健全性の診断事例

健全度case23:【続編】ステルス床版劣化。補強鋼板の落とし穴

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このブログの記事が、
インフラメンテナンスに携わる ”あなたの力” になれたら嬉しいです。

ではさっそく、いってみましょう!

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目次

【わかりにくかったステルス床版劣化…】

先週UPのブログで、
床版の「補強鋼板工法」に関する劣化について記事を書いたのですが・・・

2022.10.9 健全度case22:ステルス床版劣化。補強鋼板の落とし穴
健全度case22:ステルス床版劣化。補強鋼板の落とし穴 | 【Linxxx公式】現場で役立つ橋梁点検ノート
2022.10.9 健全度case22:ステルス床版劣化。補強鋼板の落とし穴



この記事のUP後ですね。

『具体的にどんな損傷だったのですか?(゜-゜)』

というお問合せをいくつかいただきました。

わたしのブログってあまり装飾していないので、わかりにくいんですよね。

せっかく応援して下さる読者の方への配慮が足りずすみません!


と、

いうことで今回のブログでは続編として、少し図を交えながら説明をしていきます!

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【⑮舗装の異常(補修痕)】

ステルス床版劣化の本題に入る前に、床版劣化についてのさわりを。


橋梁点検で床版の健全度を評価するときは、

”橋面” と ”床版下面” 

の損傷状態を確認して行います。


■まず橋面ですが、

床版上面にはアスファルト舗装があるので、直接「床版の劣化」を確認することはできません。

では床版上面の劣化をどのように推定していくのか?

それはアスファルト舗装の状態で確認します。


下の画像を見てください。

Linxxx – 橋梁メンテナンス人材育成プロジェクト│Linxxx(リンクス)
↑クリックすると、HPに移動できます。


これは、このブログの運営母体である【Linxxx(リンクス)】のトップページです。

妻が探してくれたとある外国の橋梁画像です。
とても気に入っています(´ー`)


奥さんの自慢をしたいのではなくて、この画像にもある ”アスファルト舗装の補修跡” を見てほしいのです。

四角くて黒い舗装がありますよね?

舗装が劣化すると、劣化した舗装材を撤去して新しい舗装材をかぶせたり、部分的に打ち替えたりします。


アスファルト舗装はなぜ劣化すると思いますか?

アスファルト舗装自体の劣化もありますが、その下にある床版の劣化がアスファルト舗装を介して現れることもあるのです。

足腰の衰えが、体の不調をきたすように、
下地が悪いとボンドで接着しないというように、
構造物も下部の不具合が上部に現れるというように、

床版が劣化すると、その上にあるアスファルト舗装の劣化となって現れるのです。

橋梁点検では「⑮舗装の異常」という損傷種類がありますが、これは床版の劣化を推定するための情報源でもあるです。

主要部材である床版の劣化に関連していれば、「橋毎の健全度」にも影響しますので、とても重要な情報源なのですね。


ちなみに・・・

アスファルト舗装が傷むと、すぐに年間維持業者なる地元の建設業者の方が補修してくれるのですが、これには注意が必要です。

一見キレイに補修されているので、損傷ではないという判断から、点検で記録しない点検会社も存在します。

しかしですね。

補修直後はキレイでもすぐ再劣化するようであれば、それは床版劣化を疑う必要ありです。

特に、
舗装の異常(うき、補修痕、ひびわれ、わだち)は重要なのです。


下の画像は、このブログの「損傷種類の解説編:⑮舗装の異常」で紹介した画像です。
昨年の10月にUPしたブログなので、1年前ですね。

このときも、「⑮舗装の異常」の記録の重要性についてふれています。
舗装の補修跡をしっかりと記録することで、損傷の見落としを防ぐことができるので、橋の寿命化につながります。

2021.10.9 損傷種類⑮:舗装の異常とは?!
損傷種類⑮:舗装の異常とは?!-10%の才能と20%の努力、そして30%の臆病さ、残る40%は運だろうな…byデューク東郷 | 【Linxxx公式】現場で役立つ橋梁点検ノート

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【⑪床版ひびわれ】

■次に床版下面ですが、

床版の劣化状態を評価するには、「床版ひびわれ」の状態が1つの指標になっています。

橋梁点検では、

下図のように床版ひびわれの方向や間隔、幅、水や遊離石灰の滲出状況、角欠けの状態から損傷状態をa~eの5段階に区分します。

出典 橋梁定期点検要領平成31年3月 国土交通省 道路局 国道・技術課


床版下面に損傷がない場合は、一番の上の「損傷状態a」と記録します。

あとは、外観上の状態に応じてb~eを記録します。

下に向かっていくほど、見た目が悪くなっていきます。

図示された絵を見てもわかるように、
「損傷状態e」ともなれば、2方向ひびわれかつ角欠けもあるので、健全度Ⅲになってもおかしくはない状態です。

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【補強鋼板の内側は・・・ゾゾゾ】


では本題に。

床版下面の健全度評価として、「⑪床版ひびわれ」が有効な指標となることは今ご紹介した通りです。

これをメンテナンスする上で疑う方はいないでしょう。


しかし、

この床版下面のみの状態で健全度を評価できない場合があったら・・・


例えば、

先週UPした床版下面を鋼板補強している場合、床版下面の状態を見たくても見れませんよね?
損傷していることが明らかであれば別ですが、点検のために鋼板を取り外すわけにはいきません。

そのため、
鋼板補強された床版を点検するときは、鋼板を打音してみたり、アンカーボルトのゆるみを確認したり、鋼板の腐食状態や位置について入念に確認する必要があるのです。

これについては先週UPのブログの通りです。

2022.10.9 健全度case22:ステルス床版劣化。補強鋼板の落とし穴
健全度case22:ステルス床版劣化。補強鋼板の落とし穴


床版内部は、どんな状態になっているのか?

積雪寒冷地での損傷の一例を絵に描いてみました。

右:床版内部の様子。物性試験用のコアはとれません…バラバラ


損傷状態として以下の通り。
・過去に貫通ひび割れが確認され、鋼板補強を実施。
・鋼板補強時に防水層も再施工済み。
・数年経ち、舗装が傷みだし部分的な床版打替えをも実施。
・それから数年経ち、防水層が劣化。
・床版には無数の水平ひび割れがはいっていて、上面ほど密。
・床版内部は滞水だらけ。
・でも、アンカーのゆるみはない。
・物性試験のためコア採取を試みるもボロボロで試験体にならず…

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【⑪床版ひびわれはあくまでも指標の1つ】

さらに困ったことが。

床版の健全度ⅢあるいはⅣレベルの劣化状態だとしても、床版下面に現れないことがあるのです。

2方向ひびわれは?
漏水や遊離石灰は?
角欠けは?

・・・

見た目でわかるような損傷があれば簡単ですが、困ったことに床版の場合はこれらのわかりやすい損傷となって現れていくれないことがあるのです( ゚Д゚)

積雪寒冷地域でよくある土砂化
土砂化とは
コンクリートが土砂のような状態になることです。
コンクリートを構成している骨材とモルタル(セメント、水、空気)がバラバラになってします現象です。


このような劣化状態がある以上、橋梁点検では床版下面の外観に偏り過ぎた健全度評価は危険であることがわかります。

⑪床版ひびわれで床版下面のひび割れ状態等の記録はとても大切ですが、a~eの損傷状態の区分が必ずしも健全度にならないことを忘れてはいけませんね。

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【観察眼と想像力が大事】

外観からの状態で基本的に健全度を評価する橋梁点検ですが、ときには外観にも現れない変状から健全度を評価しなければなりません。

インフラの老朽化により、年々のその数、その範囲は拡大しているように実感しています。

いずれ、おおきな事故になってしまうのではないかと心配しています。

当事者であるからこそ・・・

組織とは違う視点や観点から、より大きくの情報を届けられるようにこの活動をしています。

今回の記事で、橋梁メンテナンスに従事する方々にとって、『こんな床版劣化があるんだな』と知ってもらう機会となれば幸いです。

次回!!
健全度case24:ステルス床版劣化。連続繊維シート補強の落とし穴

また来週~

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■お問い合わせについて■

この活動で日々思うのは、

インターネットがこれだけ発達しても自分が本当に必要な情報というのは、なかなか探せないものなんだということ。

専門性の高い分野ともなると、難しい言葉で書かれた論文が多くなり、それが自分の知りたい情報だったのかすらわからなくなるときが多々あります。

私は検索するのが下手なので、知りたい情報まで辿り着くことがなかなかできません💧


知りたい情報はなんなのか?

検索下手なわたしが検索される方の立場で考えてブログを書き続けています。

「こんな損傷があったらどうすれば?」
「ほかではどう対応しているの?」
「この意味をもう少し知りたい」

などの疑問の解決や知りたい情報を提供したい。

そう考えています。

どうぞ気軽な気持ちでお声がけくださいね!

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