ようこそ! Taurus🐂の橋梁点検ノートへ。
このブログが橋梁メンテナンスに携わる皆さまのお力になれたら嬉しいです!
ではさっそく!
※デューク東郷:『ゴルゴ13』の主人公で凄腕のスナイパー。
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目次
【点検要領の解釈:⑬遊間の異常】
わたしが子どもころは砂利道がたくさんありました。
実家の前も砂利道で、いつもボコボコでした。
いまでは、アスファルト舗装に置き換わり、市街地ではほとんど見かけなくなりました。
舗装は車や人が安全に快適に移動するために欠かせないものですよね。
そのため、舗装が傷むとすぐ補修してもらえます。
本当に助かりますよね。
これで運転しても大丈夫。たいらですから。
ただ、橋の舗装については要注意。
舗装の損傷が、橋の安全性に強く影響してしまうのです。
今日は、とても身近なこの舗装を点検するときに役立つ情報を書いていきたいと思います。
ただ、この舗装の点検はかなり難しいのです💧
なぜなら、
舗装の健全性を確認するための点検ではなく、
舗装下の床版の健全性を確認するための点検だからです。
わたしもこれを初めて聞いたときは
『何言ってるんだろう??』
でした。
かんたんに言いますと、
舗装で覆われている床版の損傷は見えないので、舗装で代わりに床版を点検しよう!
ということなんですね。
「見えないもの」を「見えている」もので評価する。
難しいですよね。
舗装に限った話ではありませんが、
点検するときは、臆病者になる必要があります。
『怪しいな。調査した方がいいかもな。』と本当は思っていても
『あ、このくらいなら大丈夫、大丈夫!』とするのか、
『怪しいから調査します!』となるかは、
あなたの橋に対する愛情の度合いによるかもしれませんね。
愛する家族が病気になったら、心配で検査するはずですから。
臆病者。心配し過ぎ。なんてなんのその。
自分を信じて「怪しいから調査します!」と言える技術者になりたいものです。
これまでの真実を語るに、
舗装の小さな異常から発見してきた大きな床版の損傷は数知れず。
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<点検要領の付録-1>
⑮舗装の異常については、点検要領の付録-1では下図のように解説されています。
カラフルな色な図になってしまいました。
今回の⑮舗装の異常については、いつも以上に説明が必要になりそうです。
全部で5色(赤、緑、青、紫、橙)に色分けしましたので、これについて順番に説明していきたいと思います!
◆付1:ポイントその1
赤線:舗装の異常とは,コンクリート床版の上面損傷(床版上面のコンクリートの土砂化,泥状化)や鋼床版の損傷(デッキプレートの亀裂,ボルト接合部)が主な原因となり,舗装のうきやポットホール等として現出する状態をいう。
これは一番基本となる内容です。舗装の異常とはどんな状態なのか? が記載されています。
下記2点のような原因となる状態があると、その上の部材である舗装にひび割れなどの損傷が現れるので、⑮舗装の異常として記録してねってことです。
・コンクリート床版の上面損傷(床版上面のコンクリートの土砂化,泥状化)
・鋼床版の損傷(デッキプレートの亀裂,ボルト接合部)
舗装に覆われている床版は、点検のたびに舗装を撤去することはできないので、その予兆(ひびわれなど)を見逃さないように点検することがとても大切です。
◆付1:ポイントその2
緑線:これら原因による損傷に限定するものではない。
“これら原因”とは、この文の前で記載されていた下記の文のことです。
“コンクリート床版の上面損傷(床版上面のコンクリートの土砂化,泥状化)や鋼床版の損傷(デッキプレートの亀裂,ボルト接合部)が主な原因となり・・・”
では何かというと、
『舗装に異常が現れるのは、この2つだけではないから気を付けて!まだほかにもあるかもしれないから!』
ということを伝えたいのだと思います。
例えば下図のような場合も舗装にひびわれが生じます。土砂化やデッキの亀裂だけではありませんよね?
◆付1:ポイントその3
青線:床版の損傷との関連性がある可能性があるため,ポットホールの補修痕についても,「舗装の異常」として扱う。
ひと言でいうと、「補修痕も⑮舗装の異常で記録する」です。
『え?補修したのに?!』
というお声が聞こえてきそうですが、理由があります。
実は補修痕では、下記のような事態になっていることがあるので、補修してあるように見えても安心できないのですね。
1.走行車両の安全重視で応急的に平らにしただけ。
2.補修したけど、なおりきっていない。
3.補修部は“いま”健全だけど、根本的な原因がまだ残っている。
2021.8.21にUPした「損傷種類⑦:剝離・鉄筋露出とは?!」にも別の切り口から書いていますので、のぞいてみてください。その記事で下図を使用しました。
橋梁点検で大事なことは損傷の大小を記録することではなく、橋の健康状態を把握することです。なかには、この⑮舗装の異常のように、隠された損傷があるわけですから、注意が必要ですよね。
◆付1:ポイントその4
紫線:対象とする事象は,舗装のひびわれやうき,ポットホール等,床版の健全性を判断するために利用されるものである。
“ポイントその1”と同様に、この⑮舗装の異常の大事な基本が記載されています。定義に近い部分です。
それは当たり前のことのように聞こえますが、
⑮舗装の異常では“床版の健全性”を重視して点検する必要があります。
例えば、
長さ5m、幅1mmの橋軸方向のひびわれが2本生じていたとします。
同じひびわれでも発生している位置や原因によって、舗装下の床版の劣化状況は変わることがあります。
つまり床版の健全性が変わるので、
損傷程度を記録することが点検ではなく、健全性を評価するための点検という認識が大切です。
その認識があれば、大事なところで打音検査を行う行動ができますよね?
◆付1:ポイントその5
橙線:舗装本体の維持修繕を判断するための判定ではないが,道路の維持管理上有用と思われる情報は別途記録しておくのがよい。
“道路の維持管理上有用”とは何でしょうか?
床版の健全性には関係ないけど、舗装の機能低下を指しているのではないでしょうか?
例えば、
・排水性舗装の目詰まり
・インターロッキング舗装のうき
・わだち掘れ
こんなことが該当すると思います。
具体例が要領にないのですが、この一文もありますし、疑わしきは記録が良さそうですね。
床版の健全性を見極める情報となるように注意して打音検査や床版下面も併せて確認することも忘れずに。
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<点検要領の付録-2>
ここで大事なことは2つ。
◆付2:ポイントその1
損傷があった場合、“c”と“e”の2つで記録しますが、”損傷程度の大小”は”床版の健全性の大小”ではないこと。
前回⑭路面の凹凸と同様ですが、あくまでも程度の区分であることを忘れてはいけません。
人間の健康を考えてみましょう。
蚊や蜂に刺された時点では、腕に小さな穴が開いているにすぎませんが、そのうち腫れてきます。
咳が出てきたな、と思ったらその夜に高熱を出した…
この例からでも、損傷の大小が健康状態をそのまま現すことにはなっていないことが分かると思います。
健全性の評価を行うときに、この“c”だから“健全度Ⅰ(補修の必要なし)”とはできませんね。
◆付2:ポイントその2
⑮舗装の異常では、「ひびわれ」や「ポットホール」のほかに、「わだち」、「うき」も該当します。
「わだち」については、要領の⑭路面の凹凸できちんと記載されています。忘れずに記録しましょうね!
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【今回のまとめ】
・舗装の異常は、“床版の健全性”を見極めるための大事な損傷。
・床版の健全性を評価するだけ限らず“維持管理上有用”な変状は記録する。
・損傷程度の大小では、舗装下に隠された床版の変状は見抜けない。
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【次回のノート】
次回は⑯支承部の機能障害です!
機能障害というからには、ちょっとやそっと損傷ではありません。橋体を支える足にあたる支承が機能していないのですから、損傷が記録された時点で補修確定のようなものです。
と、いうような損傷について来週書きたいと思います。あなたの有用な記事になるよう頑張ります!
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