橋梁点検ブロガー【Taurus|トーラス】です🐂
ブログを始めて約1年半。
今回のブログで100本目となりました。
嬉しい限りです。
かなり専門的な内容なので、初めはだれの目にも触れることのなかった二ッチなブログですが、いまではご質問をいただける機会も増え、橋梁点検の需要の高さを実感しています。
これからも橋梁点検の実務で悩むあなたのお役に立てるようなブログとなるように一生懸命書いてきますね!
ではさっそく、いってみましょう!!
※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちでご一読くださいませ。 ※橋梁点検人材育成プロジェクト【Linxxx(リンクス)】を運営(非営利)しています。 ご質問・ご依頼につきましては、こちらからどうぞ(´-`) Linxxx – 橋梁メンテナンス人材育成プロジェクト│Linxxx(リンクス)
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目次
【見解の相違はある程度まで】
橋梁技術者として、
道路管理者として、
橋梁の維持管理に従事していると、こんな場面に遭遇することってありませんか?
『あれ?
この健全度評価…
自分の健全度評価と違う…( ゚Д゚)』
自分が担当する橋梁点検業務の参考にしようと、過去の資料を見たり、先輩に聞いたりすることありますよね?
そんなとき、
橋梁点検や補修設計の報告書に記載されている ”健全度評価Ⅰ~Ⅳ” が自分の見解と全く違う。
あるいは、
先輩や上司たちと健全度評価の議論になったとき、評価やその根拠がそれぞれ違う。
こんな場面に遭遇することが、1度や2度ではないのではないでしょうか?
高度な技術が要求される健全度評価ですから、技術者による見解の相違はあって当然です。
これ自体が悪いわけではありません。
ある程度は・・・
予防保全段階である健全度Ⅱとなるか?
措置が必須となる早期措置段階である健全度Ⅲになるか?
では
補修費用と労力等に大きな違いがでてくるので、ここは人によってブレブレになるのは避けたいところ・・・
見解の相違はある程度許容すべきものだけど、だからと言って人によって評価が違うのも管理する上で面倒なことも事実です。
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【ハイレベルがゆえに、ブレてしまう】
健全度評価というのは、
・橋梁の健康状態のくわえ、
・評価者自身の高度な技術力と経験、
・さらには道路管理者の技術力や維持管理方針の考え方など、
をすべて加味して決定する必要があるので、ブレないように評価するのは至難の業と言えます。
さらに、
道路橋点検要領P52(赤文字)には、下記のように記載されています。
付録3 判定の手引き 「道路橋定期点検要領」に従って部材単位での健全性の診断を行う場合の参考となるよう、典型的な変状例に対して、判定にあたって考慮すべき事項の例を示す。 なお、各部材の状態の判定は、定量的に判断することは困難であり、また橋の構造形式や架橋条件によっても異なるため、実際の定期点検においては、対象の橋の条件を考慮して適切な区分に判定する必要がある。 ※出典 道路橋定期点検要領 平成31年3月 国土交通省 道路局
定量的に判断することは困難
とあります。
そもそも ”定量的” とはなんでしょうか?
ひび割れ幅?
間隔?
これらから評価される「損傷程度a~e」?
どれも定量的と言えますよね。
つぎに、”判断” とはなんでしょうか?
床版のひびわれ 損傷程度c → 健全度Ⅱ
床版のひびわれ 損傷程度e → 健全度Ⅲ
つまり、
架橋条件や原因等を踏まえずに
”損傷程度eだから健全度Ⅲ”
というように機械的に健全度評価してはいけませんよ、ってことです。
これは、このブログでも何度もお伝えしている内容と一致します。
人間に例えるなら、
鼻水が1cm垂れてきました → お薬だします
鼻水が5cm垂れてきました → 手術します
こんな診断はしませんよね?( ゚Д゚)
大事なことは
規模(損傷程度)に加え、その原因や環境、使用状態等を踏まえた総合的な診断です。
あくまでも点検で得られた損傷程度は診断(健全度評価)をするための情報であるということを忘れてはいけません。
この損傷程度にさらに、橋梁の架橋条件や劣化速度をふまえて判定区分を評価するわけですから、相当難しいことがわかります。
ただ・・・
点検要領の指摘が当然のことである一方、メンテナンス技術者が不足しているこの業界において技術者の能力任せにしてしまうのは、危険な行為でもあります。
このハイレベルな要求がブレてしまう最大の要因となっているとわたしは感じています。
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【参考資料ってどこまで踏襲していいの?】
健全度評価の参考として、点検要領には下図のように判定区分とともに代表的な損傷写真が例に挙げられています。
健全度Ⅱであれば、健全度Ⅲほどの緊急性はありませんが、予防保全として塗装塗替え工事が発注されることになります。
橋長にもよりますが、ブラストかけて、高価なふっ素樹脂塗料での塗替えとなるので、かなり高額な補修費用になりますよね。
一見すると、これくらいの腐食であれば判定区分Ⅱ(健全度Ⅱ)とするように思えます。
『え?違うの?!( ゚Д゚)』
そうなんです。違うんです。
以下の赤文字の部分をもう1度見てください。
”橋全体の耐荷力への影響は少ないものの・・・
放置すると影響の拡大が確実と見込まれる場合”
わかりますか?
ここのポイントは、
”放置すると”
です。
要するに、
この写真の状態で進行が遅く、次回点検まで放置してもそれほど進行しない場合は、健全度Ⅱではないことを示しています。
つまり、以下の条件であれば健全度Ⅰです。
・架橋環境は山間部であり、塩分の影響も受けない。
・劣化の進行は遅く損傷原因は塗膜の経年劣化
・腐食は表面錆程度であり、顕著な断面減少はない。
・腐食片等の落下による第三者への影響はない。
わっかりにくいですよね~(/ω\)
なんか学生時代のテスト勉強をしている気分です。
教科書の隅にある見落としてしまうような場所に書いてあるところから出題される、あれです。
話がそれてしまいましたが、点検要領はこのように熟読や解釈が必要な資料なのです。
図や写真、少量かつ簡単な説明なので、内容も簡単なのかな?と思ってしまいますが、その反対で受け手に考えさせることが多いのです・・・
これらの説明をしてくれている資料やサイトはありません。
そのため、みなさんの悩み等が解決されることなく、点検要領の意図から外れたままの健全度評価になってしまうことも少なくありません。
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【初めから腐食している耐候性鋼材】
もう1つだけ事例を紹介します。軽めに。
下図は耐候性鋼材の腐食に対し、判定区分Ⅲ(健全度Ⅲ)としている事例です。
所見を見ると、
”明らかな異常腐食が生じており、広がりのある断面減少が生じている場合”
とあります。
写真を見るに、層状錆もあるし断面減少もしているから健全度Ⅲも妥当のように見えます。
しかし、
わたしの見解は健全度Ⅰ、あるいは健全度Ⅱです。
なぜなら、
耐候性鋼材の腐食は大げさに見えるからです。
たしかに、断面減少はしていると思います。
しかし、この写真に騙されてはいけません。
結構、現場で層状錆を叩き落してみると、意外に顕著な断面減少が確認できないことが多いのです。
そして耐候性鋼材の健全度判定で
一番大事なことは損傷原因の措置状況です。
このような腐食が生じている場合、直上に伸縮装置からの漏水や床版の排水装置の流末不良などが原因となっている場合があります。
これらの損傷原因がすでに措置(止水や導水)されていたらどうでしょう?
凍結防止剤の影響を加味するす必要はありますが、ほとんどの場合、耐候性鋼材の腐食も軽微であり、上記の措置によって進行性も遅いとなれば、塗装したり当て板したりする必要はありません。
それであれば、健全度Ⅲにすることはありませんよね?
健全度Ⅲにしてしまうと、措置しなければなりませんから(゜-゜)
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【祝100本!皆さま応援ありがとう!!】
ブログを始めて1年半。
ブログも100本目に到達しました(´ー`)
橋梁点検で迷う実務者の方々を案じ、一念発起しブログを始めましたが、やはり当初は反応があるわけもなく・・・
当然のことと割り切り、週末のブログ更新に備え、毎日お届けできる内容を考えてきました。
いまでは少しずつ反応をもらえるようになり、やってよかったなと実感しています。
少しはブログの書き方のコツがつかめてきたように思えます。
それと同時に、
これまでUPしてきたブログの品質が今と比べてわかりにくいことがわかってきました。
ということもあり、
次回からは新しいネタも書きつつ、これまでのブログを精査していこうと思います!
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この活動で日々思うのは、
インターネットがこれだけ発達しても自分が本当に必要な情報というのは、なかなか探せないものなんだということ。
専門性の高い分野ともなると、難しい言葉で書かれた論文が多くなり、それが自分の知りたい情報だったのかすらわからなくなるときが多々あります。
私は検索するのが下手なので、知りたい情報まで辿り着くことがなかなかできません💧
知りたい情報はなんなのか?
検索下手なわたしが検索される方の立場で考えてブログを書き続けています。
「こんな損傷があったらどうすれば?」
「ほかではどう対応しているの?」
「この意味をもう少し知りたい」
などの疑問の解決や知りたい情報を提供したい。
そう考えています。
どうぞ気軽な気持ちでお声がけくださいね!