健全性の診断事例

健全度case11:第三者健全度Ⅱハナタカ編_セパレータ部

橋梁点検ブロガー【Taurus|トーラス】です🐂

”二ッチではあるけど面白い橋梁点検”

に役立つ情報をこのブログでは発信しています!

このブログの記事が、
橋梁点検、橋梁補修に携わる ”あなたの力” になれたら嬉しいです。

ではさっそく、いってみましょう!

※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちでご一読くださいませ。

ーーーーーーーーーーーーーーー

目次

知ると無視できなくなるセパ後埋め部の落下

第三者点検で注意しなければならない損傷はたくさんあります。

なぜなら、

補修の対象とならないような小規模な損傷でも、第三者への影響があれば補修優先度が一気に高くなる損傷となるからです。

損傷の見逃しは、利用者の命に直結します。

コンクリートの破片等が頭上から落下してくるなんて想像したくありません(>_<)


さて、

「落下」だけでもこんな例があり、

・コンクリート剥離
・セパレーター穴の後埋め部
・錆びた鉄(鋼)の欠片
・はがれそうな塗膜
・ゆるんだボルト
・目地板
・寒冷地では氷柱


そして「飛来」や「凹凸」まで含めれば、

・伸縮装置や地覆カバー(薄い鋼板)
・伸縮装置のフィンガー
・舗装の凹凸
・路上に転がった小さなコンクリート塊やボルト

など・・・

材質や現象に限らず多種多様で、しかもその数実に多し。

これらの多種多様な損傷を確実に点検するためにも、その劣化原因や損傷の進行性について少しでも知識を増やしていくことは点検技術者の大きな自信になるはずです。


と、いうことで

わたしの経験をふまえ、第三者点検のハナタカシリーズを前回のブログから書き始めました。

最も第三者点検で発生する頻度の高い ”コンクリート剥離” から「水切り部の剥離」について
健全度case10:第三者健全度Ⅱハナタカ編_床版水切り部 | 【Linxxx公式】現場で役立つ橋梁点検ノート


今回のテーマは前回のコンクリートつながりで、

けっこう無視されがちだけど、知ると無視できなくなるセパ後埋め部

について書いていきたいと思います( `ー´)ノ

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セパ後埋め部ってなんだっけ?】

コンクリート構造物を建造するのに欠かせないのは型枠です。

まだ硬化していない状態のコンクリートを型枠に流し込んでいくと、数トンもの荷重が型枠に作用するので、その荷重を支えるために、型枠を単管等でしっかり固定(形状保持も)します。

この型枠を内側から固定する時に登場するのが、セパレーターとコーンです。

今回のテーマ ”セパ後埋め部(せぱあとうめぶ)” は、この「セパレーターとコーン」に関連しています。


ちなみにセパ後埋め部を省略しないで書くと、

「コンクリート硬化後の型枠解体時に露出するセパレーター部のコーン穴の後埋め処理

です(^-^;


セパレーターやコーンが今回のテーマの主人公なので、まず型枠の構成をしっておく必要があります。

が・・・

型枠を実際に見たことがないとイメージが付かないと思います。

どうでしょう?

型枠を組み立てたり、解体したことありますか?(´ー`)

型枠を解体していく順序を4段階にすると、

■1.合板を外側から固定していた単管、パイプサポート、チェーン等を解体していきます。
     ↓
■2.つぎに合板をバリっとはずします。
     ↓
■3.すると見えてくるのが「コーン」です。
橋梁ではプラスチック製のコーンがよく使用されるので、「Pコン(ピーコン)」と呼んでいます。
このPコンは、コンクリート打設用の仮資材なので取り外さないといけません。
Pコンを取り外すとコンクリート面には穴があいたような状態になります。
     ↓
■4.この穴から水や空気が浸入するとコンクリートの損傷を誘発してしまうので、コンクリート打設後すぐに穴をふさぐ必要があります。

この穴処理のことを ”後埋め部 あるいは 穴処理部” なんて読んでいるのですね。

合板を使用した型枠の構成

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【いろいろな後埋め方法】

セパ後埋め部についてここまで書いてきましたが、いよいよ本題に。


この後埋め部が第三者点検とどう関連しているのか?

それは簡単です。

この後埋め部が落下するからなんです( ゚Д゚)


コーンの大きさが径30mm、幅25mmだとすれば、それを埋めるのも同じ体積になります。

つまり、

その約30mmのモルタル塊等が落下するということになります💦

どうして落下するのか?

それは穴埋め処理方法が大きく影響しています。


穴埋め処理の方法は以下の2つが基本です。

・現場練りしたモルタルで埋める
・プレキャスト製品で埋める

セパレーター部のコーン穴後埋め処理部


この処理方法には弱点があるので、落下の範囲や進行性をだいたい捉えることが可能です( `ー´)ノ

ーーーーーーーーーーーーーーー

【処理方法別の弱点】

■1.現場練りしたモルタルで埋める

構造物が大きくなればなるほど、型枠の面積を大きくなるので、型枠解体時のコーン穴の後埋め部の数も増えていくことになります。

型枠解体時にこの穴をひたすら埋めていくわけですが、材料は現場にある(余った)モルタルだとか、大工さんが持っている材料です。

これを現場で手練りして使います。

構造物と同じ断面となるわけですから、その構造物と同程度の強度が必要です。基本です。


ただ・・・

この基本が守られていないような後埋めモルタルに遭遇することがあるのです( ゚Д゚)


見ればわかります。

見分けるポイントはモルタル表面

です。


モルタルはセメントと砂(細骨材)と水で構成されているのですが、表面が ”ツルツル” しておらず ”ザラザラ” していれば粗悪な施工方法として良いでしょう。

要注意現場です。

ツルツルしていないということは、空隙がたくさんあるということ。

水や空気、塩分が浸入しやすい状態ですよね。

粗悪なモルタルが充填されていることも・・・



となれば・・・

・劣化の進行性は早くなりやすいので後埋めモルタル自体が朽ちてくる →後埋め部落下

・そこから浸入した水や空気よって、その奥にあるセパレーターが腐食膨張する →後埋め部落下

・セパレーターの軸部にそって水等が浸入して、コンクリート構造体自体が劣化 →本体の剥離落下

もしこのような現場に遭遇したら、構造物全体の品質を疑って点検してみると他でも同じような施工をしている可能性があるかもしれません。


■2.プレキャスト製品で埋める

モルタルによる品質のばらつきを軽減させるために、プレキャスト製品を使用することがあります。

製品自体は密実です。
品質はとても優秀です。

そして、
現場で手練りすることがないので施工も簡単かつ短時間で、見た目もキレイです(´ー`)

いいことばかりのプレキャスト製品。


のように思えます。


ただ・・・
これが維持管理の難しさです。

第三者点検では、現場で手練りする処理方法よりも注意しなければなりません。


それは、

プレキャスト製品であるがゆえの落とし穴があるからなんです。


見分けるポイントは、

プレキャスト製品とコーン穴との隙間

です。


これも見たらすぐわかります。

隙間が空いていますから。


隙間が空く原因2つあります。


>>>>>>>>>>>>>>>

1つ目は施工品質です。

施工順序はいたって簡単で、

■1.穴に接着剤を入れる。
■2.プレキャスト製品のコーンを押し込む。

この2つです。


コーンを押し込んだときに接着剤の量が溢れるくらいに充填していないと隙間ができてしまい、その隙間から水等が浸入してしまうのですね。

簡単かつ製品自体の品質の良さの慢心が維持管理上の弱点になってしまった事例です。

その施工品質の実態は意外に粗悪なことがあります。


>>>>>>>>>>>>>>>

2つ目は、製品のサイズです。

構造体の穴と比べて、プレキャスト製品のサイズが全く合っていないことがあります。

橋梁の上部、下部それぞれで使用するコーンのサイズはほぼ決まってるのですが、より品質を追求するために特殊なコーンを型枠組立時に使用することがあるのです。


例えば、
ロングピーコンとか、径の大きなあるいは小さなコーンですね。

このようなコーンを使用した現場と知らず、いつものコーンだと思い込んで現場に持ち込むとその現場では使用できない、なんてことが生じてしまうのです。


点検で注意しなければならないのはプレキャスト製品のサイズが小さいときです。

見た目はキレイなんですけど、プレキャスト製品なんで。
おしいですよね(-_-)

接着剤の充填不良やサイズ間違い

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【さいごに】

今回の ”セパ後埋め部編” は、少しでもハナタカ情報としてお役に立てたでしょうか?

安全を守るためですから、こんな情報を知っておいても損はないですよね(´ー`)

第三者点検で落下あるいは落下の可能性が高いことが明らかになり大問題となるのは、実際の現象が起きてからほとんどです。

でも、
今回もそうですが、その要因がきちんとあります。

点検では
”見ない、見過ごし、先送り” という言葉ありますが、

老朽化が進むインフラに対しては、改めてこの言葉の意味を考えていかなければなりません。

それと、
構造物を点検するときに大事なことは、現場の観察です。

どういう想いで、どういう品質を目指して、またどんな苦労があって、その構造物がつくられたかということを考えながら私は観察するようにしています。

外観だけではわからない損傷も、自分だけが見えてくる損傷があればもっと点検が面白くなりますよ!


次回は最近動画やニュースで見かけた大型トラック等が橋に接触する事例について書いてみたいと思います。

健全度case編はそのあとで。

次回!!
「なぜ起こる?!世界的に多い橋への接触事故」

また来週~

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

■お問い合わせについて■

この活動で日々思うのは、

インターネットがこれだけ発達しても自分が本当に必要な情報というのは、なかなか探せないものなんだということ。

専門性の高い分野ともなると、難しい言葉で書かれた論文が多くなり、それが自分の知りたい情報だったのかすらわからなくなるときが多々あります。

私は検索するのが下手なので、知りたい情報まで辿り着くことがなかなかできません💧


橋梁点検でわからないことや不安なことありませんか?
「こんな損傷があったらどうすれば?」「ほかではどう対応しているの?」「この記事の意味をもう少し知りたい」など。

どうぞ気軽な気持ちでお声がけくださいね!

ブログへのご意見・ご要望につきましては、下記専用フォーム・TwitterDMからお寄せください(´-`)
CONTACT | 【Linxxx公式】現場で役立つ橋梁点検ノート

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