橋梁点検人材育成プロジェクト運営人の神宮 皐(かみや さつき)です。
このプロジェクトでは、橋梁点検や橋梁診断に特化した ”あなた個人” がもつ疑問の解決や相談できるコミュニティの構築に取り組んでいます。
プロジェクトの一環として、わたしの橋梁点検スキルをブログで公開しています。
あなたのスキル向上に役立てられたら幸いです。
※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちでご一読くださいませ。 ※橋梁点検人材育成プロジェクト【Linxxx(リンクス)】を運営(非営利)しています。 ご質問・ご依頼につきましては、こちらからどうぞ(´-`) Linxxx – 橋梁メンテナンス人材育成プロジェクト│Linxxx(リンクス)
※ボブ・マーリー:世界的なレゲエアーティスト。レゲエの神様。
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目次
【間違えやすい漏水・遊離石灰】
橋梁構造物の最大の敵は、なんといっても水だと思います。
衝突でもなく、塩分でもなく、
質、量、ともに総合的に強敵と言えるでしょう。
「水を制する者は、損傷を制す」
といってもいいと思います。
理由としては、
橋梁の健全度を低下させるほとんどの要因が水分といえるからです。
橋梁の維持管理は、水との闘いだと思います。
例えば健全度が低下する事例として、
・伸縮装置から漏水 → 鋼桁端部の腐食
・橋面水の床版への浸透 → 床版の劣化促進
・橋座面の滞水 → 支承の腐食、沓座モルタルの欠損
・各種排水管からの排水 → 直下の鋼部材の腐食、盛土の浸食
など
水分あるところに損傷あり
ですね。
そのため、
橋梁点検をやる場合は、水回りを重点的に点検する必要があります。
さて!
水、水、水 とたくさん出てきましたが、ここで悩ましい現実が…
橋梁点検では
水に関する損傷種類が3種類
もあるのです( ゚Д゚)
どれも似たような損傷なので、記録するときに間違えやすいのです。
ということで、
今回は⑧漏水・遊離石灰の記録について書いていきたいと思います!
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【点検要領の解釈:漏水・遊離石灰】
⑧漏水・遊離石灰とは?
<点検要領の付録-1>
漏水・遊離石灰について、点検要領の付録-1では下図のように解説されています。
点検要領には、
”コンクリートの打継目やひびわれ部等から、水や石灰分の滲出や漏出が生じている状態”
と記載されています。
これだけ見ると何も悩むことはないように思えますね。
土木技術者であれば、馴染みのある損傷です。
しかし、
【他の損傷との関係】で記載されている
中点の一番上の注意が必要なんです。
その注意点について確認していきましょう!
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注意その1:遊離石灰との区別
下図の赤線を見てください。
「⑰その他」 ?
「⑳漏水・滞水」?
⑧漏水・遊離石灰が記載されているページに「⑰その他」と「⑳漏水・滞水」が出てきました・・・
⑧漏水・遊離石灰とは、どんな関係?(゜-゜)
事例をみながら確認していきましょう。
⇩ ⇩ ⇩ ⇩ ⇩
<事例1:⑰その他>
伸縮装置樋内に土砂が溜まり、排水不良が発生しています。
その排水によって泥やモルタル分の溶出物等の析出物が付着している状態です。
<事例2:⑳漏水・滞水>
上下線の境界や、盛土側面からの雨水の流入等で
コンクリート表面が濡れている状態またはその滞水痕です。
ただし、
その水が構造物に悪影響を及ぼす可能性があるときに⑳漏水・滞水と記録します。
大事なことは、「その水が悪影響を与えるものであれば損傷として記録すること」です。
悪影響もない降雨による滞水は記録しなくてOKです。
雨の日では、橋全体を⑳漏水・滞水で記録することになってしまいますよね💧
<事例3:⑧漏水・遊離石灰>
コンクリートに生じたひびわれや打継目からの滲みだしている漏水や遊離石灰です。
コンクリートの内部を通過し、表面に現れた水分や遊離石灰が⑧漏水・遊離石灰の対象です。
同じ水でも橋梁点検をしているとこのような場面によく遭遇します。
いまここに挙げた3つ事例のなかで⑧漏水・遊離石灰は1つだけ。
これらを混同しないようにしなくてはいけません。
同じ水でも
水がどこから供給されているか?
で、3種類(⑧、⑰、⑳)に区別して記録してねってことです。
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注意その2:漏水・遊離石灰の発生位置
例えば、
主桁と地覆の境界からしみだした遊離石灰。
プレテン中空床版橋の主桁と床版。
どちらで記録しようか
迷ったことはありませんか?
事例をみながら確認していきましょう。
⇩ ⇩ ⇩ ⇩ ⇩
<事例1:主桁と地覆の境界 >
・主桁と地覆の境界からしみだした遊離石灰 → 地覆Fg⑧漏水・遊離石灰
※主桁の可能性もないわけですが、どちらかというと地覆や調整コンクリートのほうですよね?
それと主桁で記録すると主部材の損傷となってしまいます。
橋全体の健全度評価に影響を与えすぎてしまいますので、その他部材での記録がいいと思います。
<事例2:プレテン中空床版橋の主桁と床版 >
・ プレテン中空床版橋の主桁と床版 → 床版Ds⑧漏水・遊離石灰
※これは先ほどの例と違い、間違いにくいとは思います。
主桁で迷う方がいるのですが床版ですね。
気を付けなければならないのは、
遊離石灰が付着している部材や
量に惑わされないこと。
それには、以下のような視点をもつことが大切です。
・どちらの部材の遊離石灰が溶けて染み出しているのか?
・どちらの部材のほうが、その漏水・遊離石灰によって健全度に影響を及ぼすのか?
・どちらの部材で記録したほうが、維持管理(調査や補修、管理)するときに役立つか?
利用者の立場にたってみると
また違った橋梁点検の面白さがありますよ(´ー`)
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【ノートのまとめ】
・同じ水でも、供給先によって⑧、⑰、⑳の使い分けが必要。
・境界部で生じた漏水・遊離石灰は、維持管理に役立つ情報であること。
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【次回のノート】
次回は、⑨抜け落ちです!
床版が抜け落ちると大変危険です。
⑪床版ひびわれや⑮舗装の異常とも関連が深いこの損傷。
これまで200橋近く切削調査を行い、舗装に隠れた床版の劣化状況を確認してきましたが、外観だけで⑨抜け落ちを事前に察知するのは至難の業だということをその度に感じていました。
ただ、
その予兆や現場での注意点があるので、その辺を書きたいと思います!
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■お問い合わせについて■
この活動で日々思うのは、
インターネットがこれだけ発達しても自分が本当に必要な情報というのは、なかなか探せないものなんだということ。
専門性の高い分野ともなると、難しい言葉で書かれた論文が多くなり、それが自分の知りたい情報だったのかすらわからなくなるときが多々あります。
私は検索するのが下手なので、知りたい情報まで辿り着くことがなかなかできません💧
知りたい情報はなんなのか?
検索下手なわたしが検索される方の立場で考えてブログを書き続けています。
「こんな損傷があったらどうすれば?」
「ほかではどう対応しているの?」
「この意味をもう少し知りたい」
などの疑問の解決や知りたい情報を提供したい。
そう考えています。
どうぞ気軽な気持ちでお声がけくださいね!
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