橋梁点検人材育成プロジェクト運営人の神宮 皐(かみや さつき)です。
このプロジェクトでは、橋梁点検や橋梁診断に特化した ”あなた個人” がもつ疑問の解決や相談できるコミュニティの構築に取り組んでいます。
プロジェクトの一環として、わたしの橋梁点検スキルをブログで公開しています。
あなたのスキル向上に役立てられたら幸いです。
※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちでご一読くださいませ。 ※橋梁点検人材育成プロジェクト【Linxxx(リンクス)】を運営(非営利)しています。 ご質問・ご依頼につきましては、こちらからどうぞ(´-`) Linxxx – 橋梁メンテナンス人材育成プロジェクト│Linxxx(リンクス)
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目次
【⑨抜け落ちとは?】
さっそくですが ”抜け落ち” とは、
床版コンクリートが
→局部的に分離し
→剥がれ落ちてしまう状態です。
剥がれ落ちてしまうと、場合によっては道路に穴が開いてしまいます。
建設当時はキレイで丈夫な橋も、時が経てば必ず老朽化します。
老朽化すれば、穴があく確率もおのずと上がってしまうのは当然のことです。
最近では毎年どこかしらで道路に穴が開き、その穴に落下してしまう事例が発生しているのですから怖い話です。
しかも、
インフラの老朽化は橋に限った話ではありません・・・
水道管が破裂したり、道路に突如現れた大きな穴に車が落ちたり、山の土砂や岩が道路になだれ込んできたりと、このようなニュースがだんだん増えてきました。
話は戻りまして、
床版が ”抜け落ち” ると穴が開くわけですが、このときコンクリートはどんな状態になっているかというと基本的には、
床版下面は2方向ひびわれがたくさん入り、そのひびわれには角欠けが発生しています。
そして、水や遊離石灰が滲み出ていて、色は黒ずみ湿潤しています。

健全な床版は、水の滲みもなく、灰色をきれいな状態ですから、前述のような「抜け落ち」が懸念される劣化した床版は見るからに危険な状態です。
ほとんどの場合、抜け落ちるような危険な床版は見ればわかります。
見るからにヒドイですから。
ただし・・・
パッと見、まさか抜け落ちるようには見えない危険な床版があるのです。
”例外がある”
のです。
これについては次章以降で詳しく説明します。
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【点検要領の解説(解釈)】
さて、
26種類もある損傷種類の解説については、点検要領で「付録-1」と「付録ー2」の2つの付録で解説されています。
ただ、
この解説はところどころ抽象的な解説でとどまっています。
それも理由があるのですが、
この抽象的な解説により読み手の解釈によって誤解が生じてしまうことがあるのです。
そこでここからは、
(僭越ながら)わたしの ”解釈” と ”その根拠” を公開します。
少しでもあなたの疑問の解決となれば幸いです。
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<点検要領の付録-1>
「⑨抜け落ち」ついて、点検要領の付録-1では下図のように解説されています。

【一般的性状・損傷の特徴】
コンクリート床版(間詰めコンクリートを含む。)からコンクリート塊が抜け落ちることをいう。
【他の損傷との関係】
剥離が著しく進行し、部材を貫通した場合に、「抜け落ち」として扱う。
上記2つを統合すると、
“コンクリート床版が貫通し、コンクリート塊が抜け落ちた状態”
です。
ポイントは
”コンクリート塊の有無”
となります。
抜け落ちというと道路に穴が開いた場面を想像してしまいますが、
舗装の穴は必ずしも必須ではありません。
舗装に穴が開いていなくても、舗装直下のコンクリートが消失(落下)していれば「⑨抜け落ち」なんです。
これは国総研等の事例写真でもわかります。
下図は抜け落ちの断面図ですが、舗装と床版コンクリートがともに落下していることもあれば、舗装だけが残って直下の床版コンクリートだけが落下していることもあります。
路面や桁下からの点検では、これらの状態を踏まえて注視する必要があります。

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<点検要領の付録-2>

損傷程度の評価は簡単で、
⑨抜け落ちがなければ → ”a”
⑨抜け落ちがあれば → ”e”
これは問題ないですね。
ただ、
抜け落ちが実際に発生していても
点検時あるいは点検前に(応急)補修を行えば、記録上⑨抜け落ちとして記録しません。
補修をしているのですから、当然と言えば当然ですが、
困ったことに、応急補修を恒久補修レベルの補修と誤解してしまうことがあるのです。
この場合下図のように、
⑮舗装の異常を記録するとともに、⑰その他やメモ欄も活用して、今後の維持管理に役立てもらえるような情報を残しておくことがとても重要になります。

行政担当者や調査、補修会社が未来永劫、その橋を維持管理していけるわけではありません。いつまでも先輩技術者の経験だけに頼るわけにもいきませんので、カルテに詳細を記録し継承していかなければなりません。
【RC床版以外の抜け落ち事例】
上記以外の抜け落ち事例を一部ご紹介します。
冒頭でご紹介した例外的な事例です。
<事例-1:PCT桁の間詰め床版>
こちらもよく事例として紹介されています。
点検要領に記載されている“間詰コンクリートを含む”とはこの事例のことを指しています。
間詰床版はPC鋼材で横締めされていることもあり、テーバーがなかったり、補強鉄筋がなかったりした時代がありました。
構造的な要因から抜け落ちる可能性が高いので、点検では設計および施工された時代に注意が必要です。
こちらの資料も点検時の参考になりますよ。
※PCT 桁橋の間詰めコンクリート点検要領(案)平成15年1月 国土交通省道路局国道課
<事例-2:中空ホロー橋の主桁上面>
中空ホロー桁は工場製作なので、あまり事例はないかもしれませんが、上面のかぶりがないと主桁上面が抜けることがあります。
製作物だからといって油断はできません。

<事例-3:中空床版橋の上床版>
事例2と同じように上面のかぶりが薄くなると抜け落ちが発生します。
中空ボイド管がコンクリート打設中に浮かないように金具で固定されているのですが、浮力や固定金具の破損によってボイド管が上に移動してしまった結果、かぶりが薄くなってしまうのです。
現在は固定金具が改良されています。
先ほどの事例-2も中空ホロー桁もボイドではなく、木枠や発泡が設置されていて、発生機構は同じです。

<事例-4:RC床版の下面鋼板補強部>
こちらもよく抜け落ち資料で使用される事例です。
床版下面に補強鋼板が設置されていますが、床版の劣化によってアンカーの定着力が消失すると、鋼板と共にコンクリート床版が一気に抜け落ち(剥がれ)が至ります。
鋼板で覆われているので、鋼板の腐食に目が行きがちですが、内部はボロボロ(水平ひびわれが多数発生、コアも抜けない)になっていることがあります。
鋼板で補強されているからといっても油断は禁物です。
この場合、舗装打ち替えや床版上面の補修で雨水が入り、さらなる劣化を助長しかねないので床版交換も視野に入れる必要があります。
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【抜け落ちの予兆】
抜け落ちは頻発こそしていないものの今後は橋梁の高齢化が急速に進むことから、橋梁点検で遭遇する機会が増えてくると思います。
路面(床版)が抜け落ちると大変危険な状態になりますので、日頃からこのような事例があることを頭に入れて橋梁点検に向き合うことで、事前に抜け落ちを防ぐことができるかもしれません。
点検時に舗装や床版の損傷状態だけでなく、その周囲に状態にも注意が必要です。
過去のわたしの経験から参考にしていただきたい予兆の事例をご紹介します。
下記の状態があると抜け落ちる可能性は高くなりますので注意が必要です。
■ 舗装補修が繰り返されている(ま新しい舗装補修の繰り返し)
■ 舗装はきれいなのに、床版下面の漏水が著しい
■ 進入側の伸縮装置近傍の舗装が損傷している(衝撃が大きい箇所)
■ 車両走行部のみ舗装がオーバーレイされている(路肩はなし)
■ 床版が部分的に打替えおよび鋼板補強されている
■ 鋼板やシートで全面被覆されていて床版下面の状態が不明
■ 補修された床版の境界に漏水が生じている
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橋梁メンテナンス業界は現在、危機的な人材不足、育成不足の問題に直面しています。
これらの問題に業界も力を入れてはいるものの、大局的な施策が多く、個人を育成するような施策には至っておりません。
「こんな損傷があったらどうすれば?」
「ほかではどう対応しているの?」
「この意味をもう少し知りたい」
などの疑問や悩み、これらの解決策に関する情報は業界の盛り上がりをよそに公開されていないのが実情です。
わたしはこの解決策が、
信頼ある仲間とのコミュニティによる個人スキルの向上だと信じています。






















