ようこそ、Taurus🐂の橋梁点検ノートへ!!
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<これまで私が蓄積してきた知識や経験を書き留めたノートの公開>です。
それでは、今日の公開ノートはこちら↓
※ライト兄弟:動力飛行機の発明家、パイロット。
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目次
【⑤防食機能の劣化の概要】
今日は「防食機能の劣化」について私のノートを公開していきたいと思います。
範囲が少し広いので、まずは「塗装編」ということで。
ではさっそく、
今回の⑤防食機能の劣化という損傷は、①腐食と密接な関係で、いわば兄弟のような損傷です。
⑤防食機能の劣化を理解するためには、①腐食についても理解する必要があり、奥が深い面白い損傷だと思います。
きっと、これを読めば⑤防食機能の劣化が好きになるはず!
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<点検要領の付録-1>
さて、私が橋梁点検を始めた頃、
そもそも①腐食だけでいいような?と思っていました。
なぜわざわざ、⑤防食機能の劣化という損傷をここまで細かく記録するのかなと。
それは、鋼橋の大敵が、錆(腐食)だからだと思います。
逆に言えば、鋼橋は腐食さえしなければ、半永久的に使用できるといってもいいくらい優れた構造物だと言えます(疲労はさておき)。
そのため、点検要領では①腐食だけでなく、⑤防食機能の劣化の2つの両方で腐食に対する評価を行っているのだと思います。
さて、話は戻りまして。
一般的な性状については、点検要領で下記のように記載されています。
⑤防食機能の劣化とは、①腐食に至るまえの状態のことです。
上図にも記載されているように、3つの分類(塗装、めっき・金属溶射、耐候性鋼材)にわけて記録します。
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分類1塗装 :防食塗膜の劣化
分類2めっき、金属溶射:防食被膜の劣化により、変色、ひびわれ、ふくれ、はがれ等
分類3耐候性鋼材 :保護性錆が形成されていない状態
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橋梁点検では、鋼材が錆に至る前にはこのような状態になるのでそれを記録します。
具体的には、
ペンキで塗装された部材は、防食塗膜が劣化すれば、変色したり点錆が発生したりするので、それをa~eの区分に応じて記録します。
【⑤防食機能の劣化の本来の意味】
⑤防食機能の劣化は、わたし達の日常生活でもよくある現象です。
車やおもちゃなどの塗装が変色してきたり、はがれたりと防食機能の劣化は存在しています。
その状態を橋梁でも確認するのですから、見ればわかりそうなものです。
『さびる前の状態が、⑤防食機能の劣化なんでしょ?
塗膜がはがれていたり、変色していたりしたら⑤防食機能の劣化で記録するだけ!
かんたん、かんたん。らくしょー』
しかし!
そう簡単ではないのが、橋梁点検の難しいところ。
橋梁点検をした際、こんな感想をもったことはありませんか?
『点検要領に書いてある①腐食と⑤防食機能の劣化の内容って似ているな。』
『この損傷って①腐食と⑤防食機能の劣化のどっちで記録するんだ?』
『点検要領ではどっちでもとれそうなことがかいてあるぞ?』
ここで○×問題です。
<問題>
⑤防食機能の劣化はないので、①腐食の記録だけでよい。
①腐食だけの記録でいいなら「〇」を、
①腐食と⑤防食機能の劣化の両方であれば「✕」をしるしなさい。
いかがでしょうか?あまり深く考えなくていいですよ。
正解は・・・「✕」です。
『たしか橋梁点検の講習会とかで、①腐食があったら、⑤防食機能の劣化もセットで記録ってならったぞ?』
そうですよね。そう習います。
でも、それにはきちんと理由があるのは知っていますか?
そう。
①腐食にいたるには、かならずといってもいいほど、その周囲で防食機能が劣化しています。
無条件にセットで記録するのではなく、塗装された橋梁では同じ場所に①腐食と⑤防食機能の劣化が存在しているだけということを注意しなければなりません!
橋梁点検では、①腐食と⑤防食機能の劣化はセットで評価するのが当たりまえになっていますが、理由があることも知っておくと、これから腐食を点検するときに役立つと思います。
【⑤防食機能の劣化の適用範囲】
ここまでで、⑤防食機能の劣化と①腐食は密接に関係していることはわかってきたと思います。
つぎは⑤防食機能の劣化の適用範囲についてです。
以前公開した「損傷種類①:腐食(ふしょく)とは?!」でも書いていますが、もしかしたら今日のノートを見てからの方が分かりやすいかもしれません。
すこし重複するところがありますが改めてご覧ください。
①腐食と⑤防食機能の劣化の線引きは、ずばり「断面減少があるか、ないか」です。
点検要領でも、断面減少というキーワードが再三でてきます。
上図は⑤防食機能の劣化のページにある【その他の留意点】ですが、
・断面減少等を伴うと見なせる場合
・断面減少の有無の判断が難しい場合
このように、断面減少が疑わしいものは、①腐食として記録しなさいとなっています。
一方で、⑤防食機能の劣化は、断面減少にはいたっていない上記以外の状態を記録することになります。
なぜ疑わしきは①腐食で記録しなければいけないでしょうか?
それは、
一見大したことないように見える腐食でも、現場で思わぬ重大な損傷に出くわした!
なんてことがあるからではないでしょうか?
鋼橋での鋼部材の破断等は、橋梁構造の安全性(健全度評価)に大きな影響を与えます。
ハンマーでかき落としすると、下フランジやウェブに孔が空いたり、破断したりとよく現場では起こります。
そのため、点検要領では安全側に判断しましょう、ということなんでしょうね(^^;)
①腐食や⑤防食機能の劣化の判断で、よくわたしが参考にしている資料は、
・一般財団法人橋梁調査会の道路橋点検士講習会で使用したテキスト
・国土技術政策総合研究所HPの国総研資料 です。
損傷種類別にたくさんの写真が掲載されています。
それらを見て目を養っていくと自分のなかでの判断基準ができるので、とても参考になりますよ。
【ノートのまとめ】
・⑤防食機能の劣化は①腐食のセットではない。
・⑤防食機能の劣化かどうかで迷ったら①腐食で評価しておくこと。
・鋼部材の本当の損傷状態は、塗装がきれいでも外観以上に腐食していることがある。
【次回のノート】
次回のノートは「⑤防食機能の劣化:耐候性鋼材編」です!
今回の塗装編以上に耐候性鋼材は奥が深くなりそうです。
橋梁点検の最前線にたつあなたの点検に役立てもらえるようにしっかりと書きたいと思います!
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