橋梁点検の出来事・話題・用語

橋梁点検17:笹子トンネル事故から10年。メンテナンス時代の光と影

橋梁点検ブロガー【Taurus|トーラス】です🐂

”二ッチではあるけど面白い橋梁点検”

に役立つ情報をこのブログでは発信しています!

このブログの記事が、
橋梁点検、橋梁補修に携わる ”あなたの力” になれたら嬉しいです。

ではさっそく、いってみましょう!

※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちでご一読くださいませ。
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目次

【自治体メンテナンスの危機】

先週UPしたブログの次回予告で、

「健全度case22:ステルス床版劣化。補強鋼板の落とし穴」”

と告知していましたが・・・


今回は日経コンストラクション8月号で紹介されていた記事

「特集 維持補修2022自治体メンテナンスの危機」

についてご紹介したくて、予告を変更して書きました。


予定変更した理由は、面白かった!!!!!

しかも私が大好きな橋梁メンテナンスの特集ではありませんか(´ー`)

出典 日経コンストラクション8月号


毎月いくつかの学会誌や機関誌等に目を通すわたしですが、日経コンストラクションの発刊を楽しみにしています。

なぜなら、

メンテナンスの記事が多く、そして、わかりやすいから。


よくここまで調べられるな、と感心しきりです。

想像とは違い、取材には難航することもあるようですが、これからも応援してますし、発刊を楽しみしてます!


わたしはこのブログを書き始めたときに本誌の有料会員になっているのですが、紙媒体で掲載されていない内容やバックナンバーのダウンロードができるので重宝しています。

特に、バックナンバーのダウンロードは気に入っています。

コピー機の前を独占する必要もありません。

お金は少しかけてますが、こうやってブログを書いたり、最新情報の発信や品質を保つためにも必要ですから。


本誌を読んでいると、自分の知らないことが多いこと多いこと。

なかには、当然わたしとの意見の相違がありますが、それはそれで納得できる内容です。

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【事故から10年。光と影】

出典 日経コンストラクション8月号


「特集 維持補修2022自治体メンテナンスの危機」ですが、

右の内容が掲載されています。

いや~

どれも良い記事でしたよ。

詳しい内容については本誌をよんでくださいね!

このブログでは、メンテナンス技術者の視点や立場からの追加・補足意見を書いていきます。


本題に行きましょう。


笹子トンネル天井板落下事故ってみなさん覚えていますか?

平成24年12月2日にトンネルの上部にある130mに及ぶコンクリート製の天井板が落下し甚大な人的被害が起きたという事故。

この事故が起きてから10年がたつのです。

この事故を契機にインフラの老朽化が一気に注目され、これまでの10年間でさまざまな活動や施策が打ち出されてきました。

これらの施策をふまえ特集記事では、こんなキーワードが出ていました。

※ほかにもありましたが今回ブログで取り上げるのは以下

・AI診断
・LIMN(ライモン)
・地域インフラ郡再生戦略マネジメント
・進まない新技術の導入
・10年前と変わらない人材不足、予算不足


本誌の特集は、この10年での光と影について掲載されているように思えました。

10年といえば長いようですが、なにか1つのことを成し遂げようとすると、とても短い時間でもあります。


「活動-ひかり-」

さて、

「光」にあたる部分としてはこれでしょう。

・AI診断
・LIMN(ライモン)
・地域インフラ郡再生戦略マネジメント

■健全な小規模橋梁だけを対象としたAI橋梁診断支援システム「Dr.Bridge」

Dr.Bridge
コンクリート部材の写真と簡単な入力情報だけで「劣化要因」と「健全度」を判定するシステムです。専門誌等での広告面で目にする機会が増えてきました。最近このようなシステムの開発が増えてきていますよね。
どのくらい精度があるのか? どこまで本当の効果があるのか?
実際に活用し検証してみたいです( `ー´)ノ
出典 株式会社日本海コンサルタントHP


■メンテナンス技術者の繋がりを目的とした地方インフラ・メンテナンスネットワーク「LIMN(ライモン)」

LIMN(ライモン)
「ライモン」とは活動名です。チーム「ライ」とチーム「モン」の2つで構成されています。
「ライ」は、孤立しがちな自治体職員をつなぐネットワーク形成活動。
「モン」は、メンテナンスに対する市民協働の取組みを広げる活動。
たくさんの役割や目標をライモンでは掲げていて、離れた地域で奮闘する自治体職員同士が助け合いながら、この活動を通してメンテナンスを世の中の、私たちの身近にしていくという情熱的な活動です。


■広域に架かる橋梁を郡として捉え、総合的に維持管理していく枠組み「地域インフラ郡再生戦略マネジメント」

地域インフラ郡再生戦略マネジメント
都道府県の市町村がそれぞれ管理していた橋梁を地域で管理していこうというもの。スケールメリットを活用して発注から施工、維持管理までを合理化していけるメリットがあります。外国では類似の仕組みがすでにあったと思います。
ただ、まだこの高次の仕組みを運用できるような体制が日本には根付いていない等がありますが、人的・費用不足に悩む自治体にはメリットがあるので、これからの発展を楽しみにしています。


上記の施策は、

『なんとか簡単に早く、安く点検をすませたい・・・』
『困ったときに相談できる人とつながりたい、助けたい・・・』
『発注者、受注者にとってWIN・WINの仕組みを作りたい・・・』

このような思いから形づくられたものだと思います。


老朽化している、していく、たくさんのインフラを目の前にして技術者たちは、効果が現れない点検や補修に困っています。

これまでたくさんの施策や委員会は立ち上げられているものの、効果的な一手を打ち出せないでいました。

今回の特集ではそれに立ち向かっていく意思を感じました。


「活動-かげ-」

一方、「影」について。

・進まない新技術の導入
・10年前と変わらない人材不足、予算不足


この10年間、土木業界では人材不足と叫ばれ、各社・各役所では人材の獲得に奔走しました。

これまで採用に年齢制限を設けていた組織も撤廃するなど、様々な人材獲得競争に注力しています。

ただ、
これも日経コンストラクションでの取材では期待した効果がでていないとのこと・・・


わたしもそう思います。

国交省のアンケート資料にも出ていましたが理由は簡単で、

・新技術の導入が進まないのは、新しい技術を導入してもそれを活用できる人材がいない。そして、手間だけ増えて実は効果がでないことを恐れるから。

・人材不足については、転職業界は活況ではあるが入職しては退職しての繰り返し。業界の体質が変わらないため働き方や教育方法等が問題が指摘されています。

これだけではありませんが、わたしもこれらは実感しています。


例えば役所の土木系職員数について補足すると、

昨今の社会情勢から新卒の学生や社会人の転職先で公務員志望が増えています。
そのため、市町村の職員は増えても、土木系職員はあまり増えていないということでしょう。

それに土木系職員が中途採用枠で入職しても、職員が足りないのは土木だけではありません。

やっとの思いで採用した人材を組織内の最適解を目指し配属するため、土木系技術者として採用されたとしても土木部門に配属されるとは限りません。

さらに規模の小さな役所になるほど、さまざま仕事を1人の職員が担当しなくてはならないので、過酷な業務体制となることもあり、孤独を感じる等の職員も増えているようです。

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【-危機-は過去から未来へ】

AI診断について、私の意見を。

Dr.Bridge 
写真と簡単な入力情報だけで「劣化要因」と「健全度」を判定するシステムです。専門誌等で広告がはってあり、目にする機会が増えてきました。最近このようなシステムの開発が増えてきていますよね。
どのくらい精度があるのか? どこまで本当の効果があるのか?
実際に活用し検証してみたいです( `ー´)ノ

先ほどご紹介した「Dr.Bridge」のほかにも、人工知能技術の向上にあわせ、画像処理を中心としたAIでの点検・診断(評価)システムの開発が盛んになってきています。

人間が行う点検や診断(健全度評価)も基本的には外観情報をもとにしているので、人間ができることを機械が行うという意味では、点検技術の向上についての活路は大いにあります。

日経コンストラクション8月号の記事では、これを小規模な橋梁に限定し活用している自治体があるとのこと。

点検やその評価を外注する費用を抑えるために、自治体職員自らがこのシステムを活用していくそうです。

道路管理者と開発元との実証実験により、精度の確認をすませいて、効果もでているそう。


実証実験には、

過年度の点検で健全度ⅠやⅡと評価され、緊急に直す必要がないとわかった橋梁を対象

にしているそうですがこれには少し注意してほしいことが

それは、

過年度の健全度評価の精度

なぜなら、

全国的な統一やその評価方法の検証については行われてないからです。

市町村での健全度の判定については、各自治体で活躍されているコンサルさんが担当していることがほとんどですが、判定方法については各社の考え方のお任せとなっています。

公共事業の特性上、毎年受注者が変わるため、その年に点検を受注できた会社(技術者)の考え方で健全度評価の基準が毎年大きく変わってしまうことも珍しくありません・・・

国交省管轄の点検では、評価体制が確立しているので健全度評価の統一性は保たれていますが、市町村等の自治体ではまだ独自ルールで運用しているのが現状でしょう。


人材不足と予算不足を解消する手段としてこれらのシステム開発はとても有効だと思います。

ただ、システムの運用については自治体職員の運用に任せるのではなく、継続的な支援と協働がこれからは着目されるようになっていくと思います。

いまや素晴らしい技術だけでは売り物になりません。

Amazonやスタバに代表されるように、サービスまでが消費者の幸せと考える必要があるからです。


今後もこのような先進的な診断システムが開発されていくと思いますが、検証結果の根拠となった教師データはいずれ古くなることや、そもそも教師データの品質に問題があるという認識が必要です。

9月号の日経コンストラクションにも掲載されますが、無駄な補修や過度な予防保全についての問題が指摘されていることからも、現在公開されているデータの品質も保証できるものではないからです。

「緊急性が低い=いま必要のない」補修はたくさんあります。
このブログにも事例を掲載しています。ひび割れ補修を安易していませんか?
健全度case18:その補修。いま本当に必要ですか? | 【Linxxx公式】現場で役立つ橋梁点検ノート


このメンテナンス業界にある点検データはまだ脆弱です。

新しいシステムができつつありますが、このような現実がある限り、「危機」は未来に繋がっています。

新技術の開発と併せて、これまであまり注力してこなかった人材の育成をしっかりと進めていくことが大切だと思っています。

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【じぶんのお金なら無駄な出費はしたくないはず】

今回の記事を書いてみて、メンテナンス技術者の情熱を感じることができてうれしくなりました。

わたしだけでなく、メンテナンス業界の現状と今後の問題を懸念し、行動に起こしている方々がいて心強く感じます。

ただ、その一方でなかなか変わらない側面があることも事実で、根深いことも実感しました。

抜本的な改革は、自然現象に起こるわけではないし、既存の組織で構築された常識では限界があることを改めて考えさせられました。

自分たちの行動にかかっているのだと思います。

笹子トンネルの事故から10年が経ちました。

これまでの10年は、今後の10年の責任をとる時期にきています。

メンテナンスに対する成果の責任です。

この事故に対してしっかりと向き合いわなければいずれ外国と同様に大きな事故となるでしょう。

解決していかなればならない問題はたくさんありますが、その1つに、(結果的に)安易な補修をなくすこと。

自分の車、時計、家など、自分の利益につながる持ち物(インフラ)と同じように、当事者意識をメンテナンスにも持つことが大切です・・・

難しい問題ですが、前を向いて、失敗を恐れず、自分の最大限の活動を今度もしていきます!

次回!!
健全度case22:ステルス床版劣化。補強鋼板の落とし穴

また来週~

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■お問い合わせについて■

この活動で日々思うのは、

インターネットがこれだけ発達しても自分が本当に必要な情報というのは、なかなか探せないものなんだということ。

専門性の高い分野ともなると、難しい言葉で書かれた論文が多くなり、それが自分の知りたい情報だったのかすらわからなくなるときが多々あります。

私は検索するのが下手なので、知りたい情報まで辿り着くことがなかなかできません💧


知りたい情報はなんなのか?

検索下手なわたしが検索される方の立場で考えてブログを書き続けています。

「こんな損傷があったらどうすれば?」
「ほかではどう対応しているの?」
「この意味をもう少し知りたい」

などの疑問の解決や知りたい情報を提供したい。

そう考えています。

どうぞ気軽な気持ちでお声がけくださいね!

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