健全性の診断事例

健全度case07:第三者被害への影響も健全性に関係あるの?


橋梁点検ブロガー【Taurus|トーラス】です🐂

”二ッチではあるけど面白い橋梁点検”

に役立つ情報をこのブログでは発信しています!

このブログの記事が、
橋梁点検、橋梁補修に携わる ”あなたの力” になれたら嬉しいです。

ではさっそく、いってみましょう!

※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちでご一読くださいませ。

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目次

【第三者被害とは?】


橋梁点検は、

橋梁構造の安全性を確保することだけではありません。

第三者の安全を守ること

これを特に重要視しています。


建造当初は丈夫な構造物でも、少しずつ劣化していきます。

例えば、
構造物の性能にはまったく問題にならない小さなコンクリート片でも、歩行者の頭に落下すると大惨事になってしまいます。

そのような被害を予防するために、

定期点検とは別に「第三者被害予防措置」という特定点検を行います。

下記の要領が国土交通省から出されていて、基本的にはこれに準じて5年毎に行う定期点検の中間年で行っています。

「橋梁における第三者被害予防措置要領(案)」

2.措置の目的
本要領(案)にもとづく措置は、橋梁を構成するコンクリート部材の一部が落下して第三者に与える被害(以下、「第三者被害」という。)を予防することを目的とする。

第三者に与える被害を略して、第三者被害と呼んでいます。

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【第三者+被害+予防とは?】


そもそも、

「第三者」とはだれでしょう?


辞書で意味を調べると、

”当事者以外の人。その事柄に直接関係のない者”

と書いてあります。


橋梁点検では違います。

先ほどの要領の抜粋です。

橋梁における第三者被害予防措置要領(案)

第三者とは、当該橋梁の下を通過あるいは橋梁に接近する者(車及び列車等を含む。)をいい、  
■第三者被害とは、橋梁を構成するコンクリート部材の一部(コンクリート片)が落下し第三者に対して人的・物的被害や交通障害などを与えること又はその恐れを生じさせることをいい、  
■予防するとは、落下の可能性のある損傷箇所を把握し、必要に応じて事前に叩き落とすなどの適切な予防措置をとることをいう

辞書とは違い、<第三者>に範囲は人に加え、車や列車等もふくんでいます( `ー´)ノ

道路管理者や工事関係者などに限らず、橋という構造物が人的・物的に与える被害について予防しようというわけですね。

1つここで注意したいのは、

ここでいう被害を与える対象というのは【コンクリート】だけということです。


鋼部材は?

そのほかの材料は?

そうですよね。
落下する可能性があるのはコンクリートだけではありませんよね?


ではなぜ、
ここでコンクリートしか出てこないのかというと、

そもそも

「橋梁における第三者被害予防措置要領(案)」は被害を与える重大性からコンクリートを主な対象としているからなんです。

この要領の解釈で誤解しやすいのは

コンクリートだけを落下対象としてしまうこと!!

この要領は、

コンクリートに特化しているだけ

のことなので注意が必要です。


昨今では、
橋梁の老朽化に伴いコンクリートのみならず、鋼部材やそのほかの材料も落下するようになりました💦


コンクリートは重いので基本的に下にむかって落ちていきますが、

それと比べて腐食片や薄い鋼板、目地材は軽いので風で飛んでいくことがよくあります。

冬期限定ですが、氷柱も要注意です。

老朽化と共に、このような落下物による危険も年々増しています!

そのため、
部材が落下したり飛散したりしないか、かなり気をつかって点検しているのです。

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【第三者被害予防措置後の考え方】

第三者被害が発生する場所というのは以下のような場所です。

① 桁下を道路が交差する場合
② 桁下を鉄道が交差する場合
③ 桁下を公園あるいは駐車場として使用している場合
④ 接近して側道又は他の道路が併行する場合


こんなところでに部材が落下したり飛散したりしたら

大事故です。

やさしく落ちたり飛んできたりすることはありませんから。

例えば、
小石ほどのコンクリート片が落ちそうだったします。

この健全度はどう評価すればいいのでしょう?


この図の定義だけを見ると、

道路橋の機能に支障が生じているか?いないか?

だけですので、


道路橋の機能が健全であれば → 健全度Ⅰ

道路橋の機能が健全でなければ→ 健全度Ⅱ~Ⅳ


・・・ということになってしまいます。


小石ほど小さいコンクリート片がはがれても、道路橋の機能に支障が生じる可能性が低いので健全度Ⅰなのでしょうか?

つまり、補修は必要ないと(゜-゜)

違いますよね?

なんらかの措置は必要です。

各点検要領でも、叩き落しなどの応急対策を行ったうえで評価することとしています。


叩き落しでそれ以上落下する可能性が全くなければ健全度Ⅰでいいのでは?

という議論になることがありますが、本当に全くないと言い切れるのであれば、それは応急対策ではなく恒久対策とも言えます。


それらを踏まえ、

叩き落しなどを行ってもまだ落下する可能性があれば、それは応急対策どまり。

補修は必要ということになります。

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【第三者被害予防の健全性事例】

健全性の診断において、

これらの評価をどの区分(健全度Ⅱ等)にするかは各道路管理者側の考え方によりますので、絶対的な基準は今のところありません。

参考として下記の方法があります。

■参考1

応急対策後の落下等による第三者被害の可能性は残っているものの、緊急性はない

予防保全段階:健全度Ⅱ


■参考2

上記を超え、緊急性がある

緊急措置段階:健全度Ⅳ


ちなみに、

ここでいう緊急性の時間的な指標ですが、措置を行うまでの時間を示しています。

定期点検で健全度ⅡやⅢとなった場合、次回点検までに補修することになっていますから、5年間の猶予があるかないかです。

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【さいごに】

構造物は強くて丈夫。

一般の方々でこれを疑う人はいないでしょう?

頭上から劣化した部材の破片が落ちてくるなど想像もしていないでしょうね。

しかし、
近年コンクリートや鋼材の落下による被害がでているのも事実です。

職業柄でしょうね。

高架橋下の駐車場、マンションの修繕工事の足場、打ちっぱなしコンクリートで造られた屋内温泉・・・

こんな場所を通るとき、つい頭上の劣化状態を確認してしまいます。


万が一がいつ起きるかもしれませんから。

人もいない、お金もない。

こんな状況のなかで、構造物の安全性にはまったく問題にならない劣化状態に対して補修費がかけることには少なからず抵抗があるものです。

しかし、
身近な人の安全を守ることに置き換えれば難しい判断ではないと思っています。

あかの他人でも自分でもなく、大事な家族が劣化した構造物の下にいるとしたら?


最後に、
誤解してはいけないのは、必ずしも多額の費用は必要ないということ。

補修費用と健全度の回復は一致しないことが多いのです。

なかにはDIY、ホームセンターで用が足りることがあるのですから。

次回!!
「健全度case08:危険な範囲と安全地帯」

また来週~

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インターネットがこれだけ発達しても自分が本当に必要な情報というのは、なかなか探せないものなんだということ。

専門性の高い分野ともなると、難しい言葉で書かれた論文が多くなり、それが自分の知りたい情報だったのかすらわからなくなるときが多々あります。

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