橋梁点検ブロガー【Taurus|トーラス】です🐂
”二ッチではあるけど面白い橋梁点検”
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ではさっそく、いってみましょう!
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目次
【連続繊維シートが剥がれ落ちる】
先々週からUPしていた「RC床版に対する補強鋼板の落とし穴」に続き、今週は「連続繊維シート補強の落とし穴」について書いていきます!
まず下の写真を見てください。
何をしているところでしょう?
これはですね。
劣化したRC床版を補強するために張り付けられた連続繊維シート(以下、シート)が剥がれ落ちてしまっているところなんですね💦
そして、
この写真に写っている橋梁点検員は長い梯子に登って、今にも落下しそうなシートを一生懸命撤去しようとしている・・・って感じです。
長い梯子の上で手をいっぱい伸ばして、なんだか大変そうですね。
「枠組足場でもつくって、ゆっくりやればいいのに(゜-゜)」
なんて、
ことも思うかもしれませんが、ここはJR線路部の上に架けられた跨線橋です。
そんな線路を塞ぐようなことはできません。
列車の通過を最優先にしつつ、列車がこない時間帯を見計らって、すみやかに仕事をすます・・・
これが跨線橋の点検の原則です。
ダイヤを道路橋の損傷のためだけに、乱すわけにいはいきません(ということになっている)。
なので、
さきほどの写真のような跨線橋での損傷があると、それは緊急事態。もう必死中の必死。
大変ですよね。跨線橋の点検は・・・
以下の「道路橋定期点検要領平成31年2月 国土交通省 道路局 P104」に掲載されています。
※直轄版はこちら→「橋梁定期点検要領平成31年3月 国土交通省 道路局 国道・技術課」
国交省のHPからダウンロードできます。
出典 道路橋定期点検要領平成31年2月 国土交通省 道路局
ちなみにこの場合、応急対策は必須です。
写真でも点検員の方が一生懸命されていましたよね。
そして、
応急対策が終わると、その措置結果を踏まえて最新の「橋毎の健全度」(部材毎ではなく橋全体の健全性)に再評価しなければなりません。
例えば、
シートが落下する前の「橋毎の健全度がⅡ」だったとします。
そして、
シート落下した後の評価を「健全度Ⅲか健全度Ⅳ」に再評価したいとします。
健全度Ⅲになるのか?
健全度Ⅳになるのか?
あなたならどうしますか?
...
これについては、
道路管理者の評価方針によって下記の2つの違いがあります。
■パターン1.
応急対策は完了。恒久対策前であり安全性は依然低下中 →健全度Ⅳ
■パターン2.
応急対策は完了。緊急性は回避されている。床版劣化は早期補修 →健全度Ⅲ
同じ応急対策を行っているのに、評価が違いますね?
これは
<緊急性の解釈>
が違うからなんです。
健全度Ⅳ(緊急措置段階)の定義は、
道路橋の機能に支障が生じている,又は生じる可能性が著しく高く,緊急に措置を講ずべき状態。
ですが、
道路管理者によって
「緊急に措置を講ずべき状態」とするのか?という言葉の解釈が違うのです。
明確な基準がないので全国的な統一性はありませんから、ここは解釈の世界です。
この差がでてしまうのは当然の結果と言えます。
どちらにも解釈できますので、道路管理者のインフラの維持管理に対する考え方が映し出す結果になっていると思います。
ちなみに道路メンテナンス年報を見ると、健全度Ⅳが多いところもあれば、まったくないところも等がわかります。
結構バラバラなのが、年報を見るとわかりますよ。
道路メンテナンスを初めて見る人にお勧めの記事です。
橋梁点検14:<前編>知ってますよ。道路メンテナンス年報ですよね? | 【Linxxx公式】現場で役立つ橋梁点検ノート
橋梁点検15:<後編>知ってますよ。道路メンテナンス年報ですよね? (linxxx.jp)
地域別の差はありますが、わが国のインフラを取り巻く条件はそれほど変わりません。
同じように大量建造されている。
橋梁の供用年数や環境等も同じ。
であれば、健全度の差が目立つのは
・全国的な評価指針がない
・年度毎に評価者(点検会社)が変わる
・メンテナンスの圧倒的な経験及び知識不足
などがあるからではないでしょうか?
特に技術者のさじ加減1つ、主観で評価がコロコロ変わってしまうのは維持管理の信頼性が失う恐れがあります。
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【隠れているから、ようわからん!!】
列車で通勤や旅行しているところに、いきなりこんな大きなシート等の物体が落下するなんて、想像するだけでも恐ろしいですよね。
ただ・・・
これは橋梁点検あるある、とも言うべき損傷(実態)なんです( ゚Д゚)
鋼板補強も同様ですが、補強するためにシートを張りつけることはよくあります。
鋼板やシートを張り付ける自体に問題があるわけではないのですが、ごらんの通り構造物全体を覆っているので肝心の構造物が目視できません。
経年による汚れはあるものの見た目はとれもキレイなんですから(-_-)
ただし、
・内部が損傷しても劣化を目視することはできない。
↓
・損傷していないだろう、というバイアスの働き
↓
・見えていないものは ”損傷なし” でいいはず
↓
・時間もないし●●もないし●●もないし手早く点検を終わらせよう
↓
・結果的に放置され、末期状態へまっしぐら
怖いですね。
このように長い年月をかけて劣化が進んでいても確認することができず、気付いた時には手遅れになっていることが本当に多いのです。
それを示すかのように、「コンクリートが落下した」、「鋼材が落下した」という報道をよく見聞きするようになりました。
あまり大きく報道されていないかと思うとそうではなく、テレビや新聞でしっかりと報道されるようになってきています。
最近では、
人命被害はありませんでしたが水管橋の落下も大きく報道されていまし、世界ではこれまでいくつもの人命を奪う落橋が起こっています。
つい先日も水道管が破断して道路が水浸しになった報道もありました。
わたしたちが普通に過ごすために必要な交通網や水インフラが着実に老朽化していっています。
ようするに、
『隠れているから、ようわからん!』
これが点検・診断する側の率直な気持ちです。
そのため、最近の補修補強工事では全面を覆うような補修や補強は少なくなってきました。
特にシートは格子状に張り付けることができるので、格子状に張り付けたシートの隙間ではありますが、劣化の進行程度や漏水の確認が可能です。
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【シートが落下する原因は単純】
さて、
大事なことが最後の章になってしまいましたがシートが落下した原因について。
補強鋼板でも、シートでも、落下する原因はいたって単純です。
それは、ほとんどの場合
水分の浸入(内部での滞水)
です。
シートを張り付けた際の接着剤の経年劣化や施工不良も考えられないこともないですが、先ほどの写真のシートの落下原因もおそらく床版内部への水分の浸入が原因でしょう。
水が浸入・滞水による、RC床版とシートの付着力が低下や滞水の重みに耐えきれず剥がれたのでしょうね。
床版全体に覆われたシートが点検する橋梁にあったときは要注意ですね。
さて、
浸入経路として最も多いのは
”橋面(上)からの浸入”
です。
橋面防水層がそもそもない、あるいは防水層の劣化がするとどうなるか?
橋面から浸入した水が下に向かって浸透していきます。これが基本です。
しかし、水分の浸入経路は色々あります。
シートの貼り付け範囲や劣化状態によっては
外側からだって浸入
します。
さらには横断勾配、縦断勾配によっては損傷位置の
真上以外からも流入
してきます。
水は高い所から低い所に流れるが如しですからね。
わたしも経験ありますが、劣化した床版下面を見て、真上の舗装状態ばかり確認してしまうことがありました。
浸入経路を特定するために舗装をいざ開けて見てもよくわからない。
そんなときは意外に勾配にそって水が流れていることがあるんですよね。
見落としがちです。
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【オープン化された情報には曖昧満載】
さきほど、
応急対策後の健全度についてパターンを示しましたが、これからもわかるように健全度評価は統一されておりません。
■パターン1. 応急対策は完了。恒久対策前であり安全性低下中 →健全度Ⅳ ■パターン2. 応急対策は完了。緊急性は回避されている。床版劣化は早期補修 →健全度Ⅲ
オープン化された情報を人工知能やマネジメントシステムに使う際には、このような情報の曖昧さを含んでいることに留意しなければなりません。
特に地方自治体の評価基準は不透明です。
今後、オープン化された点検結果を見る人が増え、全国的な統計や分析を行った時、あまりの評価結果のバラつきに驚くことになると思います。
そのときに、
それまで評価されつづけてきた曖昧な健全度を最新技術を駆使しながら、正しい方向に修正していけるメンテナンス技術者が必ず必要になると思います。
次回!!
「健全度case25:補修工事直後の点検でまさかの健全度Ⅲ?!」
また来週~
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■お問い合わせについて■
この活動で日々思うのは、
インターネットがこれだけ発達しても自分が本当に必要な情報というのは、なかなか探せないものなんだということ。
専門性の高い分野ともなると、難しい言葉で書かれた論文が多くなり、それが自分の知りたい情報だったのかすらわからなくなるときが多々あります。
私は検索するのが下手なので、知りたい情報まで辿り着くことがなかなかできません💧
知りたい情報はなんなのか?
検索下手なわたしが検索される方の立場で考えてブログを書き続けています。
「こんな損傷があったらどうすれば?」
「ほかではどう対応しているの?」
「この意味をもう少し知りたい」
などの疑問の解決や知りたい情報を提供したい。
そう考えています。
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