橋梁点検ブロガー【Taurus|トーラス】です🐂
”二ッチではあるけど面白い橋梁点検”
に役立つ情報をこのブログでは発信しています!
このブログの記事が、
橋梁点検、橋梁補修に携わる ”あなたの力” になれたら嬉しいです。
ではさっそく、いってみましょう!
※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちでご一読くださいませ。
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目次
【根拠(エビデンス evidence)】
前回のブログでは、
主桁をのせたトレーラーの横断歩道橋への接触を例にしてその原因の考察について書きました。
前方に見えている歩道橋にぶつかるなんて・・・
信じられないことですが、結構あるんですよね💦
うっかり、なんですかね?
でも、
桁下を歩いていると結構、下フランジに頭ぶつけることあるから同じようなものかな?(゜-゜)
ちなみに、
高さが理由で大型車が橋に接触する原因というのは、簡単でもあり難しくもあり。
簡単とする理由は、
ぶつけた方の「高さ」がその対象よりも高いから。
そのとおりですよね。
一方で難しいとする理由は・・・
これには、
ぶつけた方、ぶつけられた方の双方にその要因があり、一概にどちらかが悪いとは言えないからなんです。
と、いうようなことを前回のブログで書きました(´ー`) ⇩
健全度case12:なぜ起こる?!世界的に多い橋への接触事故 | 【Linxxx公式】現場で役立つ橋梁点検ノート
さて、
大型車が橋にぶつかると、コンクリートや鋼でできた橋もただではすみません・・・
破断したり欠損したりと ”見ればわかる” ほどに損傷します。
そこで、
橋梁点検をするうえで欠かせないのは、
見ればわかるその破断や欠損といった事実に加え、
根拠(エビデンス evidence)
です。
人間の診療と同じように、橋梁に対する健全性の診断にも根拠が必要なんです。
なぜなら、
利用者や発注者から強く求められる傾向にあるからなんです。
これは今に始まったことではありませんが、
少ない予算での補修要否の判断やトリアージ論が進む近年において、これらに対する根拠への説明責任を果たす役割が大きくなってきています。
『衝突して破断しています。』
だけではなく、
『健全度Ⅱとした理由は●●だから■■と推定した。』
が、
これからの点検ではとても大切です。
なにより、
技術者としてこれが説明できると同じ損傷でも楽しくなります(´ー`)
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【衝突後によく記録される損傷種類】
さて、
衝突するとどんな損傷が発生するのか?
2次的な損傷が除く(剥離→露出した鉄筋が腐食)として、
コンクリート橋では
・損傷種類 ⑥ひびわれ
・損傷種類 ⑦剥離・鉄筋露出
・損傷種類 ⑩補修・補強材の損傷
・損傷種類 ⑫うき
・損傷種類 ㉓変形・欠損
こんなところが代表的な損傷ですよね?
つぎに鋼橋ですが、
・損傷種類 ②亀裂
・損傷種類 ④破断
・損傷種類 ㉓変形・欠損
コンクリート橋と比べ損傷種類の数は少ないですが…
損傷や健全性が大したことない、なんてことではありません(/ω\)
その逆でコンクリート橋と比べ同じ衝突でも、鋼橋のほうが大ダメージとなることが。
その理由の1つとしては、
コンクリートと比べ鋼橋の優れている点である「軽さ」にあります。
上部構造物を軽量化することで、地震力や基礎への負担軽減、下部構造物を小型にできるメリットがあり、そのメリットゆえに「鋼橋」が選定されます。
コンクリートに比べ薄く軽い鋼材を、幅や厚さを変えて組み合わせ、さらに要所に補剛材をいれることにより鋼橋は軽量化と高強度化を実現しています。
それゆえに・・・
大型車等の衝突により、鋼板にき裂や破断、変形が生じてしまうと一気に健全性が下がってしまう可能性があるのです。
もろ刃の刃というやつですね(/ω\)
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【健全性の診断事例】
では、
衝突により破断や変形が生じた橋梁の健全性はどう評価したらいいのでしょうか?
見た目はひどいですからね。
有無を言わさず「健全度Ⅲ」や「健全度Ⅳ」だらけになり、ある意味簡単な評価となるのでしょうか?
な、
わけありませんか(^-^;
ここからは具体的に点検・診断時に必要となる視点や事例についてご紹介しています!
■視点その1~側面から見た衝突位置
鋼橋に限った話ではありませんが、
衝突位置が「支間中央側」なのか「支点側」なのか?
支点側に比べ支間中央側のほうが曲げ応力に対する影響は大きくなるので、支間中央側に衝突している場合は注意が必要です。
ほとんどの場合、
支点側に近接することはほとんどありませんが衝突位置が「支間中央側」なのか?「支点側」なのか?
衝突に限った話ではありませんが、これらの位置によって健全性が大きく変わることに注意しながら点検する必要はあるでしょうね。
■視点その2~断面から見た衝突位置
横断歩道橋であれば主桁が2枚あって、路面から作用する荷重も歩行者だけです。
横断歩道橋の路面に車両がのることはないので、衝突位置が断面上、どこにあったとしてもそれほど健全性に与える影響は少ないでしょう。
しかし、
横断歩道橋以外はどうでしょう?
主桁が複数枚あれば、損傷位置によって健全性に与える影響はまったく違います。
例えば、
損傷している主桁上は車両が乗る位置なのか?
車両が乗らない位置なのか?
車道部なのか?
歩道部なのか?
荷重が作用する位置によって補修の緊急性、つまり【健全度Ⅲ】なるのか【健全度Ⅳ】になるのかある程度想定できます。
■視点その3~変形状態から見た健全性
衝突したあとの変形状態は、小さなものから大きなものまで様々です。
小さなものというと、
「下フランジの首振り」や「下フランジの破断」が代表的ですね。
損傷はしているものの絶対的な補修の必要性があるかというと、「ない」ことが多々あります。
なので、
【健全度Ⅰ】も十分にあり得ます。
先ほどの損傷した部材に作用する荷重を加味してみると大した問題にならないことが多いのです。
特に横断歩道橋は。
作用する活荷重が歩行者だけなので。
一方、
大きなものというと、
「主桁の面外変形」や「応力分担している横桁と主桁結合部の破断」でしょうか。
先ほどの下フランジが首振り程度では、フランジの断面自体があるので通常の応力計算ではそれが問題になるとは言えません。
ただ、
面外方向に主桁が変形している場合は違います。
破断もなく断面がある場合でも、座屈している状態なので本来の主桁として機能は損失しています。
このような場合は
【健全度Ⅲ】以上は確定と思っていいでしょう。
これまでの損傷位置や橋梁種別を踏まえた上で【健全度Ⅳ】となる可能性について早期に検討する必要があります。
■視点その4~見えてない損傷に対する健全性
衝突したあとの主桁の変形や破断に注目しがちです。
しかし、
点検ではそれ以上に「いま見えていない」損傷に目を光らさなければいけません。
特に!!
鋼橋の大敵である「き裂」に対しては( `ー´)ノ
主桁やそれに接合された横桁が変形し破断しているということは、必ずといっていいほど変形や破断まで至らなかった予備軍(き裂)が存在しています。
健全度Ⅲ以上が確定しているのであれば、なおさらです。
磁粉探傷検によってき裂の有無を確認したうえでの健全性評価を行い、次回点検で指摘されないことが肝心です。
■視点その5~第三者被害予防に対する健全性
さいごに、
第三者への影響を加味した健全性の診断について。
供用中の道路の真上に架かっている橋に衝突するわけですから、万が一、損傷した部材が落下するようなことがあれば大惨事です( ゚Д゚)
落下の可能性が高い事例として、
例えば、
横断歩道橋の場合、「添架管」のような附属物です。
主桁や横桁にクリップで添架管は添架されているので、衝突による衝撃で鋼管やプルボックス、クリップが外れたり、脱落しかけていたりする場合が多く見られます。
第三者被害予防の観点から定期点検の結果として【健全度Ⅱ】が確定している場合でも、措置に対する緊急性が高いと判断できれば、点検時に速やかに撤去してしまうことが基本となります。
そのままにすることはないと思いますが、緊急性が高いということは【健全度Ⅳ】相当ですからね(>_<)
それと、
添架管には照明やロードヒーティング線が配線されているので、電気の取り扱いにも注意が必要です。
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【さいごに】
衝突事故を起こした橋梁に対する点検では、即座に健全性の診断を行う必要があります。
会社に戻って応力照査をする時間は当然ありません。
緊急性によっては、関連各所の措置に対する行動計画が大きく変わりますから💦
今回のブログは、そんな緊急性が求められる事故現場で役立ちそうな内容を書きました。
色々な経験を積み重ねると、だいたいのことが経験則で判断してしまいがちですが、いまの時代はなにをするにも根拠が必要です。
経験則で判断したあとに、その判断に対して応力照査等を行ってより確実な根拠を残しておくことも大切です(´ー`)
次回!!
「健全度case14:遅れ破壊で落下したボルトを1本見つけたら、100本あると思え?!」
また来週~
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インターネットがこれだけ発達しても自分が本当に必要な情報というのは、なかなか探せないものなんだということ。
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私は検索するのが下手なので、知りたい情報まで辿り着くことがなかなかできません💧
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