ようこそ! Taurus🐂の橋梁点検ノートへ。
このブログが橋梁メンテナンスに携わる皆さまのお力になれたら嬉しいです!
ではさっそく!
※バーナード・ショー:アイルランドの文学者、劇作家等。ノーベル文学賞受賞。
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目次
【点検要領の解釈:⑰その他】
橋梁点検をするとたまに
「この損傷って何番?!( ゚Д゚)」
ってことありますよね?
そんなときに便利な損傷種類がこの“⑰その他”なんです。
例えば、不法占拠。
橋の下や中にお住まいの方等がいた場合、近隣住民の方が橋の下を車庫代わりにしている場合に適用できます。
橋の下、高架下でよく駐車場やバスケットコートに活用されていますのよね。
雨や雪をしのげて、日陰にもなる。
川が近くにあることも多く、とても過ごしやすい場所です。
そのせいか、
結構、無断での使用も後を絶ちません。
これだけ条件が揃っているので利用したい気持ちもわかります。
なかには相当なつわものが。
橋の中に布団や本棚もあったり、居住者のペットがいたり、鳥たちの大群がいたりと、なんとも自由です。
だけど、
その自由も利用者の安全あってのものだと思うので、利用者は利用者の責任が、点検では橋と利用者の安全を守るという責任が伴います。
今回は要領の解説という意味ではそれほど難解なものはないので、具体例を多く書いていきたいと思います!
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<点検要領の付録-1>
点検要領の付録-1では下図のように解説されています。
上の図のような状態があれば、
分類1:不法占拠~分類5:火災による損傷に当てはめましょうってことなんです。
さらに!
この5つにも当てはまらない損傷状態があれば、分類6:その他で記録します。
⑰その他の<分類:その他>ってどんな損傷なんでしょうね💧
この疑問に関しては次の付録-2をふまえながら書き進めていきたいと思います。
※最後のほうに書きました。
そもそもの話になりますが、
不法占拠って構造物の損傷ではないですよね。
本来の損傷だけではなく、
維持管理上の必要とされる状態を記録することできるので、有効活用してほしい記録方法です。
これら分類6については、
次の章で具体例を交えて書きましたので、このまま読み進めていってください。
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<点検要領の付録-2>
これは悩む必要はありませんね。損傷があれば“e”と記録します。
ここで大切なことは、赤枠の(2)その他記録の内容です。
要領ではよくスケッチで記録すること推奨している記載がありますが、特にこの⑰その他では橋梁の健全度評価をするうえでスケッチがとても役立ちます。
では具体的にこれを踏まえて、
先ほどの章で出てきた分類1~6を順番に点検と診断の両側面から点検時に注意する例を示していきたいと思います。
◆分類1:不法占拠
不法占拠で一番困ることは点検ができないこと。
住居、倉庫、車庫、ごみ置き場代わりにされている方が結構います。
点検できないということは、
橋梁が劣化していたとしてもわからないので、利用されている方の安全を確保できないということになります。
個人的にはそれが心配です。利用したい気持ちもわかりますから。
もう1つ。
それは法令化された点検ができていないということ・・・
点検の目的がすでに破綻していますよね。
インフラのような構造物は基本屋外です。
風雨、雪、暑さ、衝突等の過酷な環境で使用されていることがほとんどですので、決して安全ではないということを理解してもらうような説明が必要だと思います。
点検では以下のことに注意してみてはいかがでしょうか?
・本点検を始める前に移動してもらう(住居は難しいことがほとんど)
・次年度点検橋梁については道路管理者への提案
・記録様式にどのような状態のため、この範囲が点検できていないことを記録
・不法占拠に伴う利用者への安全性低下の注意喚起看板の設置等
◆分類2:落書き
かわいい落書き、恋愛落書き、アート落書き、バイオレンス落書き、18禁落書き・・・
いろいろあります。
落書きされた方々は写真として記録されることを知らないのでしょうね。
これを消す作業にも税金が使われていることも知らないのでしょうね。
「夜露死苦」とか死語になっても残ることを知らないのでしょうね(;^_^
さて!
この落書きですが、
点検で困ることと言えばやはり点検ができないこと。
落書きをたくさん記録することよりも、その落書きによって与える橋梁への影響を考える必要があります。
大事なことはそのペンキ等で隠れて見えなくなってしまったひびわれや色等を確認できないことです。
ディスクサンダーで削りとってしまえば綺麗には見えますが、施工当初からのひびわれやコンクリート表面の状態を確認できなくなってしまいます。
点検では以下のことに注意してみてはいかがでしょうか?
・第三者の目に触れる場所かどうか(景観的に消した方がいいかの判断が可能)
・サンダー等の削り取りが必要な箇所であれば写真枚数を多くする。
・打音点検を多くし、目視点検の不足分を補完する。
・地域住民の子ども達に絵を書いてもらうことを道路管理者へ提案。
◆分類3:鳥のふん害
これも分類1:不法占拠と分類2:落書きと同様にふんが堆積していると点検できません。
糞だけでなく、鳥の巣も対象です。
これまでの不法占拠や落書きは橋梁構造に直接影響を及ぼすものでなかったのですが、ふん害は違います。
例えば、
ふんが堆積すると鋼材が腐食しやすいため、長年堆積された状態を放置すると橋に孔があいてしまいます。
特に箱桁は注意が必要です。
鋼橋、コンクリート橋問わず、少しの隙間でも鳥は侵入しますので、一度侵入を許してしまうと大きな鳥小屋の完成です。
そうなってしまうと、鳥のふん害だけでなく、死骸もあるわけで、とても点検できるような環境ではありません。暗い箱桁のなかで鳥と格闘しながらの点検になるわけですから。
点検では以下のことに注意してみてはいかがでしょうか?
・ふんや鳥の巣を一部でも除去し、鋼材腐食や深さ等の状態を記録。
・ふんの清掃、鳥の駆除等を道路管理者へ提案。(上記の損傷状態を確認することが必要)
・侵入経路を特定。(侵入防止策も併せて道路管理者へ提案できるといいですね)
・羽数の大まかな数を確認。
・ふんや巣の湿潤状態を確認。
◆分類4:目地材などのずれ、脱落
目地材などのずれや脱落では、それが構造上必要な部材なのか?脱落による第三者被害がないか?が大切です。
例えば、上り線と下り線として、近接された橋梁同士の隙間に挟まっている目地材が脱落していることがあります。
施工上必要だけであっただけで、これが脱落しても橋が完成されてしまえば脱落しても影響ありません。
こういう場合に健全度評価で関係するのは、構造上必要ない部材であっても脱落した場合の第三者への影響です。
点検では以下のことに注意してみてはいかがでしょうか?
・構造部材の確認。
・第三者への影響範囲の確認。(歩道以外でも河川敷等で第三者が入りやすいところは注意)
◆分類5:火災による損傷
火災による橋梁への影響のうち⑰その他が対象となるのは、主にすすや油等です。
住居にされている方が橋の近く調理すると、すすや油が広範囲にたくさんつきます。
それほど高温にさらされていない場合がほとんどですので、すすや油汚れで点検できないことが一番困ることですが、熱劣化が懸念されるところでは構造への影響もありますので詳細調査も必要です。
ちなみに点検要領では
塗膜がはがれた場合は⑤防食機能の劣化で記録し、
コンクリート表面の色が変化した場合は⑲変色・劣化で記録することが記載されています。
下の図は⑲変色・劣化のページの抜粋です。
点検では以下のことに注意してみてはいかがでしょうか?
・すすや油の付着程度。(清掃のしやすいさの程度がわかる)
・真っ黒のすす等の汚れがある状態での点検未確認の影響を道路管理者へ提案。
◆分類6:その他
いままでお伝えしてきた損傷分類ではどうしても表現できない損傷があります。
下記に具体的な図と示しますので、 点検では以下のことに注意してみてはいかがでしょうか?
①張り出し床版の水切り不良(水切りがない)
②橋座面の土砂堆積
③床版水抜きパイプの導水不良
④コンクリート部材の表面を伝う水によっては発生する汚れ等(要領記載あり)
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【今回のまとめ】
・⑰その他は、法令化された点検自体ができていないことになる。
・橋梁構造への影響有無を確認すること。
・維持管理上、有用な情報を残すために便利な損傷種類。
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【次回のノート】
次回は⑱定着部の異常です!
名前だけ聞くと⑯支承部の機能障害と似ているので、危険な損傷と直結しているようにも思えます。
ただ、一概にはそうとも言えない損傷なんですね。
もちろん損傷によっては、危険な状態を記録できる損傷種類ですので、その辺についても触れながら次回書きたいと思います!
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