ。これは結構大事だと思っています。
遅れ破壊で軸部が破断していても、塗膜がしっかりしているとボルトが脱落しないことがあります。外観上ではわかりません。
見分けるポイントは、やはり年代、形状、水等の要因、それと過去にその橋梁で脱落していたという結果だと思います。これらの点を相互に関連させて点検することが大事ではないでしょうか。
数本であれば点検ハンマーでたたいて確認することができるのですが、さすがに〇万本となると現実的な話ではないので、状況証拠から犯人も捜すことですかね。
◆落下地点が第三者への影響はないか確認する
最近、コンクリート片の落下によるニュースをよく見るようになりました。
気になったので、ネットで「コンクリート片落下 2021」と検索してみると、なんと4件も。
2021.06.05 山陽新幹線の高架橋 7cmx13cmx5cm 1.3kg
2021.07.07 大阪のプール更衣室 25cmx15cmx5cm 0.6kg
2021.07.16 北海道の跨線橋 10cm程度複数
2021.07.17 北海道沿岸部の覆道 6mx4mx6cm
コンクリート片の落下は即人命にかかわります。
これと同時に腐食片やボルトの脱落でも同様で、橋梁構造には全く影響のない規模であっても、それが落下したらどういうことが懸念されるのか想定しなければなりません。
こういう第三者の影響のある範囲では、橋の健全度Ⅰではなくそれ以上の評価をすることも、点検(管理)する側の責務だと思います。
社内で検討するときに、わたしが言うのは『その損傷が起きている場所に自分の子どもや奥さんが通るとしたらどう?』と投げかけます。
わたしは技術者ですので、構造的にはまったく問題のない損傷であれば、『このくらい・・・』という気持ちになってしまいます。しかしその一方で立ち止まって、一番大事な家族のことを考えてみると、それが誤った判断をしていることに気づくこともあるので、怖いですね。
【ノートのまとめ】
・一群とは添接部の構造で見極める
・設計と施工時のギャップ(苦労)を考える。
・F11Tには要注意。第三者被害のことも考えること。
【次回のノート】
2つのノートにまたがってしまいましたが、③ゆるみ・脱落はいかがだったでしょうか?
まだお伝えしたいことはありますが、次の機会をお楽しみに。
本当は現場の橋を見ながら交流できればわかりやすいと思うんですけどね。
さて、次回は「損傷種類④:破断」です。
㉖洗堀まではまだ遠いですが週末に更新していきますので、どうぞ応援よろしくお願いします!!
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