健全性の診断事例

健全度case10:第三者健全度Ⅱハナタカ編_床版水切り部


橋梁点検ブロガー【Taurus|トーラス】です🐂

”二ッチではあるけど面白い橋梁点検”

に役立つ情報をこのブログでは発信しています!

このブログの記事が、
橋梁点検、橋梁補修に携わる ”あなたの力” になれたら嬉しいです。

ではさっそく、いってみましょう!

※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちでご一読くださいませ。

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目次

【こんなにあるの?第三者に影響ある損傷】

まず本題に入る前に第三者点検について。

第三者点検の基礎はこちらの一覧から!
健全性の診断事例に関する記事一覧 (linxxx.jp)https://linxxx.jp/blog/category/diagnose/

橋梁点検では、
点検した橋の健全性(健康状態)を4段階で評価します。

それを健全性の診断といいます。

さて、
この健全性の診断ですが、主に2つ観点で評価を行います。

1.橋梁構造の安全性
2.第三者への安全性


上記2つのどちらも大切なことですが、
”1番の橋梁構造の安全性” をどうしても優先してしまいがちです。

多少、橋が錆びていても、コンクリートが剝がれていても橋が落ちることはありません。

しかし、
それを利用するには私も含めた人間です。

人の安全性という観点からは小さな損傷でも大きな問題です( ゚Д゚)


ということで、
橋を安全に維持管理する以上、第三者に影響ある損傷について知っておく必要があります。


参考になる資料としては、

「橋梁における第三者被害予防措置要領(案)」

があります。

ネットで検索すると土木研究所や国土交通省地方整備局等からUpされているので確認できます。

写真付きで掲載されているので参考になると思います。


ただ、

この資料で紹介されているのは、主にコンクリートなんですね。


最近では、

橋梁の老朽化に伴って、いろんなものが落ちる可能性がでてきました。


例えば「落下」するものといえば、

錆びた鉄(鋼)の欠片
はがれそうな塗膜
ゆるんだボルト
目地板
寒冷地では氷柱

ほかにも、
「落下」だけではなく、「飛来」や「凹凸」まで含めれば

伸縮装置や地覆カバー(薄い鋼板)
・伸縮装置のフィンガー
舗装の凹凸
路上に転がった小さなコンクリート塊やボルト


結構ありますよね。

どうでしょう?
これらの損傷が健全性に影響を与えるということ自体、初耳の方もいるのではないでしょうか?

でも、
改めて言われると

『たしかに健全度Ⅰではないような(゜-゜)』

と思いません?

健全度Ⅰのままであれば補修の対象から外れてしまうのですから・・・

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【コンクリートハナタカ編:RC床版の水切り】

第三者点検でよくある損傷の1つとして、

RC床版の水切り

があります。

張り出し床版しかもその外側にある水切り部は1番、利用者との距離が近い場所です!

基本的な劣化メカニズムはより専門的な技術者の方々(サイト)にお任せするとして、少しマニアックかつ点検で知っておくと少しハナタカ(鼻高👃)な知識を(´ー`)

出典 橋梁における第三者被害予防措置要領(案)平成28年12月 国土交通省 道路局 国道・防災課 P6

橋梁点検経験者であれば、水切り部での損傷自体は有名ですよね。

かぶりが少ないがために、水切り部近傍の鉄筋の腐食が進行膨張しやすく、その影響で周囲のコンクリート片が落下するという事例です。

では、

なぜ全ての水切り部で等しく損傷しないのでしょうか?

水切りの形状、設置方法も同じ。

なおかつ、同じ橋でも損傷のあるところと、ないところ。

おかしいと思いません?

ということで、ここからハナタカです( `ー´)ノ

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■1.水切りにつかった面木の大きさが違う

RC床版の鉄筋組立、コンクリート打設の前に当然、型枠をはります。

その型枠組立時に水切りとなるのは、

”面木”

です。

これを打ち付けていくわけですが、この面木はあまり耐久性があるわけではないのです💦

たまに現場足りなくなったりして、材質や大きさの違う面木で代用することがあるのですね。

1,2mmなんですが、これが侮れません。

なぜなら、
初めから ”かぶりがない” んですから。

面木を踏むと大工さんに怒られます。デリケートな面木。

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■2.水切りにつかった面木が浮いている

型枠に面木がどうやって設置されるか知っていますか?

”細い釘”

です。

しかも、面木の断面が小さいので細い釘を使います。

細い釘ですから、それほど付着強度はありません。

型枠の高さを支保工で調整したり、鉄筋組立時の死荷重で型枠がズレたり沈んだりと、コンクリート打設まで色々あるわけです。

そんなことをしている間に、面木が浮いたり、外れてしまうことも。

そうならないように施工者は気を付けてはいるのですが、こういう事例もあります。

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■3.スペーサー不足

さて、
3番目にご紹介するのは

”スペーサ不足”

です。

かぶり不足を解消するために、スペーサーというモルタルブロックを設置します。

1m2あたり、4個入れることになっているので結構な数が入ります。


この数を入れるとスペーサーだらけで、

『ここまで本当に必要か?!』

と橋を架けていた当時は思っていました。

床版の鉄筋径は下部工と違って細い鉄筋で主に組み立てられています。

スペーサーが不足すると鉄筋がたわんでしまい、すぐにかぶり不足となるわけです。


スペーサーの重要性は認識していたものの、まさかその後のメンテナンス人生にここまで頻出すると思わず、甘く見ていました💦

かぶり不足を解消するに対する品質向上スペーサーをたくさん入れるようになったのは、ここ10~20年くらいでしょうか?

※地域や発注者にもよりますので、この年数が妥当かどうかは別としてあくまでもわたしの経験です。


ということもあり、

スペーサーの設置個数が今よりも少ない時代があるので、水切り部にかぶり不足が発生する割合もおのずと大きくなる

ということですね。

スペーサーって外れやすいんですよね
<マメ知識>
コンクリートの表面をよく観察すると、スペーサーがうっすらと見えます。
だいたい、その橋をつくった大工さんの癖がわかるので、点検するときは剥離や鉄筋の腐食を見る以外に、その癖を観察するのも面白いですよ(´ー`)

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■4.段取り鉄筋

さいごに、

『あれ? なんだこの鉄筋?( ゚Д゚)』

ってありません?


これはですね。

本来必要ない鉄筋を施工上の都合で入れた鉄筋なんです。

なので図面にもありません。


この鉄筋のことを

”段取り鉄筋”

と言います。


設計された鉄筋を組み上げるには、

構造鉄筋だけでは組み立てることができない、あるいはやりにくい

ことが多いので、この段取り鉄筋(主にD13)を現場では入れることが多いのです。

構造鉄筋を組み立てる仮固定用に使用するだけならいいのですが・・・

実際はそのままコンクリートを打ってしまうので、入れる位置が悪いと”かぶり不足” になってしまうということです。

壁高欄にも同じ。たまに防食仕様の段取り筋もあります。


これも私の経験上の話ですが、

昔はですね。

それほど、
段取り鉄筋をいれる位置までしっかりと確認していたわけではありませんでした。

将来の維持管理のことまで想定したわけではなかったので、結果的にかぶり不足や早期の腐食を誘発してしまう位置に組立てる場合があったと思います・・・


なので、

点検するときに、
図面に描かれていない鉄筋があれば、段取り筋を疑うことも必要です。

それが構造鉄筋なのか?段取り鉄筋なのか? まで考えるとそれが腐食しても橋梁構造上の問題になるのかわかります。

こんなことが多い水切り部では、コンクリートの剥離や鉄筋の腐食が多く発生するので、第三者被害を与える影響範囲では、健全度Ⅱとして補修を速やかに行うことが大切です。

著しい鉄筋の腐食があったと言って、機械的に健全度Ⅱ等(補修)にしているたまに例がありますが、段取り筋であれば補修しなくても良い場合がほとんどです。

もちろんコンクリートも同時に剥離しているので補修するに越したことはありませんが、費用対効果を考えると優先順位は低くくなりますよね?

だって、段取り筋は構造上なくなっても問題ないのですから。

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【さいごに】

今回挙げた水切り部の損傷は施工した経験がなければ知り得ない内容だと思います。

水切り部が多少損傷しても、橋梁構造にはほとんど影響ありませんが、昨今の第三者への安全確保に対する意識の高まりがある以上、たくさんの知識が必要となります。

橋梁点検では、
設計・施工・材料の知識まで要求される高度な職種だと思います。

このブログでご紹介した知識を通して、より点検の現場が面白く感じてもらえたら幸いです。

老朽化による影響は想像以上に私たちの常識を超えています。

ともに、よりよい橋梁点検業界にしていきましょう!!

次回!!
「健全度case11:第三者健全度Ⅱコンクリートハナタカ編_セパレータ部」

また来週~

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■お問い合わせについて■

この活動で日々思うのは、

インターネットがこれだけ発達しても自分が本当に必要な情報というのは、なかなか探せないものなんだということ。

専門性の高い分野ともなると、難しい言葉で書かれた論文が多くなり、それが自分の知りたい情報だったのかすらわからなくなるときが多々あります。

私は検索するのが下手なので、知りたい情報まで辿り着くことがなかなかできません💧


橋梁点検でわからないことや不安なことありませんか?
「こんな損傷があったらどうすれば?」「ほかではどう対応しているの?」「この記事の意味をもう少し知りたい」など。

どうぞ気軽な気持ちでお声がけくださいね!

ブログへのご意見・ご要望につきましては、下記専用フォーム・TwitterDMからお寄せください(´-`)
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