ようこそ! Taurus🐂の橋梁点検ノートへ。
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ではさっそく!
※スティーブ・ジョブズ:Appleの共同設立者。アメリカを代表する起業家。
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目次
【点検要領の解釈:⑩補修・補強材の損傷】
橋梁補修、多くなってきましたね。
新しい橋梁を建造せず、いまある橋梁を大事に使い続けていくという時代になってきました。
ますます、橋梁メンテナンス産業の発展に期待されるところです。
しかし、
今すでにある橋梁を維持していくためには莫大な補修費用が必要で、各道路管理者は頭を悩ませています。
そして近年では、新たな問題が。
補修したのはいいけれどすぐ壊れてしまっただとか、かえって悪化させてしまったなんてことも。
車や家の修理、人の健康管理も同じです。
きちんとした治療をうけなければ悪化することもありますし、その治療をうけたくてもそのお金がない・・・
このような問題がインフラでも起きています。
補修するとなると、つい効果的とは言えない補修(ちょっとやりすぎ)もしてしまいます。
どれもこれも治したくなってしまうんですよね。
どれを補修するのではなく、どれを補修しないか、
という決断も大切だと思います。
さて、
今回取り上げる損傷種類⑩:補修・補強材の損傷ですが、補修・補強材と聞いて何を思い浮かべますか?
モルタルでの断面補修、当て板補強、連続繊維シート、巻立コンクリート...
ひと口に補修・補強材といってもたくさんありますよね?
今回は点検要領に書かれている内容をもとに、⑩補修・補強材の損傷の解説とバラつきが出ない記録の仕方について書いていきたいと思います!
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<点検要領の付録-1>
⑩補修・補強材の損傷について、点検要領の付録-1では下図のように解説されています。
【一般的性状・損傷種類】には、赤線のように記載されており、大きくコンクリート部材と鋼部材で分けられています。
コンクリート部材は、鋼板や炭素繊維などの補修補強材、塗装などの被覆材料。
鋼部材では、当て板補強など。
そして記録する際には、下図に示す分類に従って記録します。
ここまでは特に難しいところはないように思えますよね(^-^;
しかし、ここでも注意が。
2点にありますので、順番に確認していきましょう。
<注意その1:コンクリート部材表面とは?>
【一般的性状・損傷種類】 でいう“コンクリート部材表面に設置された”とは何を示しているか?表面とはどこなのか?
既設コンクリート表面から外側と考えれば、以下の部材が対象ですね。
・床版や主桁、橋脚の鋼板補強材
・剥落防止対策として設置された連続繊維シート等の被覆材
・遮塩対策として塗装された被覆材 など
そして、上記とは反対に内側と考えれば、下記の部材は対象外でも良さそうです。
・既存のコンクリート部材表面から突出していない断面修復
・少数主桁橋での巻立コンクリート
わたしは上記のように既設コンクリート表面(当初の出来形面)を境にして、⑩補修・補強材の損傷で記録する方法が適切なのかな?とは思うのですが、点検会社各社でバラつきもあるようです。
例えば、
既設コンクリートに豆板が建設当時から発生しており、そこを断面修復したとします。
これをモルタルで断面修復した箇所をみて、点検をする会社よって以下3点のような点検調書が出来上がります。
1.断面修復し損傷がないので、点検調書に記録されない。一方、損傷があったこともわからなくなる。
2.断面修復し損傷ではなくなったものの、補修した箇所であることを図やメモを利用し点検調書に記録する。
3.補修した箇所であるため、⑩補修・補強材の損傷で記録する。
みなさんはどれに当てはまりますか?
これについては点検要領の解釈の仕方や点検記録の方針によりますので、どれが正解とは言えないのですが、これまでの点検の記録を踏襲することを基本とし、新たに点検する際はこれらの考え方を参考にしてみてはいかがでしょうか?
ただ、
局所的に補修や補強している場合は、上記の3番でもそれほど影響はないのですが、全体にわたっての塗装や断面修復が行われている場合、点検調書すべてを⑩補修・補強材の損傷で記録することになりますよね?
⑩補修・補強材の損傷はそれほど詳しい損傷の表現ができない部分がありますので、やはり既設コンクリートを境に⑩補修・補強材の損傷で記録する方が分かりやすいのかな?と。
上の3つの中では、2番推しです。
これからの橋梁の老朽化による補修箇所の増大を踏まえると、補修箇所の再劣化がわかるように記録するといいかもしれませんね!
<注意その2:ほかにも扱う損傷とは?>
青枠の範囲を見ると、「・・・として扱う」、「・・・としては扱わない」とあります。
点検要領ではよくこの表現がでてきますので、ここで書かれている意図を理解する作業がとても大切です。
点検要領の青枠を少し言い換えると、
・巻立コンクリート等にひびわれや剥離等が生じていたら、⑩補修・補強材の損傷だけでなく、⑥ひびわれや⑦剝離・鉄筋露出も記録する。
・コンクリート部材の塗装被覆材が損傷していても、⑤防食機能の劣化では記録しない。
・鋼部材への当て板補強材が錆びていても、①腐食や⑤防食機能の劣化では記録しない。
どうですか?
大事なことは、
補修補強材が損傷していれば⑩補修・補強材の損傷で記録する。
ただし、⑩補修・補強材の損傷以外にも記録する損傷がある
ので気を付けて!ってことなんです。
次の章と関連づけるとよりわかると思います。
これを見てください。
<点検要領の付録-2>
下図は分類毎に記載されている損傷程度の基準です。
⑩補修・補強材の損傷では、その損傷の規模(軽微c、著しいeなど)によって損傷程度が決定します。
分類3では、“漏水や遊離石灰“だけが記載されていますが、付録-1では”うき、変形、剥離など“と記載されていますので、これだけではないので誤解しないでくださいね。
ただ、⑩補修・補強材の損傷だけの記録では、その部材がどの程度、損傷しているのかわからないところがでてきます。
そのため、まずは補修補強材の損傷であることを示したうえで、くわしい損傷を別途記録するという手法をとっているのではないでしょうか?
すこし余談ですが、
橋梁点検後のデータは、道路メンテナンス年報や各管理者が所管する橋梁がどのような状態(健全度レベル)にあるかを確認等を行うためにも活用されています。
H26要領改訂時にも、定着部材や格点部の点検方法が変わったかと思いますが、これらも同様のことが言え、その部材特有の損傷傾向を分析するときに役立てられているでしょう。
点検要領を策定した方々にもしそのような意図もあるのであれば、ここはしっかりと⑩補修・補強材の損傷とプラスαで記録していくことが重要なのかもしれませんね。
特にコンクリート部材は鋼部材と違って、外観上わかりにくいところがありますから。
話は戻りまして
分類5:鋼板(当て板等)については、いくらコンクリートよりも外観上わかりやすいといっても、⑩補修・補強材の損傷だけでは、さすがに情報不足は否めません。
そこでご提案。
括弧書きを併用してみてはいかがでしょうか?
例えば、
・⑩補修・補強材の損傷c(腐食)
・⑩補修・補強材の損傷c(ボルトのゆるみ1/3本)など
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【今回のまとめ】
・コンクリート部材表面に補修、補強された部材が損傷していれば⑩で記録する
・分類3(コンクリート)の補修補強材では⑩以外にも別途記録する損傷種類がある
・分類5(鋼板(当て板等)は⑩のみだが、これだけはわかりにくいので()を併用する
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【次回のノート】
次回は⑪床版ひびわれについて書きたいと思います。これは⑮舗装の異常とも関連するので、この2つを関連付けて書いていきます。
⑪床版ひびわれはまったく発生していないことはありません。必ず発生している損傷です。これを人力で記録するのはとても大変ですよね。
下から見ているのに、記録は上から見たように記録しないといけませんし(^-^;
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