橋梁点検の出来事・話題・用語

橋梁点検18:ついに活用原則化!!だけど、道路支援技術性能カタログって知ってます?

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”二ッチではあるけど面白い橋梁点検”

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ではさっそく、いってみましょう!

※様々なご意見があると思いますが、どうぞ温かい気持ちでご一読くださいませ。
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目次

【目的は点検の効率化・高度化、それと…】


今日はいきなり単語の説明から入っていきますが、

「道路支援技術性能カタログ」

って見たことありますか?

見たことはないけど知ってるよ、でしょうか?


私はというと、

”見たことあるけど詳しくない” です。


とはいえ、

R04年度より点検への活用が義務化され、いよいよこのカタログの存在が大きくなってきましたので、わたしも詳しくないとも言ってられなくなりました。


ということで、

このブログに来てくださったあなたと情報を共有すべく、カタログ全文読んでみました(´ー`)



まずですね。

この道路支援技術性能カタログとは、ナニモノ

カタログって言うくらいですから、何らかの製品をたくさん掲載している本のようなもの

ということは予測できますよね。


このカタログはですね。

国土交通省が取りまとめている資料なんですが、その内容は以下の報道発表を見ると見えてきます。

”国土交通省では、道路構造物の点検の効率化・高度化を推進するため、点検に活用できる新技術をとりまとめた「点検支援技術性能カタログ」を策定しています。”

出典 国交省HP R04.09.06

<点検支援技術性能カタログ(橋梁・トンネル)令和4年9月版> 
以下の国交省HPより確認できます。カタログの目的や申請方法、活用にあたっての注意事項、商品一覧(Excel)等が掲載されています。
道路:点検支援技術性能カタログ - 国土交通省 (mlit.go.jp)


要するにこのカタログは、

点検に役立ちそうな新しい技術(製品)

が掲載されている案内書(catalog)ってことです。


そして、

どんな点検を支援する技術なのかは、その対象も特定されています。

それは、

下記の報道発表資料にもあるように橋梁とトンネル、舗装となっています。

出典 国交省HP 報道発表資料P2



監督官庁である国交省自らが、新技術をカタログ形式に取りまとめてくれるとは。

健気にも思えるこの手厚い活動...

「効率的に点検を進めてほしい」、「維持管理費用を削減してほしい」という道路管理者からの願いが伝わってきます。


それもこれも、

切実なインフラのメンテナンス業界の現状があるからなんですね。

土木構造物の老朽化はますます拡大していくのに対し、それを点検する技術者は増えるどころか減るばかり。


また、

技術の継承ができていないので点検技術の低下も否めません。

しかも、

高齢化や人口減少、入職者の減少の影響で相対的に老朽化の速さは増しています。

さらに・・・

新しいインフラは造られ続けるため、点検しなければならない総量が増えていくと上記の問題が悪化してしまっています。


これらの問題を、テクノロジ―の力によって解決しようというのがこのカタログの試みです。


”テープ測量” から ”レーザー測量” へ

”高所作業車” から ”飛行ドローン” へ

”クラックスケール” から ”AI(人工知能)” へ


テクノロジーの力によって、生産性を高め、人員不足や技術力不足等を補うというのは基本の1つとも言えます。

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R4年度から点検への活用が原則化


しかし

役立ちそうな・・・と言いつつも、このカタログに掲載されている商品のほとんどを点検実務者でさえ、あまりその存在や効果を知りませんでした( ゚Д゚)


なぜなら、

これまで(R03年度)の点検では、ほとんど使われていなかった

からなんです。


平成31年度からカタログは存在していたものの、活用は義務化されておらず、一部での試行に終わっていたのが現状です。

そのため、そもそもほとんどの現場で使っていませんでした。

掲載されている製品の開発技術者や試行していた一部のコンサル、とりまとめを担っている国交省関係者の方だけがこれまで一生懸命やってきた、というところでしょうか。

それくらい点検関係者のなかでも馴染みの少ない話題でもありました。


しかし!!

新技術の活用を後押しするべく、R04年度から本格的に点検への活用が原則化されました。

噂では聞いていましたが、原則化に対応するために実務者たちは慌てて活用に取り組んでいるという現状です。


さて、このカタログ。

掲載されている技術は<169技術>あります。
その数も今後も増えていくでしょう。

カタログに掲載されている技術数は橋梁とトンネルを合わせてR04年度は<169技術>にもなりましたが、初期の平成31年度のころは、たったの<16技術>でした。

■技術数の変遷(橋梁・トンネル)
・平成31年度  16技術
・令和02年度  80技術
・令和03年度 131技術
・令和04年度 169技術


このうち橋梁だけ抽出すると、112技術(全169技術)です。

112技術の内訳ですが、下記の4つに分類されます。

画像計測      47技術
非破壊検査     18技術
計測・モニタリング 44技術
データ収集・通信   3技術


下図は、報道発表資料等で公表されている資料ですが、前述の4つの分類での点検状況がわかります。

出典 国交省HP 報道発表資料P3


上図をみてもらうとわかりますが、既存の構造物があるところというのは、点検にしにくいところがほとんどなんです。

狭い、高い、深い、見えない、暗い・・・

まだまだありますが、この条件下で点検技術者は大きな構造物相手に短時間で点検を行っています。

ドローンによる飛行技術や非破壊技術、水中へのレーダー技術等の開発が進めば、点検もしやすくなりますし、点検精度もあがることでしょう。

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【メンテナンス業界は隠れた成長分野】


カタログに掲載されている製品の開発元は、

業界大手のゼネコン・コンサルタント・橋梁メーカー・計測会社等が主ですが、

そのほかにも、

オムロン    省電力無線センサによる遠隔モニタリングシステム
NTT(docomo) 360度周囲を認識するドローンを用いた橋梁点検支援技術 (Skydio)
富士フイルム  社会インフラ画像診断サ-ビス「ひびみっけ」
コニカミノルタ 磁気による鋼材破断の非破壊検査法(SenrigaN)
パナソニック  デジタルカメラによる支承点検技術 

などがあります。

<点検支援技術性能カタログ(橋梁・トンネル)令和4年9月版>
以下の国交省HPより確認できます。カタログの目的や申請方法、活用にあたっての注意事項、商品一覧等(以下アドレスからファイルDL可能)が掲載されています。
道路:点検支援技術性能カタログ - 国土交通省 (mlit.go.jp)

一見、土木と関係のなさそうな大手の民間企業がインフラの点検技術開発に参入しています。


土木構造物は意外にも、

市場の大きさや将来的な投資対象等としても今後ますます注目される成長分野

なのです。

各社、製品開発に販路を見出そうと外部からの参入は激しさを増していくでしょう。


ただし、
この技術(製品)の多くは、

現場のニーズに合致しておらず、まだまだ改良の余地がたくさん

あります。

厳しい意見とはなりますが、

カタログに掲載されている製品を見ると、なかには点検したことないのかな?と思わざる得ないような点検を支援できていない製品もあます。


その一方で、

これはどんどん使うべき( `ー´)ノというものありますが、意外にその良さが浸透していないものなのです。

わたしも数年前に営業してもらったことがありますが、当時もその単体の技術としては素晴らしいとは感じたものの実務では使えないな・・・ということで採用までには至りませんでした。

点検では高度化よりも総合化・統合化も重要

ですので、

ぜひ橋梁点検員や橋梁診断員の意見を取り入れ、いち早く他社と差別化した製品の開発を期待しています( `ー´)ノ

しかも、

ローカルルールがあるので地域の実情を把握するのも重要ですよ。

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【疲弊する地方自治体に救世主を】

インフラの老朽化はどんどん拡大していくばかり。

特にその大半を占める地方自治体はもはやジリ貧の地域も出てきています。

事態は深刻です。

この事態に対応すべくカタログの取りまとめに至っているわけですが、これまでも国は新技術の活用に際し、地方自治体に推奨してきました。


ただ、

期待通りに活用が進まなかったようなのです。


これらの根拠ともなる資料として、「道路メンテナンス年報(以下、年報)」があります。

下図は年報にある、新技術の活用に対する地方自治体のアンケートの1つです。

出典 道路メンテナンス年報(R04年度版)P85


新技術を「検討」と「活用」の2つの側面から集計しています。

・新技術の活用について “検討したのか、検討しなかった” のか?
・新技術を実際に “活用したのか、活用しなかった” のか?

・・・

この違いわかりますか?

例えば<点検>で言うと、

全1,410団体のうち、79%にあたる1,112団体が “活用の検討はした” ものの、 “実際に活用した” のは25%にあたる275団体” であることを現しています。


1,410団体あるなかで、実際に活用したのが275団体というのは少ないですよね?

点検の効率化、高度化を進めるうえで国が進めている技術の推奨であるのに、なぜか地方自治体の方々の活用が低い・・・



次に、

なぜ活用や検討しなかったのか?

その根拠となる資料がP86のアンケートです。

出典 道路メンテナンス年報(R04年度版)P86


主に以下の3つの意見に代表されていました。

・従来方法の方が費用が安い
・従来方法の方が効率的
・従来方法の方が点検や修繕が容易

だ、そうです。


新しい技術ではあるものの、

実用性や汎用性を伴っているか?

というのは別の話ですから。


・使い方もわからない
・汎用性も限られている
・高額かもしれないリスク

をとってまで無理してコストをかける道路管理者や点検会社はいません。

これまで通り、人力でハンマーで打音したり、チョークでひびわれ箇所をなぞったりしたほうが早い、安い、高品質と言った意見がでるのは、新しい試みにはつきものですよね。
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【進化の予感がする点検支援技術】

今後も「道路支援技術性能カタログ」は拡充されていくそうです。

また、

新技術導入促進を支援する第三者機関というのがあり、技術公募や技術検証の手続きの窓口を担当する企業のことです。

橋梁に関しては、道路橋点検士といった認定資格の創設や橋梁診断で有名な<一般社団法人 橋梁調査会>が担当しています。

製品の拡充や活用をより推進していくために、現場と開発企業、道路管理者との調整役となるのかもしれませんね。

いまは想像できないような製品が将来開発され、橋梁メンテナンス業界、インフラ業界が日本の注目の的になる日も近いかもしれませんよね。

何が起こるかわからないですから!!


次回! 祝ブログ100本目!!
「健全度case26:ズバリ教えて!この健全度評価あってますか?!」

また来週~

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■お問い合わせについて■

この活動で日々思うのは、

インターネットがこれだけ発達しても自分が本当に必要な情報というのは、なかなか探せないものなんだということ。

専門性の高い分野ともなると、難しい言葉で書かれた論文が多くなり、それが自分の知りたい情報だったのかすらわからなくなるときが多々あります。

私は検索するのが下手なので、知りたい情報まで辿り着くことがなかなかできません💧


知りたい情報はなんなのか?

検索下手なわたしが検索される方の立場で考えてブログを書き続けています。

「こんな損傷があったらどうすれば?」
「ほかではどう対応しているの?」
「この意味をもう少し知りたい」

などの疑問の解決や知りたい情報を提供したい。

そう考えています。

どうぞ気軽な気持ちでお声がけくださいね!

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