健全性の診断事例

健全度case18:その補修。いま本当に必要ですか?

橋梁点検ブロガー【Taurus|トーラス】です🐂

”二ッチではあるけど面白い橋梁点検”

に役立つ情報をこのブログでは発信しています!

このブログの記事が、
橋梁点検、橋梁補修に携わる ”あなたの力” になれたら嬉しいです。

ではさっそく、いってみましょう!

※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちでご一読くださいませ。

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目次

【点検結果は聞きたくない・・・】

現場での損傷の記録が終わったあとは、いよいよ橋梁点検のメインイベントが到来です!

それは・・・

点検結果を踏まえて ”措置方針(健全性の診断)” を決めること。


簡単に言えば、

補修する?しない?
補修するならどんな補修が必要か?
今回は補修しないで損傷の進行を観察して決めよう。 

などを、

国の基準に則って橋の、あるいは各部材の損傷(劣化状態)を下表の「Ⅰ~Ⅳ」の4つの区分するということです。

出典 橋梁定期点検要領平成31年3月 国土交通省 道路局 国道・技術課


例えば各部材の損傷状態が、

健全度Ⅰであれば   →補修は不要。お金かからない。
健全度Ⅱ以上であれば →補修が必要。お金かかる。

こんな感じに区分します。


道路管理者からするとこれが一番重要な部分なのです。

なぜなら、
この健全性の診断結果が、補修有無や費用に直結しているからです。

健全性が悪ければ補修が必要になりますから、それに比例するように費用も増えていきます。

特に最近は、
橋の高齢化が進んでいることもあり点検をすればするほど


補修箇所が増える💧

補修費用も増える💧

補修が間に合わない💧

という負の連鎖から抜け出せなくってきているのが現状です・・・

そういうこともあり道路管理者の立場からすると、

『点検結果を聞きたくない』

こんな気持ちになることもあるでしょうね。

橋を守るか、破産しないように町を守るか。

切実な悩みです。

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【なにが正しいのかわからない】

点検技術者から ”補修が必要” との報告を受けたあと道路管理者は予算を確保し工事を行っていきます。

昨今のように老朽化している橋がまだ多くなかったころは、それほど補修に対して気にならなかったのでしょう。

ただ・・・

時代が変わりました。

老朽化した橋梁が急速に増え、補修待ちの橋梁が増え続けていっているのです。

補修しても、しても、しても、しても、減らない・・・なんなんだと。

何とかしようと、

『なんとか補修を減らせないか?』
『これって本当に補修が必要なの?』
『いま補修しなくてもいいんじゃない?』

とあれこれ悩むことが尽きないそうです。


さらに追い打ちをかけるのは、

『こっちの橋とあっちの橋の損傷は同じように見えるけど、補修方法が違う』
『損傷の外観は変わっていないのに、前回点検で健全度Ⅱだった損傷が今年は健全度Ⅰになった』
『なにが正しいのかわからない』

こんな話を道路管理者の方々からよく聞くようになりました。

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【その補修、本当に必要ですか?】

補修しても一向に健全にならない橋梁たち・・・

点検結果のとおりに頑張って補修しているのにどうして・・・


点検結果を道路管理者の方々から聞いていると、

『その補修って必要なのかな?(゜-゜)』

と思うことがよくあります。


その最たる事例を1つ。

++++++++++++++++

■供用後、40年経過した乾燥収縮ひびわれにひび割れ注入

供用後40年たったコンクリート橋を点検したところ、幅0.3mmのひびわれが見つかりました。
それに対して健全度Ⅱと評価し、吊り足場をかけて低圧のひびわれ注入を行うというもの。

積雪寒冷地に架橋されているものの、環境は穏やかで交通量も多くありません。

ひびわれからの錆汁や漏水もありません。

そして、損傷原因は乾燥収縮と判断されています。

ちなみに補修が必要と判断した理由は、
・幅が0.2mm以上であり、補修効果が得られる。
・5年前の点検で幅0.2mmであったが0.3mmに進展している。

++++++++++++++++

このような状況ですが、

もし、このような損傷があったら

「あなた」は健全度をどのように評価づけしますか?

『まだ補修しない、健全度Ⅰ』でしょうか?
『いや、よくある補修だし適切だと思う。健全度ⅡでOK』でしょうか?


わたしはですね。

前者です。健全度Ⅰです。

”いまは”補修しません。

というより、
劣化状態が大きく変わらない限り補修しないと思います(゜-゜)


単純にひびわれの長さや幅だけで判断はできないのですが、供用開始して40年もたつのにひびわれが前回点検から進行するとは考えにくく、ましてや0.1mm程度の幅の変化です。

特にひび割れ幅の計測では、
測る位置や測定者によって数値が変わることが多い
のです。

本来、正確に計測することが点検の原則です。
クラックスケールを使って、1本1本、正確にひび割れ幅を計測することが必要です。

ただし・・・

現実的には数十本、数百本あるひび割れに対してそのような時間をかけることはしていません。

一瞬みて、『これは、0.2mm。あれは0.05mm』というようにだいたいで記録しています。

このような点検方法ですから、
進展性があると判断するのは時期尚早だったのかもしれません。


この場合、

補修判断は5年後の次回点検をまち、本当に進行しているのかどうか見極めてからでもよかったのではないかと感じてしまいます。

点検結果に進展しているかどうかの見極めが必要ということを記録していれば、5年後の点検時にさらにひびわれが進行していれば損傷の進行は早いと判断できますから。

これでも心配であれば、ひびわれにマーキングや進展具合がわかる商品を設置する等の方法でも構いません。

補修費用が捻出できず、橋梁の老朽化は悩みの種となっている昨今です。

それであれば、
なるべく急がない補修は後回しして、優先度が高い損傷から効率的に補修できたらいいですよね。

ーーーーーーーーーーーーーーー

【さいごに】

これも道路管理者の方からよくある相談なのですが、

『技術屋さんが評価した結果に対して『いや違います!』と感覚的に思っていたとしても言い返せない。』

そうですよね。

ただ、
道路管理者であるからには立場上、補修判断ができる知識を国民からは期待されています。

そんなときにアドバイスしあえるような先輩や仲間がいれば業務ではないけど助けてもらえるのですが・・・

しかし残念ながら、橋梁の維持管理分野はこれからの分野なので聞き合える人が身近にいないのが現状ではないでしょうか?


損傷しているから補修する時代から、補修優先度が高い損傷から補修しなければならない時代に移ってきています。

このブログをよんで、こんなときはどうしたらいいんだろう?

第三者の意見もかるく聞いてみたいとおもったら、ぜひ私に声かけてくださいね!

次回!!
「健全度case19:健全度がいつまでも回復しない。補修の無限ループ。」

また来週~

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■お問い合わせについて■

この活動で日々思うのは、

インターネットがこれだけ発達しても自分が本当に必要な情報というのは、なかなか探せないものなんだということ。

専門性の高い分野ともなると、難しい言葉で書かれた論文が多くなり、それが自分の知りたい情報だったのかすらわからなくなるときが多々あります。

私は検索するのが下手なので、知りたい情報まで辿り着くことがなかなかできません💧


橋梁点検で
「こんな損傷があったらどうすれば?」「ほかではどう対応しているの?」「この記事の意味をもう少し知りたい」などがあれば、

どうぞ気軽な気持ちでお声がけくださいね!

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