橋梁点検ブロガー【Taurus|トーラス】です🐂
”二ッチではあるけど面白い橋梁点検”
に役立つ情報をこのブログでは発信しています!
このブログの記事が、
橋梁点検、橋梁補修に携わる ”あなたの力” になれたら嬉しいです。
ではさっそく、いってみましょう!
※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちでご一読くださいませ。
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目次
【補修の無限ループ】
点検は5年毎に行います。
平成26年に法律でそう決まりました。
国、地方自治体等の道路管理者は各基準にそって橋梁の機能を保つために点検し、補修が必要な損傷(健全度Ⅱ以上)があれば補修工事を行います。
そして、次の点検を待つ。
法令で定められた5年毎の橋梁点検を適切に行い、橋梁の健全度を回復させる。
健全度Ⅱの橋は健全度Ⅰに。
健全度Ⅲの橋は健全度Ⅱあるいは健全度Ⅰに。
これが橋梁点検での実質的な目的でしょう。
ただ・・・
最近、業界で少しずつ目立ち始めているのが、
橋の健全度が回復しない💦
という事実があるのです。
おかしいですね。
点検を行い、補修も行っているのに健全度が回復しないのはなぜでしょう?
補修したのですから健全度Ⅱであれば、健全度Ⅰになってほしいもの。
しかし、
現実は補修したからといって、必ずしも健全度が回復するわけではないのです…
5年前の点検で健全度Ⅱ以上の損傷が見つかり補修工事を行ったのに、次の点検でまた健全度Ⅱあるいは健全度Ⅲの損傷が見つかってしまうという摩訶不思議な現象が続出しているのです。
まさに、補修の無限ループ・・・
これにはいくつかの問題があるのですが、補修費用やそれに関連する労力は増える一方です。
いつまで続くの補修工事(゜-゜)
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【無限ループの原因】
では、
なぜ補修の無限ループに陥ってしまうのか?
その原因をいくつか挙げてみましょう。
1.損傷を確認しきれていない
点検をしたのに存在している損傷を見つけられない。
点検は外観目視が基本なので、床版内部の損傷までは正確に確認できないこともあるでしょう。
しかし、
残念ながら外観から見えているのに技術者の技量等や、ごくわずかな損傷であるために損傷を見逃してしまうことがあるのです。
2.損傷の記録方法や基準が点検技術者によって違う
損傷の程度や種類のバラつきことです。
例えば、国の点検要領でいえば、
①腐食を ⑤防食機能の劣化で評価する。
①腐食 c を ①腐食 d にするとかですね。
点検要領の解釈の違いであったり、技術者の技量不足が原因となることがあります。
特に点検要領は曖昧な表現で記載されていたり、内容が難しかったりと記載内容を各技術者が解釈する必要があるのです。
このブログでは点検要領の記載内容を踏まえた私の解釈について書いています。 ご自身が解釈するうえでの参考にできますよ! 損傷種類①:腐食とは?!ーあいつは変わってる、と言われるのは光栄なこと by志村けん | 【Linxxx公式】現場で役立つ橋梁点検ノート
3.健全度の評価基準が点検技術者によって違う
健全度Ⅰを健全度Ⅱに。
健全度Ⅰを健全度Ⅲに。
その逆もあって、
健全度Ⅲを健全度Ⅰ等に・・・評価しているってことです。
『点検をしている意味がないでしょうに!( `ー´)ノ』
と思う方もいるかもしれませんが、これはある意味自然な状態と言えます。
なぜなら、
私の身のまわりでよくあることなのですから。
健康診断や歯医者、車の修理を思い出してみてください。
思い当たることありませんか?
例えば病院でいえば、
受診した病院、診てもらった先生によって病気の見立てや治療方針が違いますよね?
車の車検でいえば、
ディーラ車検とスタンド車検ではお勧めのメンテナンスメニューが違いますよね?
これと同じです。
点検する技術者によって、健全性の診断評価は変わってしまうのです。
身体や車の場合はわたし達はそれなりの知識がありますから、もしおかしいな?と思ったら、病院を変えることができます。
しかし、
橋のような特殊な構造物に対する知識は、土木技術者と言えど誰しもが持ち合わせているわけではありません。
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【始めよう。無限ループ対策】
1.損傷を確認しきれていない。
2.損傷の記録方法や基準が点検技術者によって違う。
3.健全度の評価基準が点検技術者によって違う。
補修の無限ループを解消するには、上記の3つ全てに対して対策を行っていくことが重要です。
しかし・・・
これら3つの対策には、長期的な技術者の育成が必要となってきます。
これでは、
技術者の育成が終わるまで数年待たなければいけません。
待っているうちに落橋してしまうかもしれません。
それではどうするか?
最も優先度が高いものから対策を始めることが定石です。
そこで、
即効性という観点から下記3番の対策として、
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1.損傷を確認しきれていない。
2.損傷の記録方法や基準が点検技術者によって違う。
3.健全度の評価基準が点検技術者によって違う。
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健全性の診断基準の策定
を行うことを提案します。
誤解がないように1つだけ。
それは、
この「健全性の診断基準の策定」が橋梁点検のなかで、
最も技術的難易度が高く、
かつ技術者の育成に時間を要す
ということです。
難易度が高く、技術者の育成に時間を要すのに、最も即効性があるのは矛盾しているように聞こえます。
たしかに、
この健全性の診断を行なえる技術者を1から全て行っていては、即効性などはあり得ません。
おっしゃる通りです。
しかし、
高度な専門的な知識をもつ橋梁診断技術者に1度でもこの評価基準を策定してもらった、としたらどうでしょう?
機械的な診断は最もしてはいけないことですが、方位磁石も地図もなく航海にでる船乗りはいないでしょう。
それと同じで評価基準の羅針盤となる客観的な指標が大切なのです。
根拠に基づいたブレない診断を行うことが、無限ループを断ち切る第1歩となります。
もし、
評価基準をまだ策定していないのであれば、各管轄の事情を踏まえながら橋梁診断技術者(会社)に策定してもらうことを検討してはいかがでしょうか?
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【どこの業界も人材不足、継承不足】
どこの業界も人材不足、継承不足の問題を抱えています。
そして、
それを解消できない、しないという矛盾も必ずあります。
さらに、
最近では日本の人口減少とそれに応じた労働生産人口の減少問題をよく目にするようになってきました。
人材不足がさらに深刻化することを意味しています。
これまでの個人的、組織的な考えを見直す時期にきているのではないでしょうか?
画期的な見直しに対する答えはわたしもわかりませんが、このような個人の情熱の先にその答えがあると信じています。
見直した結果、
より幸せに社会人として、橋梁技術者として仕事に関わることができたら幸せですね(´ー`)
次回!!
「健全度case20:全面塗替え塗装の甘い罠」
また来週~
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■お問い合わせについて■
この活動で日々思うのは、
インターネットがこれだけ発達しても自分が本当に必要な情報というのは、なかなか探せないものなんだということ。
専門性の高い分野ともなると、難しい言葉で書かれた論文が多くなり、それが自分の知りたい情報だったのかすらわからなくなるときが多々あります。
私は検索するのが下手なので、知りたい情報まで辿り着くことがなかなかできません💧
橋梁点検で
「こんな損傷があったらどうすれば?」「ほかではどう対応しているの?」「この記事の意味をもう少し知りたい」などがあれば、
どうぞ気軽な気持ちでお声がけくださいね!
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