ようこそ! Taurus🐂の橋梁点検ノートへ。
再劣化シリーズでは、
読者の皆さまから頂いた質問を改編し、ケーススタディ形式でお届けしています。
「こんな損傷あるんだ」
「だから再劣化するんだ」
「こういう考えもあるんだ」
このブログの記事が、
橋梁メンテナンスに携わる ”あなたの力” になれたら嬉しいです。
ではさっそく、いってみましょう!
※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちで読んでいただけると助かります。
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目次
【再劣化case04:下沓周りのモルタル欠損】
■質問: 下沓周りのモルタル欠損について
『それほど古くない橋なんですが、
数年前の点検で下沓周りのモルタルが割れていたのでモルタルで補修しました。
それがこの前見たらキレイに割れていて、補修しなかった以外の箇所も割れていました。
なぜなのかわりますか?
いくつか支承があるのですが、外桁のみです。』
今回の質問のように、
そんなに古くない橋でも沓座モルタル(沓モル:しゅーもる)が割れていることありませんか?
40年、50年たっているとか、
伸縮装置からの漏水の影響を受けているとか、
積雪寒冷地域だとか、
であれば沓モルが損傷していても納得いきます。
ただ、
『なんでこの沓モルが?(゜-゜)』
ってことありませんか?
今回、質問された方もそんな印象をもったのかな~と。
沓モルの損傷要因も色々あるのですが、
今回のケースでは、
沓モルの施工
がヒントになりそうです。
実際の施工現場ではどんなことが起きているのか?
次の点検では、違う沓モルに見えてきますよ!(´ー`)
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■Case Study: 一緒に考えてみましょう!
■質問 『それほど古くない橋なんですが、 数年前の点検で下沓周りのモルタルが割れていたのでモルタルで補修しました。 それがこの前見たらキレイに割れていて、補修しなかった以外の箇所も割れていました。 なぜなのかわりますか? いくつか支承があるのですが、外桁のみです。』
わたしは下記のように推定していきました(゜-゜)
⇩ ⇩ ⇩ ⇩ ⇩
今回の質問の要点は5つ。
1.それほど古くない
2.下沓周囲のモルタルの再劣化
3.モルタルがキレイに割れている
4.未補修の沓モルも割れた
5.損傷は外桁
古くない橋でキレイに割れる・・・
まずは、
要点をそれぞれ考えてみるか。
1.それほど古くない
”それほど” ということはおそらく、線支承ではなくBP支承(支承板支承)。
ということは、沓モルの外観や施工方法は今と大きく変わらないはず。
沓座モルタルは空練りのモルタルをぺたぺた盛っただけではない。
型枠を組み立ててから打設しているはず。
2. 下沓周囲のモルタルの再劣化
下沓周囲のモルタルが割れる原因としては、
支承本体の固定不良の影響、凍害、車両通過時の衝撃、地震、支点条件・・・
が考えらるけど、他の要点も関連させて絞り込んでいかないと。
3. モルタルがキレイに割れている
”キレイに割れる” の ”キレイ” の意味を確認する必要があるけど、
おそらく、
沓モル周囲の欠損でよくあるモルタル打設前の橋座面の目荒らしの問題かも?
4.未補修の沓モルも割れた
橋座面の目荒らしがもし適切じゃなければ、打ち継ぎ面での付着は弱い。
それであれば、同じ条件の沓モルは遅かれ早かれ損傷するだろうな。
一時的に形状だけを回復させても、打ち継ぎ面も補修しないと。
5.損傷は外桁
同じ支承線上で、”外桁に多い” ということはおそらく、
支承本体の沈下や車両通過時の振動等が原因ではないはず。
橋軸方向側が割れるのであれば、固定不良も考えられるけど。
外桁だけなんだから雨や雪の影響を受けやすいのかも。
これらから考えられるのは・・・・・(゜-゜)
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■回答:沓モルタルの欠損原因について
さて、
今回の「 沓モルタルの欠損原因」についてですが、
「沓モル打設前の目荒らし不良」
ではないかと推定しました。
まず、
簡単に沓モルの施工順序をおさらいします。
①支承据付位置の決定
②橋座面の目荒らし
③箱抜き部清掃
④支承据付
⑤型枠組立
⑥沓モル打設
⑦養生・脱型
この7つです。
ここで今回のケースでポイントになるのは、「 ②橋座面の目荒らし 」です。
この目荒らしは、
支承本体と橋台を一体化させるための重要な工程です。
コンクリートの打ち継ぎと同じですね。
既設コンクリートに新設コンクリートを打ち継ぐ際には、打ち継ぎ面をザラザラ、ガタガタにすると思います。
しかし、
この沓モルと橋座面の打ち継ぎ方法には、ある問題が・・・
それは、
a.目荒らしの程度は、施工者の経験に委ねられている。
b.目荒らしの範囲も、施工者の経験に委ねられている。
この2つの通り、
打ち継ぎ処理の品質については、施工者の経験によるところが大きいのです。
以下より、
経験の理由と併せて損傷に関連する要因を記載していきます。
a.目荒らしの程度(深さ方法)
■ 経験の理由:
すでにでき上がった橋台に大きな打撃によって目荒らしするのは橋台を余計に損傷させることになります。そのため、必要最低限の凹凸ですむように目荒らしをしています。
ただ、この目荒らしの程度については、細かな出来形管理基準があるわけではないので、”この程度であれば橋台と沓モルが付着するはず”という施工者の主観で決まっています。
■ 損傷に関連する要因:
新旧コンクリートの打ち継ぎ面のようにレイタンス処理ができるわけではないので、骨材が表面全体に露出することはありません。そのため、目荒らしの凹凸の深さが不足する傾向があります。
b.目荒らしの範囲
■ 経験の理由:
沓モルを打設したあとの仕上がり(外観)は施工者であればきれいに見せたいもの。
そこで目荒らしをするときに気を付けているのは、型枠の組み立て範囲より目荒らし範囲が超えないこと。
越えてしまうと、どうなるか?
脱型したあとの沓モルの周囲に目荒らし跡が残ってしまいますよね?
支承本体の据付位置からなるべく正確な範囲を目荒らしするのが大切なのですが、どの程度(型枠から●mm内側)まで目荒らし範囲を行うのかが施工者の主観で決まっています。
■損傷に関連する要因:
前述のように、 どの程度(型枠から●mm内側)まで目荒らし範囲を行うのかは施工者の経験値で決まってしまうため、なかには数ミリではなくセンチ単位で内側にしていることがあります。
これはわたしも橋梁点検をしていて驚きました。
例えば、橋座面の目荒らしをしているのか疑ってしまう場合もあり。
橋座面がすべすべ・・・
上記の問題に対し、
すでに道路管理者や施工者で対策をしていることもあります。
なので、一概に今回の損傷パターンにすべて当てはめることは危険です。
ただ、
今回紹介した損傷パターンを知っていると、次回の橋梁点検で参考にできるかもしれませんね(´ー`)
支承周囲だけがキレイに割れた沓モルをずらしてみてください。
橋座面を触ってみると、すべすべ(ツルツル)してるかもしれませんよ?
あなたはどう考えますか?(´-`*)
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【さいごに】
今回のような、
よくある損傷パターンを学ぶことはとても大切なのですが、ついつい固定観念化してしまいがちです。
劣化要因は様々な理由から考えられますので、
推定に使用した諸条件との違いがあれば、すぐに気持ちを切り替えなければなりません。
原因や補修方法がガラッと変わりますので。
固定観念に固執しすぎない柔軟な発想が必要ですよね。
次回、
「再劣化case05:床版部分打替え」
お楽しみに!!
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