健全性の診断事例

健全度case12:なぜ起こる?!世界的に多い橋への接触事故

橋梁点検ブロガー【Taurus|トーラス】です🐂

”二ッチではあるけど面白い橋梁点検”

に役立つ情報をこのブログでは発信しています!

このブログの記事が、
橋梁点検、橋梁補修に携わる ”あなたの力” になれたら嬉しいです。

ではさっそく、いってみましょう!

※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちでご一読くださいませ。

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目次

橋と勝負する大型車両たち

つい先日、

yahoooニュースで、橋と勝負した大型車両を目にしました。

2022/6/2 FNNプライムオンライン
「トレーラー身動き取れず・・・積み荷が歩道橋に引っかかり」

yahooニュースと類似の事故 ※Adobe Stockより


大型車両が横断歩道橋に衝突して、そのまま動けなくなってしまったと💧

衝突した方も、衝突された方も、どちらにとっても青ざめる事故ですよね。

運転手の方もさぞ、

『やっちまった( ゚Д゚)』

と思ったでしょうね・・・

さて本題に。

完成すると橋は大きな構造物ですが、橋は小さな部品の集合体なんです。

それは、大きなままだと道路を走れないからですね。

小さな部品として工場で製作し、トレーラー等で運びます。

道路を走ることができる程度の大きさ(長さ12m程度まで)なので、それなりに大きいことには変わりませんが。

それを現場に搬入し、少しずつ組み立てていきます。

大きなディアゴスティーニですね。

今回のニュースは、主桁という部品を運んでいる最中の事故でした。

主桁を積んだトレーラーが補修中の橋の下をくぐろうとしたら、積み荷の高さが高くてひっかかってしまったというもの・・・


工事の施工順序でいうところの「2.輸送工」です。

1.準備工(測量、現場事務所設置等)
2.輸送工
3.支承工
4.架設工
5.塗装工・・・・

さあ、
橋かけていくぞ~!!( `ー´)ノ

と気合いが入る初めの段階なので、さぞ関係各所の方々にとっては残念な事故だったでしょうね💧


このような接触事故・・・

結構あるんですよ。

そして、
接触するのは、前方の運転席の部分より、その後方の荷台の方。

・農業用の機械
・バックホウのアーム
・荷台

こういうところがよく接触します。


公共物を破損したとなると大ごとなので、ほとんどの方は走り去って逃げてしまいます。

逃げたくもなりますよね(-_-)


今回の勝負のゆくえは以下の3パターンのなかで2番の「橋が勝つ」でした。

1.大型車が勝つ=そのまま通過。

2.橋が勝つ=通過できない。引っかかる。

3.引き分け=通過した直後に積んでいた荷が落ちる。

接触した輸送会社の方も橋に損傷がなかったので一安心したことでしょう。

接触した主桁もひっかかっているだけのようでした。ジベルはまがったかもしれませんが、高価な主桁に損傷がなければひとまず大きな被害にはならないはずです。

気になってネットで関連ニュースを調べてみると・・・

Youtubeで世界の驚きの衝突動画がたくさんUPされているではありませんか?

ものすごいスピードで次から次へと橋に衝突していく動画で、「橋 衝突」、「大型車事故」等と検索するとすぐヒットします。

あまりにも激しくぶつかっていくので衝撃的ですよっ( ゚Д゚)

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意外と知らない道路交通法(車両制限令)

激しく橋にぶつかっていく大型車のかずかず・・・

普通はこんなことにはなりません。

なぜなら、
安全に道路を走れるように法律で車両の高さや長さ、重さ、幅が厳しく法律で決められているからなんです。

難しいことは置いておきますが、

道路法(車両制限令)

というものがあってその法律では、

法律で道路を走っていい大きさ、重さが決まっています。


一般的な高さの最高限度は、

3.8m(H16改正,一部の道路で4.1mまでOK)

までに決められています。

高さ制限の標識 ※Adobe Stockより

日本の道路を走る以上、個人だろうが会社だろうが関係ありません。

法律ですからね(゜-゜)


ただ、
普段私たちが乗っている車の高さや重さ、長さなんてあまり気にしません。

普通車は、
この法律のなかで走行できるように作られているので違法な改造をしているわけではないのであれば関係ありません。

でも、
トラックのような大型車、トレーラーのように何か大きな荷物を積載できる車両等は違います。

すこしの不注意が大きな事故に発展しまうことが少なくありません。

実際にニュースになっていますからね💧


ふつうに生活していれば、法律とは距離があるもの。

さきほど紹介したyoutebeの動画でもたくさんでていましたが、個人でのキャンピングカーや農作機械、引っ越し等の大型車を扱う民間会社のように事故を起こしてしまうことがあるものです。

知らないうちに法を犯している例ですね。

道路は安全に通れて当たりまえ。

わたしもこの業界にいなかったら、気にもしなかったでしょうね(^-^;

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【橋体輸送はプロへの外注必須】


しかし、

公共事業を請け負う会社はそうはいきません。
法令を厳守する必要があります!

国の事業を行うものが、法律を守らなず、国民の安全を無視するなんてことはあってはなりません。


そこで、
橋を架ける工事を受注した会社は、橋を工場から安全に現地まで運ぶために計画をたてたり、通行許可を受けたりをします。

橋の部品は大型かつ重量物なので、輸送経路を調査したり、警察に許可をもらったりする必要があるんです。

これらの調査や許可に必要不可欠なのが、

「輸送会社」のちから

です。

工事を受注した元請会社は、輸送するための計画書は作成するものの、実際の輸送経路の調査は輸送専門の会社が行うからです。

輸送を安全に行うためには、輸送のプロに任せるのです。

・ここは渋滞する、
・ここは狭いから通れない、
・ここにはこんな工事がある、
・休憩場所や待機場所はここがある、
・狭いトンネルがあってこの高さの荷物は通れない・・・


輸送会社は道路事情、荷の積み方のすべてを知り尽くしています

そのため、だいたい元請会社はご贔屓の輸送会社とつき合い、輸送を外注していることが多いのです。

取引のない輸送会社の見積もり一番安いからといって、現場監督からすればそれは避けたいのが正直なところ。

万が一の事故は避けたいですから。

ここまでしているんですから、通常であれば接触事故なんておこらないはずなんです。

通常は・・・(゜-゜)

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【接触事故が起こるのはなぜ?】

輸送経路の調査をして、警察も許可をだしてくれている・・・

なぜ接触事故がおきるのか?(゜-゜)

公共事業が少なくなり工事をやっと受注できているこのご時世、手続きが面倒だとか、安く済ませたいなんて理由で手抜きすることは考えられません。

であれば、何が原因なのか?


その原因について今回の事故を例に考えてみました。

補修設計、点検・診断するときの参考にしてください。


怪しい原因その1.スタッドジベルや吊り金具の高さ

今回の事故のyahooニュースはすでに削除されていますが、保存していた写真を見る限り、鋼製の補修用足場にスタッドジベルが引っかかっているように見えます。(Twitterの画像添付あり)

今回の吊り足場の高さは、桁下4.2mになっていましたので、4.1mまでなら通過できる理屈です。

制限外許可がとれれば、4.3mまで積載高さをあげることができますが、補修工事をやっていることは許可する側の警察がわかっていることなので、4.1mでの通行を想定していたと推察します。

それと、

輸送計画を立てるときは、上フランジの高さではなくスタッドジベルや吊り金具といったその輸送物の最大高さを基準に決めるので、まさかこれを考慮していかなったとは思えません。


怪しい原因その2.枕木の高さ

輸送計画では、この枕木の高さも気を遣います。
なぜなら、図を見てもらえるとわかるように、後軸上での高さをどれだけ抑えられるかで全体の積載高が決まるからです。

ジベルや吊り金具もちゃんと確認して計画したのであれば、もしかしたら工場で積み込む際に想定していた枕木以外を使用してしまったことも考えれます。

怪しい原因その3.補修足場の高さ

今回の吊り足場の高さは、桁下4.2mになっていました。
と、いうことは今回の積載物が4.1mだった場合、10cm程度ですが余裕があります。

たった、10cmですけどね。

ここで注意したいのが補修足場の高さです。

橋の吊り足場は下フランジから足場板までをだいたい600mm程度で組み立てます。

狭いんですよ。600mmって💦

本当はせめて1mくらいはほしいとことですが、なにせ桁下は道路もあるので、なるべく狭く組み立てるのが橋梁業界の常識です。

今回のケースもおそらく600mm、もしかしたらそれ以上にせまく組み立てていたかもしれません。

ただ気になるのは、

下フランジからどこまでを600mmとしていたか?
細心の注意をはらって寸分くるわぬように組み立てていたか?

もし、
計画では最下段の位置で600mm(鋼製足場板の下面)だったものが、足場板の上で600mmだったしたら・・・

余裕があると思われていた10cmなど、ないようなものです。


怪しい原因その4.道路の勾配

今回のケースではないかもしれません。

写真を見る限り、そんな勾配があるようには見えませんでした。

ただ、これも注意が必要です。

橋や吊り足場の高さは一定でも、走行路面が傾いていれば、相対的に桁下空間は変化します。

ちょっとしたことなんですけど、こういう狭い空間を大きな積み荷を通過させるときは本当に注意が必要なんです。

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【さいごに】

接触事故はいつになっても絶えません。

橋の点検をしていると、擦り傷、欠損、破断に亀裂。

接触する橋はだいたい決まっているので、何度も何度も接触しているため満身創痍の状態が続いていることもあります。

特に横断歩道橋は無事で済んでいるほうが少ないかもしれません。

人口減少が続く昨今ですが、まだまだ地域住民や学童たちがよく利用し、現役の横断歩道橋はまだあります。

利用者が少ない橋といっても共用している以上、安全を確保しなければなりません。

それのうえで、
次回は接触による損傷が確認された橋梁に対する健全性の診断について書いてみます!(´ー`)

次回!!
「健全度case13:接触すれば大惨事?!健全性の診断には注意が必要

また来週~

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■お問い合わせについて■

この活動で日々思うのは、

インターネットがこれだけ発達しても自分が本当に必要な情報というのは、なかなか探せないものなんだということ。

専門性の高い分野ともなると、難しい言葉で書かれた論文が多くなり、それが自分の知りたい情報だったのかすらわからなくなるときが多々あります。

私は検索するのが下手なので、知りたい情報まで辿り着くことがなかなかできません💧


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「こんな損傷があったらどうすれば?」「ほかではどう対応しているの?」「この記事の意味をもう少し知りたい」など。

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