ようこそ! Taurus🐂の橋梁点検ノートへ。
このブログが橋梁メンテナンスに携わる皆さまのお力になれたら嬉しいです!
ではさっそく!
モーツァルト:オーストラリアの作曲家。この世を去る36歳まで約900曲を作曲。
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目次
【点検要領の解釈:⑯支承部の機能障害】
橋と言われてすぐイメージするのは、
やはり側面から見える桁やアーチ、トラス、ケーブルのような「上部工」ですよね。
ライトアップされるのも上部工ですから、花形の存在です。
その次に、それを支える橋脚のような「下部工」
雄大にそびえたつコンクリートや鋼鉄の柱。
ステキですよね。
ジャンクションではこの橋脚なくして語れません。
と言うくらい
橋といったらこの2つで説明がつきそうです。
ただ、
橋梁で忘れてほしくないのは「支承」!!!!!
上部工と下部工をつなぐ場所にあるこの支承ですが、とても重要な役割を果たしています。
この支承の機能が低下あるいは損失すると、橋梁構造の安全性を低下させてしまいますので、橋梁点検ではこの支承の損傷を重点的に確認することが重要です。
しかし
支承部の損傷って色々あるんです。
支承という部材は色々な形式がありますし、材料もゴムや鉄だけではありません。
これまでの歴史のなかで幾度も改良されてきているため、本当に多種多様...
「どうして、ここが接触するんだ?」
「どうして、ここが座屈しているんだ?
「・・・ということは、支承になにかあったのか?」
「これがあーで、こーで、それでこうなってああなって・・・」
現場でこんな思いになることもしばしば。
いろいろ考えてみるものの
自分の引き出しにはない損傷をみて行き詰まることも。
そんなときは初めに戻って1つ1つ着実に解決していくことにしています。
支承に限った話ではありませんが、
きちんと評価するには、製造、設計、施工、維持管理の多様な知識が必要だと改めて認識させられます。
わずかな支承の異変が橋の大きな病気を伝えているときもあり、奥が深い部材です。
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<点検要領の付録-1>
⑯支承部の機能障害については、点検要領の付録-1では下図のように解説されています。
◆ポイント1:対象範囲の拡大
⑯支承部の機能障害で記録対象となる部材は、
支承 と 落橋防止システム です。
上図の説明であるように、“支承と落橋防止システムの機能が一部または全ての機能が損なわれている状態”が生じていれば記録します。
この2つの部材に期待する機能の低下および損失にあたる損傷があれば、⑯支承部の機能障害で記録するということですね。
どんな機能があるのか?
については要領にも少し記載があるように、荷重支持や変異追随があります。
ほかにも回転や衝撃吸収なども該当しますね
ほかにはネットで調べるとより詳しい説明がありますので、ここでは割愛することにします。
今回の記事では
橋梁点検での記録で気を付けなければならないことについてお伝えしたいと思います。
上の赤枠をみてもらえますか?
平成26年度の点検要領改訂時に「支承の機能障害」から「支承部の機能障害」に変更されたことから、追加された部分です。
“部”の1文字が追加されたことで、平成26年度までは支承だけが対象となっていたものが、落橋防止システムも対象となりました。
支承部は地震等の際に、上部工と下部工をつなぐ重要な部分なので、支承や落橋防止システムの機能が損なわれていないか確認する意味があるのでしょうね。
最近追加された部分なので、最近になって橋梁点検を始めた方はあまり問題ないかもしませんが、平成26年以前から橋梁点検に携わっている点検技術者の方々は対象範囲が拡大しているので注意が必要です。
これまで
⑯支承部の機能障害が記録されてこなかった橋梁に対しても、もし落橋防止システムの機能が損なわれているような損傷があれば、きちんと⑯支承部の機能障害を追加する必要がありますのでご注意を。
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<点検要領の付録-2>
◆ポイント2:土砂詰まりの清掃基準
⑯支承部の機能障害ではいつもの損傷程度a~eのほかに、2つの「分類」と、9つの「損傷パターン」にわけて記録する必要があります。
分類については問題ありませんね。
分類1は支承本体とアンカーボルト、分類2は落橋防止システムです。
分類自体は悩むことはないと思いますが、
ここで見てもらいたいのはここの赤枠。
先ほどと同様に平成26年度の点検要領改訂で追加された部分です。
5年毎の点検時に清掃が行われていれば、それほど凄まじい土砂の堆積はないとは思いますが、たまにあるんですよね。凄まじい土砂の堆積が💧
排水型の伸縮装置の樋が破損していたり、大雨の影響で盛土や玉石が流入していたり、点検どころではありません。まずは清掃から始まります。
上図の要領にも記載されているように、
“支承部の損傷状況を把握するため、堆積している土砂は損傷程度を評価するにあたって取り除くことが望ましい”
とありますので、取り除ける量であればできる限り清掃する必要があります。
支承の損傷状態がわかりませんからね。土砂かくれているので。
ただ、これがけっこう大変なんです。
まず道具がありません。
そもそも点検が主な業務なので、清掃道具も小さなスコップ程度がほとんどではないでしょうか?
ですので、
点検を始める前の事前調査で支承廻りの土砂の堆積量を確認しておき、点検前に清掃が必要であることを道路管理者へ報告したり、点検時に年間維持業者の方との同行を依頼したり等の取り組みが大切になってきます。
でも、でも、でもですね。
限られた人員と時間で点検を行う必要がありますから、キレイに土砂の清掃ができないことがほとんどです。
それをどこまで清掃すればいいのか?と現場では悩んでしまうかもしれませんね。
堆積物が土砂で持ち合わせているスコップでだいたい除去できるようなものであれば尚更です。
ここで清掃について1つ提案があります。
それは、「だいたいでOK」ですということ。
なぜなら点検後の評価(診断)では、砂や泥のひとつひとつはあまり関係ないからです。
橋梁の健全度評価で大事なのは、土砂の量ではなく、あくまでも支承部の機能です。
その土砂が橋体を支える支承の機能にどのくらい影響するのか?しているのか?が大事になりますから、取り除けなくて多少、土砂が残っていても問題ありませんよね?
点検で除去しきれなかった土砂に対し、さらに清掃が必要であれば、そのように健全度評価するだけです。
限られた道具で無理に行っても効果が低いので、総合的な維持管理を考え、水洗いやグリスアップ、土砂が流入しないような土嚢設置等も含めて検討する方が効果的だし大切だと思います。
◆ポイント3:損傷パターンでの注意点
支承本体に⑯支承部の機能障害として記録が必要な“大量の土砂堆積“があれば、「支承本体Bh、分類①、損傷区分e、パターン7」となります。それと併せて㉔土砂詰まりの記録も忘れずに。
そして、最期の注意点ですが、
この損傷パターン1~8にあるものだけが⑯支承部の機能障害ではないことです。
支承本体の破断は?
上沓が沈下ではなく浮いていたら?
ベアリングプレートがなくなっていたら?
この8つのパターンにはありませんが、支承の機能は損失していますよね?
このパターンで具体的に記載のないものは
支承部の機能障害があればパターン9として記録することが必要です!
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【今回のまとめ】
・支承部の損傷とは、支承本体のほかに落橋防止システムも含む。
・土砂詰まりの清掃は、総合的な橋の維持管理をふまえて行うこと。
・損傷パターンにない支承部の機能障害もある。
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【次回のノート】
次回は⑰その他です!
⑰その他を除くと、点検で扱える損傷は25個あるわけですが、それで網羅できない損傷も出てくるわけで。
そういうときに便利な損傷ですが、便利なだけに問題もあったりします。
次回は解説のほかに、事例を多く取り上げられたらいいなって思っています!
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