④破断

【新解説】損傷種類④:破断(はだん)

橋梁点検人材育成プロジェクト運営人の 神宮 皐(かみや さつき)です。

このプロジェクトでは、橋梁点検や橋梁診断に特化した  ”あなた個人”  がもつ疑問の解決や相談できるコミュニティの構築に取り組んでいます。


プロジェクトの一環として、わたしの橋梁点検スキルをブログで公開しています。

あなたのスキル向上に役立てられたら幸いです。

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目次

【④破断とは?】

橋梁点検で言うところの「破断」とは、

鋼部材が破壊し、2つ以上の部分に分離すること

です。


橋梁点検では、高欄や排水管で腐食の進行や車両の衝突などによる破断をよく目にすると思います。

破断しているかどうかは見ればわかりそうなものです。

ただ、

後述しますが私がよく参考にしている資料を見ていると新たな気づきがありました。

簡単そうに思える「④破断」ですが、このブログに訪れた機会に改めて私と一緒に整理してみるのはいかがでしょうか?


ちなみに、

わたしが参考にしている資料は、

国土技術政策総合研究所の「道路橋の定期点検に関する参考資料(2013年版)」

です。

この写真や備考欄に記載されているメモが点検で役に立ちます。

出典 国土技術政策総合研究所「道路橋の定期点検に関する参考資料(2013年版)」

(1) NILIM. https://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0748.htm
国総研資料 第 748 号 (nilim.go.jp)

(2) 付録-1 損傷評価基準および損傷写真集 https://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0748pdf/ks074809.pdf
国土技術政策総合研究所研究資料 (nilim.go.jp)

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【点検要領の解説(解釈)】

さて、

26種類もある損傷種類の解説については、点検要領で「付録-1」と「付録ー2」の2つの付録で解説されています。

ただ、

この解説はところどころ抽象的な解説でとどまっています。

それも理由があるのですが、
この抽象的な解説により読み手の解釈によって誤解が生じてしまうことがあるのです。


そこで以下からは、

わたしの ”解釈” と ”その根拠” を公開します。
少しでもあなたの疑問の解決となれば幸いです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<点検要領の付録-1>

■【一般的性状・損傷の特徴】

④破断について、点検要領の付録-1では下図のように解説されています。

出典 橋梁定期点検要領平成31年3月 国土交通省 道路局 国道・技術課


まず初めに押さえておく内容はこれですよね。

“ 完全に破断しているか?

破断とみなせる程度に断裂しているか? ”


では、

具体的にはどんな状態が破断と言えるのか?

国総研の資料にある事例を見ながら確認していきましょう。

出典 国土技術政策総合研究所「道路橋の定期点検に関する参考資料(2013年版)」


これらの写真が「④破断」と言える状態です。

いかがでしょうか?

改めてこういう事例を見ると、『これも破断で記録するのね』なんて事例があったのではないでしょうか?


■【他の損傷との関係】

はじめに、1つ目の中点についてですが、

出典 橋梁定期点検要領平成31年3月 国土交通省 道路局 国道・技術課

「④破断」だけではないので、ほかの損傷も記録しましょう

ということが記載されていいます。


なぜなら

”きれいに破断だけ”というのはあまりないからです。

ほとんどの場合、「①腐食」や「②亀裂」が部材の周囲にはあることが多いのです。


さらに

ここには特に記載されていませんが「㉓変形•欠損」も同様です。

下の写真は先ほどの防護柵(縦さん)の破断ですが、

上の写真は縦さんが4本変形していますし、下の写真は縦さんの一部がなくなっています。

どちらも「㉓変形・欠損」で記録しますが、前述の通り「④破断」があるところには他の損傷もよく発生しているので注意が必要です。

出典 国土技術政策総合研究所「道路橋の定期点検に関する参考資料(2013年版)」


次に、中点2つ目です。

出典 橋梁定期点検要領平成31年3月 国土交通省 道路局 国道・技術課


これは、支承のアンカーボルトや高力ボルトの遅れ破壊時に見られる<破断や折損>の場合です。

出典 国土技術政策総合研究所「道路橋の定期点検に関する参考資料(2013年版)」


現象的には「④破断」ですが、点検要領ではボルトやリベットに関しては「③ゆるみ・脱落」で記録することになっています。


最後に、中点3つ目です。

出典 橋梁定期点検要領平成31年3月 国土交通省 道路局 国道・技術課
出典 国土技術政策総合研究所「道路橋の定期点検に関する参考資料(2013年版)」


地震や支承の沈下等の影響により、サイドブロックやアンカーボルトが破断することがあります。

その場合は前述の通り「③ゆるみ・脱落」で記録するのですが、

ここで重要なところは

客観的な損傷状態を記録する目的である<点検>と言いつつ、構造物の性能評価を行う<診断>の範囲が含まれているということです。

支承のサイドブロックやアンカーボルトが破断していれば、「⑯支承部の機能障害」は確定であるということなのでしょう。


ただ、

点検はあくまでも外観状況からの客観的な状態の記録が目的であることを踏まえると、機能障害を点検で判断するのは点検要領上の誤解が生じるのではないかと思います。

個人的な見解ですので、支承部の損傷がある場合はこのような診断する知識も点検技術者には求められていることに注意しましょう!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<点検要領の付録-2>

■【損傷程度の評価と記録】

出典:橋梁定期点検要領平成31年3月 国土交通省道路局国道・技術課


破断の有無で評価するので、これは難しくはないですね。

「④破断」に限らずですが大事なことは、スケッチとメモの活用です。


破断しているところって写真では破断の大きさや長さ、その周囲の腐食状態等がわかりにくいことが多々あるのです。

健全度評価(診断)を行うにあたり大事な情報は「④破断」という損傷種類の有無ではなく、破断している位置や長さ、方向、破断面、前回点検での状況等です。

これらの情報を点検調書の写真やメモ欄を駆使して作成できれば、より良質な点検結果として高い評価を得られると思います!

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【初心を忘れずにいると気づきも多い】

今回このブログを書くにあたり、国総研の資料を振り返り改めて点検の難しさを感じました。

気づくと難しく考えすぎているところもあり、逆に簡単に考えていたところもあり、わかっている気になっていたことを反省しました。


わたしが診断を始めたころは、点検のやり方がわからなかったので点検員の方々が記録する点検調書がわたしの勉強材料でした。

しかしその勉強材料である点検調書をたくさん見ていると、各々の点検会社の、点検員の、地域の、差が結構あることに気づきました。

点検要領の理解(解釈)が統一できていない証拠ですよね。


このブログでは、あえて私の解釈で書いています。

それは違うよねってことも技術者の見解の違いがあるのも承知しておりますが、点検技術者の誰かに役立つことができればと思っています。

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橋梁メンテナンス業界は現在、危機的な人材不足、育成不足の問題に直面しています。

これらの問題に業界も力を入れてはいるものの、大局的な施策が多く、個人を育成するような施策には至っておりません。

「こんな損傷があったらどうすれば?」
「ほかではどう対応しているの?」
「この意味をもう少し知りたい」

などの疑問や悩み、これらの解決策に関する情報は業界の盛り上がりをよそに公開されていないのが実情です。

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