橋梁点検ブロガー【Taurus|トーラス】です🐂
”二ッチではあるけど面白い橋梁点検”
に役立つ情報をこのブログでは発信しています!
このブログの記事が、
橋梁点検、橋梁補修に携わる ”あなたの力” になれたら嬉しいです。
ではさっそく、いってみましょう!
※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちで読んでいただけると助かります。
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目次
【道路橋毎の健全性の診断とは?】
これまでの健全度シリーズでは、
・義務化された定期点検のはじまり
・健全度評価の事例(主桁の孔食)
・落橋したアメリカの健全度評価(アメリカ基準)
について書いてきました。
今後の投稿方針としては、
やはり最もわかりにくく、かつ実務で必要な健全度評価の事例を多く投稿していきたいと思っています( `ー´)ノ
と・・・
いうことなんですがその前に。
大事な部分を飛ばしていたことに気づきまして・・・(゚Д゚;)
それはですね。
”道路橋毎の健全性の診断”ってなんですか?
ってことなんです。
『健全性の診断って部材毎に評価するの?』
『部材』に評価した後はそれでおわりでいいの?』
『道路橋毎ってなに?』
『道路橋毎の健全性の診断はどうやって決めるの?』
『どこかにやり方書いているの?』
わからないことばかりですよね?
平成26年度に点検要領が改訂され、この ”健全性の診断” はいきなり現れました。
だれも知らないし、具体的な評価方法も書いていないしで、ほんと大変でした💦
それから数年経った今も、依然として具体的な評価方法は世に出ていません。
ただ、
公式でのおおまかな方針というか、思想というものはあります。
それは ”点検要領” です。
国土交通省の点検要領に、【解説】として記載されています。
『これだけ?具体的な事例とか評価方法とかないの?!』
ないっす。
この解説は、<橋梁定期点検要領平成31年3月 国土交通省 道路局 国道・技術課>なんですが、これと併せて<道路橋定期点検要領平成31年2月 国土交通省 道路局>も読むと、もう少し理解できます。
ですが、これだけなんです・・・
4段階(Ⅰ~Ⅳ)ある健全度のうち、発生した損傷をどれに評価するかによって補修有無が決まるわけですから、超重要な範囲なのですが。
損傷の種類や記録方法等と比べると、もう少し情報がほしいですよね~💧
本題に。
【解説】 道路橋毎の健全性の診断は,道路橋単位で総合的な評価を付けるものである。 部材単位の健全度が道路橋全体の健全度に及ぼす影響は,構造特性や架橋環境条件,当該道路橋の重要度等によっても異なるため,6.の「対策区分の判定」及び所見,あるいは7.1の「部材単位の健全性の診断」の結果なども踏まえて,道路橋単位で判定区分の定義に則って総合的に判断する。 一般には,構造物の性能に影響を及ぼす主要な部材に着目して,最も厳しい評価で代表させることができる。
少ない文章ですが、ここに重要なポイントが2つ書いてあります。
簡単に言うと、
1.架橋条件や重要性等は橋によって違うので、
損傷や部材だけで判断せずにぜ~んぶひっくるめて評価すること。
2.損傷を受けた部材はたくさんあるけど、
評価する部材はその橋にとっての「主要な部材」から選ぶこと。
どうです?
なんとなく、言わんとしていることはわかりますよね?
損傷の発生理由やその位置、使用状況、予算、ご当地の事情等、いろんなことを踏まえて評価する必要があり、画一的(機械的)に評価してはいけませんよ、と。
そのとおり。
ただ、そのやり方はどこにも書いていないので、技術者や管理者が一から考え、決定していく必要があります。
点検要領では、画一的をきらい、ある意味オーダー制を目指しています。
新設する構造物とは違い、維持管理とは100橋あれば100通りの維持管理があるといってもいいのですから。
今の時代の流れですね。
自動化できるところは、AIや機械に。
機械じゃできないことは人間に。
ICTやAI、ロボティクス、仮想社会といったの世の中では、技術者がより力を発揮できる場所が用意されていると思います。
そして、
このブログでも度々出てくる話ですが、やはり健全性を決めるにあたり重要となるのは、
点検要領を理解(参考)にして、各道路管理者が維持管理方針を決定
することです。
維持管理方針には、健全度の評価基準を決めることも含まれます。
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【主要な部材について】
【解説】 道路橋毎の健全性の診断は,道路橋単位で総合的な評価を付けるものである。 部材単位の健全度が道路橋全体の健全度に及ぼす影響は,構造特性や架橋環境条件,当該道路橋の重要度等によっても異なるため,6.の「対策区分の判定」及び所見,あるいは7.1の「部材単位の健全性の診断」の結果なども踏まえて,道路橋単位で判定区分の定義に則って総合的に判断する。 一般には,構造物の性能に影響を及ぼす主要な部材に着目して,最も厳しい評価で代表させることができる。
道路橋毎の健全性の診断を行うには、「主要な部材」とはなにか?
を整理しておかなくてはなりません。
主要な部材とはなんでしょう?
点検要領に下図のように記載されています。
【解説】
このページには、とても大切なことが記載されています。
ポイントは以下の3つ。
1.主要な部材とは、「構造物の安全性や定期点検の目的に照らして橋の性能に直接影響を与える部材」である。
2.主要な部材は、主要部材を兼ねるが一致しない。
3.主要部材とされない部材も主要な部材となり得る。
言葉が似ているので間違えやすいのですが、
主要部材は、主要な部材ではあるが、その全てではない。
さて、
主要部材のおさらいです。
主要部材とは、損傷を放置しておくと橋の架け替えも必要になると想定される部材のことですね。
具体的には、「主桁」、「横桁」、「橋脚」などです。
それ以外をその他部材と言っています。
「支承」、「伸縮装置」、「排水管」などです。
つまり、
道路橋毎の健全性の診断では、
主要な部材(橋の性能に直接影響を与える部材)をこれらの主要部材とその他部材の中から選定し、総合的に評価することなります。
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【支承の健全度Ⅲは、橋も健全度Ⅲ?!】
主要部材を、主要な部材として扱えるのはわかりました。
では、
”その他部材”はどれが該当するのか?
点検要領に事例が記載されています(´ー`)
【解説】
以下は上図の抜粋です。
「例えば支承は,従来から主要部材とは区分していない。しかし,個々の橋の構造や当該支承に求められる機能や変状が進行した時に構造物の安全性に与える影響を考慮すれば橋の健全性の診断を行うにあたって主要な部材として考慮する場合も多いと考えられ,対策区分の判定や健全性の診断を行うにあたって注意を有する。」
補足しますと、
支承はその他部材ではあるけど、支承が損傷すれば、それが支える床版や主桁等の主要部材にも影響あるので、支承も主要な部材として考慮する必要がある。
というように解釈できますね。
では、
例題を2つ。
■橋毎の健全性事例その1
鋼橋でよくある損傷は、やはり錆。
以下のように部材では①腐食という損傷が発生しています。
・主桁(主要部材) :①腐食 健全度Ⅱ
・支承(その他部材):①腐食 健全度Ⅰ
この場合。
主桁も支承も ”主要な部材” ですが、構造物に与える影響が大きいとされる主要部材をまず優先(代表)し「橋毎の健全性:Ⅱ」になります。
・主桁(主要部材) :①腐食 健全度Ⅱ
・支承(その他部材):①腐食 健全度Ⅰ
■橋毎の健全性事例その2
ではこれではどうでしょう?
・主桁(主要部材) :①腐食 健全度Ⅰ
・支承(その他部材):①腐食 健全度Ⅱ
主要部材の主桁は健全で、その他部材の支承が健全度Ⅱです。
どちらも ”主要な部材” ですが、主桁は健全なのでこの場合は橋毎の健全性の診断には対象外となります。
支承の健全度を代表させるので、「橋毎の健全性:Ⅱ」となります。
・主桁(主要部材) :①腐食 健全度Ⅰ
・支承(その他部材):①腐食 健全度Ⅱ
■橋毎の健全性事例その3
さいごに、これではどうでしょう?
・主桁(主要部材) :①腐食 健全度Ⅰ
・支承(その他部材):①腐食 健全度Ⅲ
どちらも主要な部材ですので、先ほどの事例その3と同じく支承に注目します。
ただ、さっきと違うのは支承の健全度がⅢです。
損傷状態のイメージとしては、線支承が著しく沈下し、床版や主桁等の上部工をささえていない状態です。
床版や主桁にはいまのところ、沈下に関連した損傷は発生していないものの、支承の機能は損失し、構造物の安全性に与える影響はかなり大きいと言えます。
この場合の道路橋毎の健全性の診断はどうなるのでしょうか?
それは、
「橋毎の健全性:Ⅱ」であると考えることができます。
・主桁(主要部材) :①腐食 健全度Ⅰ
・支承(その他部材):①腐食 健全度Ⅲ
「橋毎の健全性:Ⅲ」ではありません。
なぜなら、
部材毎の健全性はⅢであるものの、橋毎でみれば、まだ落橋しているわけでも、沈下による主桁の座屈等が発生しているわけでもないので、主桁等に対する予防保全段階と考えることができるからです。
これは支承に限らず、ほかの「その他部材」でも同じ考え方ができます。
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【さいごに】
道路橋毎の健全性の診断の考え方は、確定したものがなく、まだまだ改良が必要なところがあります。
しかし、全国的に橋梁の老朽化が進む現状はまってはくれません。
このブログでの情報を1つの参考とし、”あなた” の今後の業務に役立てていただけるのであれば幸いです。
次回!!
「健全度case05:同列1位の健全度なら、どれが代表?!」
また来週~
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インターネットがこれだけ発達しても自分が本当に必要な情報というのは、なかなか探せないものなんだということ。
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