ようこそ! Taurus🐂の橋梁点検ノートへ。
劣化シリーズでは、
読者の皆さまから頂いた質問を改編し、ケーススタディ形式でお届けしています。
「こんな損傷あるんだ」
「だから再劣化するんだ」
「こういう考えもあるんだ」
このブログの記事が、
橋梁メンテナンスに携わる ”あなたの力” になれたら嬉しいです。
ではさっそく、いってみましょう!
※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちで読んでいただけると助かります。
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目次
【再劣化case08:塩害を受けているような?BOXカルバート】
■質問:塩害影響地域でのBOXカルバートの損傷について
『RC構造のBOXカルバートの頂版や側壁の広範囲でうきや剥離が発生しています。
海が目の前にあり常にしぶきがかかっています。
10年くらい前に海側の内側を全面補修しています。
今回は山側なんですが損傷原因は塩害だと思っていました。
ところが塩分量を調査したところ、
塩分量は1.2kg/m3以下だったのです。塩害ではないということでしょうか?
補修するときに留意しなければいけないところが教えてください。』
ボックスカルバートは、
箱型の構造物で市街地や海、田園等のいろいろな所で使用されています。
その用途は水路や道路等があり、これもいろいろです。
一般の方に、ボックスカルバートと言っても通じませんよね。
四角いトンネル? でしょうか(^-^;
この四角いトンネル。
見た目は橋梁ではないのですが、カルバートの上を車両が走ったり、その下を歩行者等が通過したりと、橋梁のように活用されることもあります。
そのような事情もあり、
橋梁点検では ”ある一定の条件” を満たしたボックスカルバートについては「溝橋(みぞばし)」として点検することになっています。
溝橋の点検方法は、
通常の橋梁と比べると簡単です。
なぜかと言いますと、
・形が単純。基本的に四角(箱型)ですから。
・通常の橋梁と比べ圧倒的に部材が少ない。
・損傷が少ない。プレキャストなら更に損傷少ない。
・損傷パターンが少ない。
・延長が短い。
点検のポイントさえ押さえてしまえば、短時間かつ簡易に点検できます。
”どこを補修すればいいのか?”
だけであれば、だいたい10分くらいあればOKです。
簡単にできるところは、より簡単に費用をかけずに維持管理できればいいですよね(^^)/
ただ、
以下のような溝橋では注意が必要です。
1.人や車などが通過し、第三者被害の影響を考慮するとき
2.基礎地盤が軟弱地盤のとき
3.塩害等の影響で再劣化を繰り返しているとき
これらの条件では
10分で点検終了! はいっ! 次!!
と、言うわけにはいきません・・・
基本的に延長が短いので、通常の橋梁のように時間はかかりません。
ただ、
コンクリート片が落ちてこないか打音の範囲を広げたり、目地の開きに対する進行性を見極めたり等と、色々と気を付けなければいけません。
今回はこの3番のケースでした。
ほんと、補修しても治らないってガッカリしちゃいますよね( `ー´)ノ
と、いうことで今回も劣化事例から考えていきましょう~!!
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■Case Study: 一緒に考えてみましょう!
■質問 『RC構造のBOXカルバートの頂版や側壁の広範囲でうきや剥離が発生しています。 海が目の前にあり常にしぶきがかかっています。 10年くらい前に海側の内側を全面補修しています。 今回は山側なんですが損傷原因は塩害だと思っていました。 ところが塩分量を調査したところ、 塩分量は1.2kg/m3以下だったのです。塩害ではないということでしょうか? 補修するときに留意しなければいけないところが教えてください。』
わたしは下記のように考えました(゜-゜)
⇩ ⇩ ⇩ ⇩ ⇩
今回の損傷の要点は4つ。
1.RC構造のBOXカルバートの広範囲でうきや剥離が発生
2.常に海水のしぶきがかかっている
3.10年前に海側の内側を全面補修。今回は山側が損傷
4.塩害と推定していたが、塩分量は1.2kg/m3以下
海が目の前にある溝橋。
海側は過去に補修済み。
今回、損傷しているのは山側。
損傷は広範囲。
海が目の前にあって、塩害を受けているかのような損傷が広範囲。
でも、塩分量は1.2kg/m3。
「むむむ、なんかおかしいぞ?」
目の前に海があるということは、この溝橋の吐口は海に面していた。と、いうことでしょ?
塩害でボロボロになって、補修した・・・、それはそうなるよね。
つぎに劣化するのは、海から遠い位置にある吞口側・・・これも必然のようなもの。
じゃあ、なんで塩分でないの?( `ー´)ノ
ということで、質問くださった方に内容を確認をしたところ、
<施工時期は不明ですが、海側に拡幅している。>
しているとのこと。
海側に拡幅している。
と、いうことは先に補修した吐口側ということでしょ・・・
あとで建造した方の部分が塩害でボロボロになってしまったと。
海により近くなるから、まぁ、そうなってもおかしくないか。
ここでまた疑問が。
じゃあ、なんで塩分でないの!?( `ー´)ノ
もしかして・・・
あ、そういうこと?( ゚Д゚)
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■回答: 損傷原因と調査時の留意事項について
今回、なんか引っかかるなと。
質問くださった方に再度確認したところ、やはり想定通りでした。
おそらく、これを聞けば
『そんなことってあるの?( – ‐)』
という反応が返ってきますね。
まず、
今回のケースに対する損傷原因ですが、
「塩害」
です。
じゃあ、なぜ塩分がでない。 なんてことが起きたのでしょう?
それは調査方法にありました。
ー-------------
Taurus🐂:今回、どこで塩分量調査しましたか?
質問者🐔:え?一番、塩害がでやすい場所です。
Taurus🐂:もしかして、海側ですか?
質問者🐔:海側の波のしぶきをうけているところです。
Taurus🐂:今回、劣化している吞口側ではないんですね?
質問者🐔:はい・・・
ー-------------
どうでしょう?
わかります?
調査位置、あっていますか?
ある意味、基本に忠実💧
海からのしぶきを直接受けていようと、劣化し補修しようとしている範囲は拡幅部ではありません。
しかも、
10年前に全面補修した範囲で調査(上図:調査位置)しても、塩分はないといってもいいでしょう。
10年程度なら浸透するのも限度がありますので。
こわいのは再劣化のほう。
さて、この話。
タネがわかれば単純な話なのですが、
調査結果を受け取る側の盲点
をついたような話なんです。
なぜなら、
調査結果は正確であることが前提だからです。
調査結果を受け取る側は、その調査結果を信じています。
そのために費用をかけて専門的な技術を有している資格者や企業に調査依頼しているわけですからね。
その信じている調査結果をもとに補修要否を決めているのですから、調査位置が適切でなければ適切な補修とはなりません。
『調査位置を間違うことなどあり得ない・・・まさか・・・』
そうですよね。
それが大原則です。
人間でも同じことが言えますよね?
わからない、たいしたことない、って言われていた病気でも、お医者さんが変わると全く別の診断結果がでてしまう・・・
お医者さんの目の付け所が違うのでしょうね。
ただ、それが結構あるんですよ。
個人の技術力というのは除外しますが、このように調査におけるボタンの掛け違いが起きる要因があります。
それは、
大きく下記の3つ。
1.海が近い構造物は塩分が出て当たり前という固定概念
2.調査のしやすさ
3.過年度での調査位置に踏襲 ※比較のためには大事なこと
今回の調査では、おそらく上記の1と3が該当したのかもしれません。
海が近い構造物に対して、過年度の調査結果と比較しその進行性を判断するため、いつも調査している場所から結果を得る・・・
いつもならこれでいいでしょう。ただ今回は違いました。
調査結果を受け取る側(道路管理者側含む)というのは、必ずしも橋梁の知識が豊富なわけではありません。
そのため、専門知識を有した技術者の調査結果には絶大な信頼を寄せています。
なので今回のように
塩分量がなかった=塩害ではない
という誤解をしてしまうのも無理もありません。
これをもって管理者責任を追及するのは酷な話です。
調査した側の責任ですからね。本来。
今回のケースは溝橋でしたが、通常の橋梁でも同じことが起こります。
ウソのようなホントの話ですが。
調査資料というのはとても重要なんですが、近年は電算であったり、数字が細かかったり、数十枚もの資料になるので、あまり見たくありません。
ただ、
補修要否を決める際には重要となるポイントがあるので、それを見逃さないことが大切です。
難しいことですが、
今回のようなケースがあれば注意してみてはいかかでしょうか?
あなたはどう考えますか?(´-`*)
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【さいごに】
溝橋は点検が簡単ですし、構造も単純なので、直轄で点検する自治体も増えています。
ただ、今回のようなケースを数多く見ていると溝橋といえども安易に考えてはいけないなと怖くなる時があります。
気をつけないといけませんね。
さて!
次回は、溝橋を補修するときに注意する点について私が経験した再劣化事例を交えながら書いていきたいと思います。
「再劣化case09:塩害BOXカルバートに対する補修事例と再劣化事例」
また来週~
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