橋梁点検の出来事・話題・用語

橋梁点検14:<前編>知ってますよ。道路メンテナンス年報ですよね?

橋梁点検ブロガー【Taurus|トーラス】です🐂

”二ッチではあるけど面白い橋梁点検”

に役立つ情報をこのブログでは発信しています!

このブログの記事が、
橋梁点検、橋梁補修に携わる ”あなたの力” になれたら嬉しいです。

ではさっそく、いってみましょう!

※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちでご一読くださいませ。

ーーーーーーーーーーーーーーー

目次

【でました。道路メンテナンス年報】

出典 国土交通省 道路局


今年の「道路メンテナンス年報」(以下、年報)でましたね~

8月ですからね。

もうそんな時期か(´ー`)


今年の年報はどんな感じかな~
どれどれ。まずは全ページを印刷してっと!!


・・・

出典 国土交通省 道路局


なんていうふうに盛り上がるのはわたしを含めて、ごく一部でしょうね。

『メンテナンス年報ですよね?・・・あ~知ってますよ。で?』

で・・・

この手のネタふりは、興味ない人には向きません💧

内容がマニアックですからね。


ただ、
この年報。

道路施設の点検技術者であれば、1度は目を通しておきたい資料。

さっとでもいいので。

いろんな意味で役に立ちます。


かくいう私も初めから興味を持っていたわけではないんですよね。

まず、
師匠から毎年『ことしの年報みた?』の不敵な笑みと声掛けがあって、

それから、
見ていくうちに役に立つ資料ということに気づき、

結果、
自然と資料を確認する癖がついた

って感じです。


師の影響ですね。
師はいつも楽しそうに仕事してますから。

ーーーーーーーーーーーーーーー

【年報ってどんな資料ですか?】


この年報とはそもそもどんな資料なのか?


概要としては、下図に示す年報の1ページ目に書いてあります。

出典 国土交通省 道路局 道路メンテナンス年報 P1


この1ページのなかでも、1つ目の○印を見てください。

「国土交通省では、国民・道路利用者の皆様に道路インフラの現状及び老朽化対策についてご理解頂くため、点検の実施状況や結果等を「道路メンテナンス年報」としてとりまとめています。」

橋やトンネル等の点検の実施状況や結果等がまとめられていて、国民や道路利用者に向けた広報が主なこの年報を公表する目的となっています。

法令化された平成26年度から点検状況が公表されるようになり、今回で8回目になりました。

毎年8月頃に公表されています。

過去も含めた道路メンテナンス年報は、以下の国交省HPから確認することができます。
道路:道路メンテナンス年報 - 国土交通省 (mlit.go.jp)


ーーーーーーーーーーーーーーー

【橋梁技術者としての活用方法】

次に、
メンテナンス技術者としての年報の活用方法ですが、大きく2つあると思います。


1つ目は、

国民や道路利用者に向けた点検状況の広報ですので、全国の点検概要を知ることができます。
工事を含めた措置の実施状況や、自身との関連が深い地域とそれ以外の地域での健全度評価の違い等も確認できます。

道路管理者別や地域別などで、いろんなバラつきがあります。


2つ目は、

昨年までにはない集計や記載内容の変化があるので、維持管理方針の変化に気づけるかもしれません。

道路施設の老朽化を踏まえた実態から、国がどのように維持管理を進めていっているのか、進めていこうとしているのかを読み取ることができます。


以上から、
利用者への広報のみならず、メンテナンス技術者にとって業務上とても重要な資料になっていると私は思うのです。


といっても、
今のところあまり目立たない資料ではあります。

わたしにとっては毎年楽しみなこの年報ですが、

資料の「どこに注意して読んだらいいのか」「どんな意味があるのか」など、わかりにくいところがあって迷子になってしまうんですよね(゜-゜)

なので今回のブログでは年報を初めて読む方を意識して、

ねんぽう初心者向けの基本ポイント

を中心に書いていきます!

ーーーーーーーーーーーーーーー

【年報の構成内容】

今回の年報はA4で144枚の資料となっています。

ページ数だけ聞くと結構な量に思えてしまいますが、自分と関連の深い範囲(橋梁、道路管理者)で限ると数ページですから。

今回は橋梁に特定して話を進めていきますが、全体の構成は以下の通りとなっています。

橋梁、トンネル、道路付属物等、舗装が対象です。

1.道路メンテナンス年報について
2.橋梁・トンネル・道路附属物等の点検結果
3.判定区分Ⅲ、Ⅳの施設の修繕等措置の実施状況
4.予防保全への移行状況
5.舗装の点検結果及び修繕等措置の実施状況
6.小規模附属物・土工構造物の点検結果及び修繕等措置の実施状況
7.橋梁・トンネルの現状
8.地方公共団体におけるメンテナンスに向けた取り組み
※巻末資料


では改めて橋梁に関連する章について着色すると、

⇩⇩⇩⇩⇩

1.道路メンテナンス年報について
2.橋梁・トンネル・道路附属物等の点検結果
3.判定区分Ⅲ、Ⅳの施設の修繕等措置の実施状況
4.予防保全への移行状況
5.舗装の点検結果及び修繕等措置の実施状況
6.小規模附属物・土工構造物の点検結果及び修繕等措置の実施状況
7.橋梁・トンネルの現状
8.地方公共団体におけるメンテナンスに向けた取り組み
※巻末資料


ざっくり説明しますと、

1~3については点検結果と措置の実施状況です。

4については、地方公共団体のうち、予防保全段階にまだいけない団体の数を示しています。

7については、管理者別に集計した橋梁数及び健全度評価状況を円グラフや棒グラフで示しています。

8については、直轄診断状況や地方自治体の土木技術者数などの地方の現状や取り組みを示しています。


次の章では、<前編>として1~4までをもう少し詳しく解説していきます!

ーーーーーーーーーーーーーーー

【年報1~3:点検結果と措置の実施状況】

出典 国土交通省 道路局 P1


先ほどの概要のほかに、今回のとりまとめのポイントや全国道路施設点検DB等の広報が記載されています。

新情報が掲載されているので、気になるところを確認しておきましょう。

『今回はこんな感じね』くらいでOKです。

________________________


点検結果です。

約73万橋ある橋梁のうち61%にあたる約44万橋の点検を2019年から2021年の年で実施しました。
その評価は右図の通りで、約6割(黄、桃、赤色)が健全度Ⅱ以上です。

ということですね。

ただ、
ここで注意しなければならないのは、2019年~2021年の3年分であるということ。

2巡目のみの結果を示しています。

少しややこしいですね。

この図のほかに、2021年度まで実施した橋梁全ての点検結果を示す図(P22以降)があり、その図のほうが巡数の影響されない現在の健全性の状態を把握することができます。

点検業界では、法令化された平成26年から起算してよく1巡目(2014~2018の5年間)、2巡目(2019~2023年の5年間)と表現したり、整理したりするので気を付けてくださいね。

________________________


さきほどの図は全国版でしたが、道路管理者別もあります。

国交省の点検状況であればこの図を確認します。

点検の実施状況は、約6割なのであまり変わりませんが、健全度Ⅱ以上は全国版から減少しています。

大きく違いますよね?

これは高速道路会社の健全度Ⅱ以上の割合が多いことに起因しています。

それを除外すると、国交省のみの集計となるので減少しているように見えるわけです。

________________________

出典 国土交通省 道路局 P38


この図は修繕等の措置実施状況です。

国交省を例にすると、

「措置が必要な橋梁数は3857橋で、そのうち54%にあたる2072橋の措置に着手しています。」

ということです。


ここでのポイントは、「措置が必要な施設数」です。

健全度の評価区分の解説では、以下のように定義されています。

健全度Ⅱ:措置を講ずることが望ましい状態。
健全度Ⅲ:措置を講ずべき状態。

これまでと措置の進め方で少し変わったのは、健全度Ⅲから「措置が必要」と公表したことだと思います。

今回初めての表現です。

健全度Ⅱは「措置は不要」と見えてしまいます。

本当は措置していきたい健全度Ⅱもあるものの、健全度Ⅲをまずは優先して修繕していきたい・・・という方針があるのでしょうね。

橋梁技術者であれば、

『はやく手当てすれば安くすむのに。』
『できればしてほしいけど。』

ということはあっても健全度Ⅲのほうが修繕の実施状況がわかりやすい指標になってしまうのですから道路管理者の心情を汲めば仕方ないところもあります。

ーーーーーーーーーーーーーーー

【年報4:予防保全への移行状況】

「橋梁の修繕等の措置が予防保全段階に移行可能と考えられる地方公共団体(判定区分Ⅲ・Ⅳの施設が存在しない、または修繕等の措置が完了している団体)は、2021年度末時点で10%に留まっており、措置完了率が20%未満の団体が半数以上を占めています。」

出典 国土交通省 道路局 P45


年報が示す ”予防保全段階に移行可能と考えられる地方公共団体” とは、あくまでも健全度Ⅲ以上がない状態のことです。


ただ、
本当にそうでしょうか?

おそらく、

「現段階で健全度Ⅲ以上の重症とされる損傷をいま急いで補修しています。
 まだ予防保全段階である損傷を手当てするまでには至っていません。
 まずは、健全度Ⅲ以上の損傷が全て措置し終わってから・・・」

という論理かなと。


とすれば、

予防保全段階に移行することは、ほぼ無理です(に近い)。

なぜなら、
・放置していた健全度Ⅰ・Ⅱが進行する。
・健全度Ⅲ以上を補修し一度健全度Ⅰ・Ⅱになっても、再劣化して健全度Ⅲ・Ⅳが発生する。
・評価者が変われば健全度も変わる。

などの問題が潜んでいるからです。


健全度Ⅳは落橋等の危険性がある損傷ですから、直ちに措置しなければなりません。
これが残っている以上は予防保全などできません。
これはOK。

しかし、
健全度Ⅳ以外の健全度Ⅲ。

この健全度Ⅲに対する措置については、維持管理の側面から健全度Ⅱよりも補修優先度が低い損傷もたくさんあるのです。

評価の方法上や便宜上、健全度Ⅱになっているだけであって健全度Ⅲよりも補修効果が高い損傷があるのを忘れてはいけません。

健全度評価を総合的に判断した ”予防保全段階への移行”を示していくのが本来の姿

だとわたしは思うのです。

ただ、
これには評価内容等を熟知する必要があるので資料をなかなか難しいですね。

ーーーーーーーーーーーーーーー

【年報は公表後も修正中】

今回少し長くなってしまいましたので、前編と後編に分けました。

次回は年報7から始めますね。

専門的なブログなので、あまり長いと疲れてしまいます(/ω\)

年報はすでに公表されていますが、ちょいちょい修正が入ってきているので活用する場合には国交省HPで最新版か確認しておいたほうがいいですよ!

次回!!
「橋梁点検15:<後編>知ってますよ。道路メンテナンス年報ですよね?」

また来週~

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

■お問い合わせについて■

この活動で日々思うのは、

インターネットがこれだけ発達しても自分が本当に必要な情報というのは、なかなか探せないものなんだということ。

専門性の高い分野ともなると、難しい言葉で書かれた論文が多くなり、それが自分の知りたい情報だったのかすらわからなくなるときが多々あります。

私は検索するのが下手なので、知りたい情報まで辿り着くことがなかなかできません💧


知りたい情報はなんなのか?

検索下手なわたしが検索される方の立場で考えてブログを書き続けています。

「こんな損傷があったらどうすれば?」
「ほかではどう対応しているの?」
「この意味をもう少し知りたい」

などの疑問の解決や知りたい情報を提供したい。

そう考えています。

どうぞ気軽な気持ちでお声がけくださいね!

ブログへのご意見・ご要望につきましては、下記専用フォーム・TwitterDMからお寄せください(´-`)
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