損傷・再劣化事例

F11Tボルトの交換作業は”見えない”危険がいっぱい

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ではさっそく!

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目次

【F11T高力ボルトの補修方法】

2021.7.21の公開ノート「損傷種類③-2:ゆるみ・脱落とは?!」で、F11Tボルトの脱落について書きました。

では、

F11Tボルトの補修はどうすればいいのでしょうか?


ちょっとその前に。

橋梁点検は、
「現時点での損傷状態を客観的に確認し、記録すること」です。

ただし、
橋梁点検は点検だけにあらず。

それを利用する一般の方々や道路を管理する方々の想いになり、橋梁点検をした後について対応できてこその橋梁点検だと思います。

・どのように維持管理していかなければならないのか?
・みつかった損傷を安く、早く治すにはどういうが方法があるのか?

それには、
補修の知識が必要不可欠です。


さて本題に。

F11Tの補修方法について考えるときに重要なのが、

「その補修が今必要なのか?」

です。

鋼橋で使用するボルトの数は相当(なん千本、なん万本)あります。
F11Tの脱落が始まったからといってすぐ交換できるわけではありません。

ではどうすればいいのか?

交換に対する判断材料としては、
脱落する早さ
脱落部を考慮した場合の橋梁構造の安全性
脱落した場合の第三者への影響など

これらの状況を踏まえて

『よしっ!やるかっ!』

と気合いを入れる必要があります(^-^;

なぜ気合いが必要かというと、なにせ何万本の交換ですからね。
新設と違って交換なので、ボルトを外していくのは危険な行為ですし・・・

話はもどり。

補修方法については主に下記の3パターン。

1.高力ボルトの交換:F10T高力ボルトに全てor一部交換
2.落下防止材の設置:ネット、ゴムキャップの設置
3.経過観察    :助長要因の抑制し、ボルト未交換

ただ、
日進月歩の世界ですので、もしかしたらもっと優れた補修方法があるかもしれません。(※補修方法教えてください!DMお待ちしております!)

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ここからはさらに詳しく。

補修方法はネットで検索すると詳しい情報がわかるので、やはりここは現場で注視したい点についてを重点的に書いていきたいと思います!

<高力ボルトの交換:F10T高力ボルトに全てor一部交換>

交換方法の図解説明については、
株式会社駒井ハルテックさんのHPや「F11T 交換」等で検索すると詳しい説明があるのでそちらも併せて確認してみるといいですよ。

現場で採用されることが多い補修方法は、
下図のような床版コンクリートに埋め込まれている部分以外(板桁:ウェブと下フランジ、箱桁:ウェブと下フランジ(一部上フランジ)の交換を行います。

床版コンクリートに埋め込まれた部分も交換するとなると、交通規制をかけて橋面上から床版を撤去しなければならないので、かなり大変な作業になります。

検討はするものの本採用までの道のりは遠い方法かもしれません。

F11Tボルトを残すことにする場合は、応力計算をして問題ないか確認する必要があります。

★注意 の1つ目 :
車両を通しながら交換していくので、いわば橋の性能を落としながらの工事になります。
不安全にならないように1本ずつ、あるいは1列ごとに少しずつ交換していきますので、現地では作業手順を守ってもらうことが重要です。

★注意 の2つ目 :
ボルトの交換では、交換する前に塗装を除去する必要がありますが、その塗膜にはPCBや鉛等、人体に有毒な物質が含まれています。そのため設計段階では有害物質量を確認し、人体に悪影響を及ぼさないような補修方法が選定されています。
ただ、それが現実に、確実に行われているかというと難しい面があり…。なぜなら、目には見えない微粒子である有害物質をどこまで防げるのかという問題が避けられないからです。ウィルスと同じように絶対ということはないのですから。

<落下防止材の設置:ネット、ゴムキャップの設置>

ボルト交換には上記1の通り、費用対効果等の関係で一部交換しない場合があります。
また、脱落本数が少なく、その脱落の早さも遅いと評価できた場合、落下防止措置を行います。

主な措置方法として2つあって、
1つはネットや透明板で添接部を囲う。
2つ目はゴムキャップを取り付ける方法があります。

これはあくまでも応急措置ですので、脱落状況を観察し、本数が増えてくれば交換が必要になりますので定期点検での経過観察が重要です。

★注意 の3つ目 :
ネットや透明板、ゴムキャップは日射や風雨、雪の影響を受け続ける過酷な環境にあります。
そのため、材料が劣化し、ほつれていたり、割れていることがありますので、定期点検では触診と併せてよく確認することが重要です。


<経過観察:助長要因の抑制し、ボルト未交換>

上記2と同様に脱落本数が少なく、その脱落の早さも遅いと評価できた場合、ボルトの交換をしないことがあります。

その際、ボルトの脱落を助長させていた橋面からの漏水等に対し、舗装の打替えによる止水措置を行います。

止水効果が発揮されれば、ボルトの脱落早さをさらに遅らせることができるので、費用対効果の観点からは現実的な維持管理手段です。

★注意の4つ目:
理由は2つ。

1つは老朽化して脆くなった床版コンクリート上に舗装の打替えをしてもすぐ舗装が劣化してしまうこと。

2つ目は常時、輪荷重や雨雪の影響を舗装は受け続けるため、傷みやすいことがあげられます。

あくまでも舗装の打替えによる効果は一時的であり、これまた応急補修であるという認識が必要です。

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【ノートのまとめ】

・ボルトの交換は構造的にも人体的にも危険な作業なので、安全第一で施工すること。
・応急措置、恒久措置に応じた維持管理方針を計画すること。

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【次回のノート】

さて、次回は「損傷種類④:破断」です。
それと、土木業界に入りたいという女性が増えてきましたので、近々メンバーで女子座談会を開催した様子も座談会シリーズでUPします!

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【さいごに】

橋梁点検は、点検だけして終わりではありません。それを利用する未来について考え、人々の幸せを育む仕事だと思います。それには、設計・施工(新規、補修)・維持管理方針といった様々な知識や立場を融合することが必要になります。
未熟な知識ではありますが、今後は橋梁点検だけではなく、わたしが知る限りの橋梁施工・補修方法関連の情報を発信していきたいと思います。
本ブログでは、橋梁点検に携わる方々、インフラを利用するすべての方々のお役に立てるように取り組んでいます。
どうぞ温かく応援いただけると嬉しいです🐂

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