ようこそ! Taurus🐂の橋梁点検ノートへ。
劣化シリーズでは、
読者の皆さまから頂いた質問を改編し、ケーススタディ形式でお届けしています。
「こんな損傷あるんだ」
「だから再劣化するんだ」
「こういう考えもあるんだ」
このブログの記事が、
橋梁メンテナンスに携わる ”あなたの力” になれたら嬉しいです。
ではさっそく、いってみましょう!
※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちで読んでいただけると助かります。
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目次
【再劣化case09:塩害BOXカルバートの補修・再劣化】
先週UPした
再劣化case08:塩害を受けているような?BOXカルバート では、
”これから補修を考えているBOXカルバート” の損傷原因や調査の問題点について書きました。
今回は、
補修するときにどんなことを注意したらいいのか?
について書いていきたいと思います・・・が、
コンクリートの補修事例は世の中にたくさんあるので、このブログではやはり実務的なことを書こうかと( `ー´)ノ
補修はしたけれど・・・
とならないように、
補修計画の参考にしていただければ幸いです!!
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■補修事例と再劣化①:全断面修復
海に近いBOXカルバート。
そのBOXカルバートは水路に使われています。
そんなBOXカルバートを思い浮かべてください。
今回のケースは、
塩害や山側から流れ込む流水の影響で内空断面がボロボロのBOXカルバートです。
長年放置されていたこともあり、
建造された当初の面影はなく・・・
そんなボロボロのコンクリート構造物を補修するとなると、ちょっとやそっとの補修工事では意味がありません。
ここは大手術が必要です。
本当は更新(つくりなおし)が妥当なのですが、BOXカルバートを更新するのはなかなか大変。
なぜなら、道路のなかに埋まっていますからね。
橋梁のように空中にあるわけではないので(^-^;
さて、
更新が無理ならということで、
悪い所をすべて補修しちゃえ!( `ー´)ノ
ということで、
「全断面修復」が選定されることになります。
しかし、
注意しなければならないことが。
これを見落としてしまって、余計悪くなってしまうこともありますので補修は奥が深いです・・・
補修設計の段階では
補修中の状態=断面が減少している状態
に注意しなければなりません。
構造物を全断面修復するということは、当然の話ですが断面が薄くなっています。
しかも、
塩害を受けてボロボロですので、表面をけずって終わりというわけにはいきません。
”鉄筋の裏側まで斫って”補修するのは大原則となります。
鉄筋のかぶりが3cm、鉄筋径、劣化深さ等を考慮すると、10cm斫ってしまうこともあります。
全面通行止めできることは基本ありませんので、交通を開放しながらここまで断面を薄くしてしまっては、残っている耐力では安全とは言えません。
人間に例えると、手術中は無防備です。
手術中は大事に慎重に、が基本ですよね?
その無防備なBOXカルバートの補修で
特に危険な部位は「頂版」
です。
補修中も頂版は輪荷重の影響を受けていますので、
この耐力がのこっていない状態、かつ輪荷重を常時うけている状態では、頂版に何が起きてしまうのか?
それは、
更なる損傷拡大
です。
補修直後はとてもキレイな表面をしていますが、時間が経つと漏水やひびわれが発生することがあります。
断面が薄くなった時にそれまで損傷していなかった(少なかった)頂版上面が損傷してしまうことが理由です。
輪荷重を考慮して補修範囲を考慮し、少しずつ少しずつ補修していけばいいかもしれません。
補修設計では、それを考慮しパイプサポート等で支保工を組み、なんとか影響を抑制しようとすることがあるのですが、時間と費用の制約が多い補修工事ではそこまでできるかどうか。
BOXカルバートは見た目が頑丈そうなのですが、結構再劣化しますのでご注意を。
あと!
BOXカルバートの頂版上面は土が盛られていることが多いので、橋梁のように漏水対策として防水することも容易ではありません。
再劣化しないためにも全断面修復の設計や施工には要注意。
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■補修事例と再劣化②:吹付けコンクリート
先ほどの続き。
全断面修復はその名通り、すべての範囲を修復するので補修範囲が広いです。
コテを右手に、皿に乗せた補修材を左手にもって、補修するはとてもできません。
そこで、選定される工法が「吹付けコンクリート」。
圧縮された高圧の空気でコンクリートを施工面に吹き付けていく工法です。
便利ですよね。吹付けコンクリート(´ー`)
掃除機のノゾルに似たところから、コンクリートがバッシャバッシャ(あるいはモリモリ)でてくるのであっという間に断面修復できる優れものです。
しかし、ここにも注意するべき点が・・・
それは、
吹付けたコンクリートの未充填
です。
未充填が想定される箇所というのは基本的に鉄筋の裏側が該当します。
そんなことがないように職人さんは注意しながら施工してくれますので、鉄筋の裏側くらいなら未充填になることは基本少ないと言えるでしょう。
鉄筋ていどなら・・・(-_-)
塩害を受けたコンクリート構造物の補修では、再劣化させないために様々な努力を行うのですが、その1つに電気防食があります。
電気防食も様々ですが、犠牲陽極材を埋めこむ工法が安価であり、施工も簡単なのでよく採用されます。
犠牲陽極材もこれまた様々で、薄いプレートのようなもの、金網のようなもの、固形石鹸のようなものまであります。
それぞれに長所短所がありますが、
今回紹介する事例は固形石鹸タイプ。
これを埋め込むときに、既設の鉄筋にしばって固定するのですが、吹付けコンクリートがこの石鹸くらいある大きさの犠牲陽極材の裏側まで侵入していかないことがあるのです・・・
腐食というのは、電気の流れ(電位差)が影響することで発生するので、犠牲陽極材のまわりに隙間があればその効果は減少してしまいます。
このような塩害対策として有効な犠牲陽極材を埋め込んでも、隙間を生じさせないように施工管理することがとても大切です。
この材料を使った補修後も観察していますが、いまのところ再劣化が少ないように感じています。
電気設備も不要ですし、費用対効果が高いとても優秀な材料と言えます。
せっかくの効果的な工法や材料も、力を発揮させる環境の提供が技術者として重要な役割だと思います。
この事例は、なにもBOXカルバートに限った話ではありませんので、もし類似の施工を行う際には参考となるかもしれませんね。
あなたのまわりで、
今回の事例はありませんか?(´-`*)
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【さいごに】
塩害を受けた構造物は、まだ未解明なところがたくさんあります。
・塩分が大量に混入しているのに、内部の鉄筋がなぜか腐食しない。
・同じような塩分含有量、海岸からの距離。構造形式が違うだけで劣化の差がでてしまう。
など、
なんとも摩訶不思議(-_-)
これらについても今後UPしていきたいと思います。
さて!
次回の再劣化事例ですが、コンクリートが続いたので、メタルに戻ろうかと。
次回は、
「再劣化case10:積雪寒冷地域で起こる支承アンカーボルトの抜け出し」
です。
これも色々パターンがありますので、まずはパターンその1を紹介していきたいと思います!
お楽しみに~
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