再劣化シリーズ始まりました~!!
2021年は、
橋梁点検を行う方は一度は手に取る「定期点検要領」の「損傷種類の解釈」を中心に”橋梁点検ノート”を綴ってきました。
おかげ様で、
目標としていた損傷種類の①腐食~㉖洗掘までひと通り書くことができました。
ありがとうございました。
そこで次のテーマとして、
最近、読者の方からもご質問いただくことが多かった
「そうだ! 再劣化について書こう!( `ー´)ノ」
と意気込んでいたのですが、
さっそく問題が・・・
たくさんありすぎて
どこから、
なにから、
書き出していいのか迷い道に。
「基本の腐食?、漏水が多い伸縮装置?、土砂化の床版?」
「いやいや原因別?、塩害?、凍害?、施工不良?」
「あ~、これもあるな」
「あれもあるな」
って感じで(゜-゜)
さんざん迷ったんですが、
だめですね。
ついつい自分の気持ちが先走っていました。
お客様(読者)目線が大切だという基本を忘れておりました(´ー`)
ということで、
読者の皆さまから頂いた質問を改編し、ケーススタディ形式でお届けしていくことにしました!
橋梁メンテナンスに携わる ”あなたの力” になれたら嬉しいです。
ではさっそく、いってみましょう!
※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちで読んでいただけると助かります。
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目次
【再劣化case01:塗膜の剥離】
■質問:塗膜の剥離について
『10年前にC系で塗り替えた橋について質問です。
橋全体の塗装がひびわれが入っていて、触るとペリペリはがれてしまいます。
はがれたあとの部材には灰色の塗装がのこっていて、それほどひどい錆はありません。
どうしてこのように塗膜がはがれるのでしょうか?』
こういう塗装の剥離って意外に多いんですよね(^-^;
まず
鋼部材に対する塗装ってなんでしょう?
どんな目的があって塗られているのか?
その一番の理由。
それは<防食>です。
なぜなら
鋼部材の寿命は、腐食との闘いだからです。
腐食させないためには、外敵(紫外線や雨等)から身を守ってあげる必要があります。
化粧みたいですね。
防食の方法には、大きく「塗装」、「めっき」、「耐候性鋼材」、「電気」の4つがあります。
このうち、
防食の基本中の基本となるのが「塗装」です。
実績、信頼性、作業性がもっとも高い防食方法です。
車に傷がついたとき、どうしてますか?
放置すると、傷のまわりがだんだん錆びてしまうので、タッチペンをカー用品店で買って、自分でペイント(塗装)したことありませんか?
これと一緒です。
塗装の方法は基本、車でも橋でも変わりません。
1.前処理(さびを落とす、水分や汚れをとる)
3.ハケ等でペンキをぬる
4.ペンキを乾かす
さて、
本題ですが。
この基本の「塗装」・・・
せっかく塗装したのに意外にも早くサビたり、塗膜がはがれたりするんですよね💧
どうしてなんでしょうね?
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■Case Study: 一緒に考えてみましょう!
■質問 『10年前にC系で塗り替えた橋について質問です。 橋全体の塗装がひびわれが入っていて、触るとペリペリはがれてしまいます。 はがれたあとの部材には灰色の塗装がのこっていて、それほどひどい錆はありません。 どうしてこのように塗膜がはがれるのでしょうか?』
わたしは下記のように考えていきました(゜-゜)
⇩ ⇩ ⇩ ⇩ ⇩
・C系で塗替え後、10年程度
『C系の塗替塗装の耐用年数は・・・
新橋であれば耐用年数は約60年。塗り替えでも約30年。
明らかに早く劣化している。』
・塗膜全体にひびわれ
『硬化不良がおきているのかな。
硬化剤の撹拌不足か規定量を混ぜていないか。
それであれば樹脂と硬化剤が反応できていないかも。』
・ペリペリはがれる
『硬化した塗膜が全体でペリペリとはがれるということは、塗膜同士が接着していない。
つまり層間剥離が起きているということは、
硬化剤の不足、溶剤過多、結露などの乾燥不足が怪しい。
施工記録や架橋条件がわかればもっと原因を絞れるけど・・・』
・防食下地層が見えているものの腐食はない
『きれいに剥離しているようだから、おそらく施工初期から層間剥離が起きている。
それにもかかわらず、腐食がないということは架橋環境は穏やか。
外的要因ではなく、施工前処理や施工中の要因によって早期の再劣化を起こした・・・』
これらから考えられるのは・・・・・(゜-゜)
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■回答:塗膜剥離の原因について
塗装工事では、長寿命化の観点から高耐久の塗料を使います。
そして、
塗装にとって悪条件がなく、手順と方法に注意すれば、高品質に塗装を行うことができるはずです。
塗装にとって大事な施工(管理)条件は、
・気温(暑いと乾燥しすぎ、寒いと硬化しにくい)
・湿度(結露、雨天後、植生状況)
・作業空間(狭いとさび落としも塗装も不具合おきがち)
・材料の混合比(適切な撹拌、割合比率、シンナー等の使用量)
・塗装間隔(工程を早めようと乾燥せずに次工程にいくと大変な目に)
です。
とすれば、
この施工条件に問題なければ、高耐久の塗り替えができるということになります。
より詳しい推定をするには更なる情報が必要ですが、
結果的に上記の条件を満足できず、塗膜剥離が起きた。
それと、
これまでの推定を合わせると・・・
・C系で塗替え後、10年程度 『C系の塗替塗装の耐用年数は・・・ 新橋であれば耐用年数は約60年。塗り替えでも約30年。 明らかに早く劣化している。』 ・塗膜全体にひびわれ 『硬化不良がおきているのかな。 硬化剤の撹拌不足か規定量を混ぜていないか。 それであれば樹脂と硬化剤が反応できていないかも。』 ・ペリペリはがれる 『硬化した塗膜が全体でペリペリとはがれるということは、塗膜同士が接着していない。 つまり層間剥離が起きているということは、 硬化剤の不足、溶剤過多、結露などの乾燥不足が怪しい。 施工記録や架橋条件がわかればもっと原因を絞れるけど・・・』 ・防食下地層が見えているものの腐食はない 『きれいに剥離しているようだから、おそらく施工初期から層間剥離が起きている。 それにもかかわらず、腐食がないということは架橋環境は穏やか。 外的要因ではなく、施工前処理や施工中の要因によって早期の再劣化を起こした・・・』
施工条件、施工時の塗料の扱い方や施工方法の不備があると思えてきました。
つまり、
今回の再劣化の原因は、
「施工要因」
であった。
ではないでしょうか?
あなたはどう考えますか?(´-`*)
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【さいごに】
基本かつ重要なことを。
「現場では、
カタログや設計のように、
いかないし、やっていないし、できない」
こんなこと言ったら、怒られちゃいますね(^-^;
でも、
手抜きではなく、現場ではこのような現実にぶつかることが多く、苦労する場面がたくさんあります。
したがって、
メンテナンスを確実に行うには、設計だけの知識だけではなく、現場の知識も必要なんです。
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